第177話 黄金気を修得した新米領主の私は馬車の中での沈黙に耐え切れず苦悩する
ガリポリ領軍の司令部は郊外にあるらしく馬車での移動となった。私が領主館を出ると既に四人乗りの馬車が待機しており私、ネブラスカ、イヴァン、アクィナスの順番に乗り込む。
車の座席にもビジネスマナーがあった気がするが流石に忘れた。対面式の四人座席の場合はどうなんだろう。まあ、セカンドワールドオンライン第5層黒佐賀王国のマナーと現実世界のマナーはまた違うかもしれない。間違えていたらアクィナスあたりが後で教えてくれるだろう。重要なのは相手を敬う態度だ。そう思い席順に関してはスルーした。
馬車の運転は先程、私を迎えに来た軍人が担当するらしく私達は狭い客室に閉じ込められた。沈黙が重い。ネブラスカがいなければ普段の3人メンバーなので自然と会話が弾むが今は何も思いつかない。
自然、私は外の風景を眺め物思いに沈む。今日の夕食は何にしようか。母か父が用意してくれてないだろうか。作るのがめんどくさい。こちらで会食した後、またログアウトし食べるのも面倒だ。
そういえばゲーム内での食事は極力避けたほうがいいと昔、渚からアドバイスをもらったな…インフィニットステーションは味覚も完全再現しておりゲーム内で食事を取りすぎると現実世界での栄養の補給がおろそかになるということだった。
まあ、そのぐらいなら問題はないがヤバイのは満腹神経が刺激されて現実世界で食事ができなくなってしまう現象だ。ゲーム内で食事を取ったから現実世界で食事を取らなくてもいいと身体が勝手に判断してしまいご飯が食べられなくなるそうだ。そういう人間はサプリの摂取に逃げる傾向があるとのことだ。
ゲーム内の方が安価で美味しい食事がある。現実世界では貧相で高額な食事を取っていると自然とゲーム内で食事を取ることが多くなりさらに多くのサプリを摂取で誤魔化す。
しかし、サプリの値段は意外と高額だ。それこそ貧相な食事の代金より高い。サプリの金を稼ぐためにさらにゲームにのめりこむ廃人も多いそうだ。最も廃人までいくとサプリの摂取ではなく点滴の摂取に変えるらしいが。
流石にそこまで極めたくは無い。私の目的は現実世界で充実を得ることだったはずだ。
しかし、最近では生活におけるセカンドワールドオンラインの比重が増してきてる。学校に行く時間がもったいなく、悩みもほとんどセカンドワールドオンラインに関してのことだ。
いかんいかん。やはり、口数が少なくなると思考がネガティブ思考に陥る。無理やり、目の前にいるネブラスカに会話を振る。
「そうそう、私、会食に出席するフォーマルな服装じゃないけど大丈夫かな?」
私の突然の振りにもかかわらず、ネブラスカは極自然な表情で答えてくれた。
「大丈夫ですよ。相手は軍人ですし、虚礼や飾りを嫌う傾向があります。そして、なによりも篤実を重んじる人間ですから。その異界人の装束も似合ってますよ」
ネブラスカは私が本気で心配していると考えたのか、らしくもなくおべっかを使ってきた。
私が来ているのは学校の制服のアバターなんだが、やはり別の服のアバターも買ったほうがいいのかな。
しかし、今まで仕事一筋、雑談など無意味と言った感じのネブラスカがいやに優しい。この様子ならなにか面白い話でもしてと振ったらしてくれるのだろうか。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿も朝6時から7時ぐらいに投稿すると思います。
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皆様のぽちっとが私の創作の乾電池(意味不明、マウスの電池が無くなった・・・なんか電池も腐食してるし)ですので何卒よろしくお願いします。