第173話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領冒険者組合で冒険者をまとめて相手にする
「話して無駄なら自分の意思を拳で示すだけだ。文句があるやつはかかってこい!」
私がそう言い放つとそれが戦闘開始の合図となった。敵はおよそ50人から60人ぐらいの冒険者。対してこちらの戦力は私とイヴァンと敵味方不明のローザンヌのみ。数の上では圧倒的に不利でしかもいつかのエクシード十剣の時のように絶対に殺したり、後遺症をあたえてはいけない相手。
そんな冒険者の中でも先程、私に因縁をつけてきたやつは真っ先に私に向かってきた。イヴァンに視線で手出し無用と伝えると因縁男と真正面から対峙する。
先程と同じように大きな体格を生かしたなんの捻りもない右ストレート。しかし、よく目を凝らせば黒気の存在が見て取れる。私はあえてそれを避けず正面から受け止める。
「なっ!? 黄金気だと」
私が纏った黄金色の気を見て因縁男が驚きの声を上げる。というかガリポリ冒険者組合に入店したときに噂してただろう。情報劣等種かよ、この馬鹿。
私は内なる怒りをこめた拳を因縁男の腹に叩き込むと一撃でダウンする。
その様子を見ていた前列の人間がわずかにたたらを踏み、進行が一時止まる。その隙を逃さず、瞬時に相手の懐に飛びこみ掌底を喰らわすと2、3人がまとめて吹き飛んだ。
黄金気で強化された私の身体能力は既に常人を遥かに凌駕している。軽く触るだけでもリンゴ程度なら一瞬でつぶせる。よって相手が気で全身を強化していようとも軽々とその防御を抜ける。
祥君やRDHなんかが相手だとおそらく、攻撃を当てることができず一方的に負けてしまうだろうが幸いこの程度の冒険者なら適当に手足を動かすだけで吹き飛んでくれる。
これで4人か。この調子ならむしろ、冒険者達が団子状に襲いかかってきたほうが楽に倒せるのでは思い始めた頃、彼らも戦術を変えてきた。
雨霰の如く、気弾や弓矢、魔法による遠距離攻撃が私に降り注ぎ一歩も前に進めない。当てることを考慮に入れていない範囲攻撃だ。私はドラゴンか!?っての。
流石に前に進むことすらできなくなり、防戦一方だ。この範囲攻撃にアクィナスが巻き込まれていないか心配になり彼女の方を確認するとローザンヌがアクィナスを庇っていた。
なるほど、ライバルでもあり仲良しでもあるのか。正直言えばローザンヌの攻撃方法は確認したかった。得物は何を使うのか、どのカラーオーラを纏うのか。いつか対戦する可能性もあるので情報を仕入れておきたかったが考えようによっては妙な横槍を入れないだけで充分だ。アクィナスの護衛に専念してくれれば私も目の前の戦闘に集中できる。
そう、思い直しまずはこの嵐のような範囲攻撃を突破する策を考える。策はある。黄金気弾だ。しかし、黄金気弾は発射までの数秒、全エネルギーを右手に集中させる必要がある。その数秒、防御が疎かになる。どうするか。
イヴァンがその隙を作ってくれないものかと考え、彼のほうを見ると彼もまた範囲攻撃で防御を余儀なくされていた。もっとも彼の場合は柱の影に隠れてやり過ごしている格好だったが。私も馬鹿正直に範囲攻撃を受け続けなくてもああして物陰に隠れた方がよかったか。
そんなことを考えならイヴァンと合流する。彼の足元にも4人ほど冒険者が気絶していた。誰も流血しておらず、上手く意識だけを刈り取ったのだろう。
「お互い近接型同士だと、どうしても手数が足りないね。エミリーでも連れてくればまた、違ったんだろうけど」
私がイヴァンに語りかけると苦笑いで答えてくれた。
「私は黒気弾ぐらいなら使えますが命中率と射程があまり高くありません。遠距離攻撃は無いと考えてもらって結構です」
「君はチマチマ遠くから狙ったりするタイプじゃないもんね。私の黄金気弾をぶち込めればまとめて吹き飛ばせると思うけど、貯めの時間と照準の時間があの範囲攻撃の前では取れないね」
読んで頂きありがとうございました。ということで今日も6時投稿です。明日の投稿も朝6時から7時すぎぐらいの間になると思います。よろしくお願いします。
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