第180話 黄金気を修得した新米領主の私はこうして今日もガリポリ領を後にした
私はもちろん許可を出した。マカートニーの話ではダーダネルス・ガリポリは政情が安定しておらず襲撃される可能性もあるということで常時、イヴァンに護衛をさせていたがどうも杞憂に思える。それよりも気になることを言った。
「あの案内してくれた寡黙な軍人さん、イヴァンより強いの?」
私は純粋な疑問からイヴァンに尋ねた。
「おそらく…身のこなしが静寂すぎます。春日井領主や黒佐賀王が動の極致ならあの軍人は静の極致です。ネブラスカ一等執政官はああ仰っていますが、あの方を案内と護衛に選んだのならロンバルト司令も春日井領主に大分配慮されていると思いますが」
100対0で負けたわけではなく、まだ希望はあるということか。
「ロンバルト司令の真意がどこにあるのか? そのあたりも挨拶がてら探りを入れてきます」
やはり共に死線をくぐった相手は違う。打ち解けたといってもまだまだ余所余所しかったイヴァンが初めて自発的に動いてくれた。そうか、私はこの領地に来てずっと立ち止まっていた訳ではない。もがきながらも進んでいたんだ。
「分かった。じゃあ、ロンバルト司令のことはイヴァンにまかせるよ。それとここの軍人さん達の中でやってほしいことや欲しいものなんかがあったら聞いておいて! ここはガリポリ領防衛の最前線だからね。できることはなんでもやるつもりだよ」
私がそう言うとイヴァンは微笑し、一礼した後、部屋を出て行った。
「さて、私達も帰りますか」
◇◆◇
帰りもイヴァン曰くの実力者であろう例の寡黙な軍人が送ってくれ、私は本当に彼がそんな高位能力者なのかずっと注意して見ていたがとうとう分からなかった。ガリポリ領主館に着きイヴァンの変わりに護衛もしてくれないかと虫のいいことを考えていたがやはりそんな上手い話は無く、私達を送り届けるとすぐに帰っていった。
空はもうすっかり暗くなっており、早くも帰る時間になってしまった。
「残念ながらガリポリ軍では収穫は無かったけど、ガリポリ領冒険者組合の方では建設的な意見も聞けたことだし、今日はそろそろ帰るよ」
私がアクィナスとネブラスカにそう告げると2人とも私を引き止めなかった。
「ガリポリ冒険者組合の新規事業につきましては早々にまとめるよう、企画室に指示を出しておきます。お疲れ様でした、春日井領主」
「イヴァン君がきっとなにか成果を掴んでくるはずです。私もなんとかガリポリ軍と良好な関係を築けるよう何か手段を考えておきます、真澄様」
2人とも私を元気付けようとそれぞれに考えた別れの挨拶をしてくれた。私も頑張らねば。
「明日もガリポリ領に来る予定にしてるから。また、明日聞くよ。それじゃあ2人ともお疲れ様」
そう言って私は疲れた身体を引きずってログアウトした。
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