第172 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領冒険者組合で冒険者達に囲まれる
「どうしますって、あんたね~これは明らかにガリポリ冒険者組合の不始末でしょうが!」
私は珍妙な返事をしてきたローザンヌに怒りのまま言葉を投げつけた。
「おや、春日井領主が叱責された。ガリポリ冒険者組合の不始末でもあり、あなたの領民の不始末でもあるんですが」
しかしローザンヌは意にも介せず冷めた目でこちらを見て言葉を続けた。
「ふぅ、叱責して満足するぐらいでは程度が知れますわよ、春日井領主。先程もオダリスク書記長が仰ったではないですか、行動はより具体的と。怒られてそれでどうするんですか?」
ぐっ、目の前で私に見当違いな文句垂れてる冒険者も冷めた目で見ているローザンヌも私の民ということか。そして、この場の最高責任者である私が感情のままに怒っても意味などない。問題なのは次に私がどう行動すべきなのか。それが問われている。そういうわけだなローザンヌ。
正直、怒りで頭が変になりそうだったが堪え大きく深呼吸して居並ぶ冒険者を見渡して叫んだ。
「えっと、ガリポリ冒険者組合諸君。私がダーダネルス・ガリポリ領の新領主春日井真澄だ。聞きたいことがあるならわめいてなくて、1人ずつ、名乗り順番に話せ!」
私がそう叫ぶと一瞬、静寂が訪れたがすぐに1人の男から怒りのこもった詰問が飛んできた。
「モンスター討伐の報酬を引き下げるって聞いたけど、どういうことなんだよ~」
「私は名前を名乗って質問しろといったはずだぞ、だが答えてやろう。その件は現在、交渉中だ。決定したら告知する」
「交渉中だ~んな、こと言って最初から値下げすんのが前提で来てるんだろうが! きれいなところに住んでるお偉い領主様にはわかんね~だろうが俺らはモンスター討伐で飯食ってんだよ~俺らがモンスター討伐してるから下々の人間は安心して街で生活してるんだよ~てめえの点数稼ぎでなにいじくってんだよ!」
そう吐き捨てると男は私の顔面に躊躇なく拳を振り下ろしてきた。
しかし、男の拳はすぐに止まる。これまで影のように存在感を殺して私の側に控えていたイヴァンが剣を抜き、男の喉下に突きつけていた。
「へっ、護衛の影でしか発言できね~3流のくせに! てめえがその気なら俺らにも考えがあらぁ~」
そう言うと周りの冒険者達も次々と剣を抜いていく。どれほど頭に血が昇っていようが同じ人間、まして自分の領民なのだ話せば分かると自分に言い聞かせてきたがその光景を見て戦闘は不可避だと悟る。
「まだ、発言の途中だろうが、どうしてもやるっていうなら外でやろう。ここでやれば施設が壊れてしまうだろうが」
「そう言って外に出たら転移で逃げる気だろう。3流領主」
ダメだ。どうやら屋内戦を覚悟しないとダメなようだ。
「ローザンヌ、私の見解ではこれはガリポリ冒険者の不始末だと考えている。施設に被害が出るが構わないな?」
「さて…私の立場ではお答えできかねますが…まあ、オダリスク書記長は何も言わないでしょうね。それより、この人数を相手に勝てるつもりですか? 私もお手伝いしましょうか?」
意外にもローザンヌが戦闘への協力を申し出てくれた。先程までは自分こそがガリポリ冒険者組合の代表ですって顔をして、冒険者側にも私側にもどちらにもつかず中立を保っている感じだったのに意外だ。
「そう、じゃあまかせるよ」
ローザンヌに隙を見せたら横から刺されそうな気もするがなにせ敵の数が多い。手を貸してくれるというなら一応、協力を仰いでおこう。但し警戒は怠らないように注意はしてと。
読んで頂きありがとうございました。今日も少し早い時間ですが投稿しちゃいます。明日も朝6時~7時になるのではと思います。頑張ります。
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