第171話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領冒険者組合で人物評価を聞く
「流石はローザンヌだな。君をこの場に同席させて正解だったよ。せっかくだ、ローザンヌ、春日井領主を玄関までお送りしてもっと詳細詰めろ。相手がネブラスカ一等執政官なら話が具体的あればあるほどGOサインが出る」
「分かりました、オダリスク書記長。それでは春日井領主どうぞこちらへ」
先程まで、ローザンヌが同席するのを嫌がっていたのに手のひらを返したような対応だ。もちろん、ローザンヌもそこに突っ込むほど愚かではない。
「あのオダリスク書記長は面白い方でしょう。ああやって、他人の功績を自分の手柄のように扱うんですがその分、後で手柄を取ってしまった人間へのリカバーは凄いんですよ。どんボーナスが出るか今から楽しみです」
帰る途中3人で歩きながら具体策について一通り協議し、出終わった後、ローザンヌが突然話を切り出してきた。その内容というのが私が尋ねてもいないオダリスクの人柄についてだった。
確かに先程の話も具体的な策についてもっと話を詰めるなら私とアクィナスとオダリスクとローザンヌの4人で部屋にこもってとことん議論したほうが良かったはずだ。私が帰ると言ったから安堵して引き止めず、しかし、より具体策で迫れば成功率が高いと閃き咄嗟にローザンヌを見送りに立たせるというあの発言に繋がったんだろう。
「それともう一つ面白いのは採用する人間の立場を一切、斟酌しないんです。どんな序列の低い人間でも、キャリアや人間性、政敵であってもいいと思ったら迷わずそのアイデアを採用するんです。そこらへんが17ある冒険者組合の書記長まで上り詰めた才覚なんでしょうね。私も入社トコトコで一つ提案したら瞬く間に採用され一気に全所員に私のアイデアが使われたのには驚きましたわ。おかげでガリポリ冒険者組合にはアイデアを出し合う下地とアイデアを受け入れる度量があるんです。春日井領主の減額案も採用されたらガリポリ冒険者組合は一丸となって目標に向かって突き進みますわ。どうですか? アクィナスうらやましいでしょう」
そう語るローザンヌの表情は非常に晴れやかだ。彼女は自分の所属する組織に対して疑念を抱いていない。自分の所属する組織に骨の髄まで心酔しているのだろう。彼女程の人材をココまで陶酔させるのだ。やはり、このガリポリ冒険者組合は信用できる商社なのかもしれない。
そうして受付カウンターと食堂が併設してある1階まで降りて来ると私達は信じられないものを見た。
「モンスターの討伐報酬を下げるって本当かよ!」
「領民の安全をなんだと思ってんだよ~」
「ネブラスカの狗が!」
「女のくせに~」
私の姿を見た冒険者が口々に罵倒してきたのだ。しかも、その様子は完全に殺気立っている。卵でもぶつけてきそうなまでにヒートアップしている。
私はなぜこんなことになったのか検討もつかず、ローザンヌの方を見ると彼女はしれっと宣りやがった。
「どうやら書記長室の会話が漏れていたんでしょう。どうせなら私の提案まで漏らしておいてくれればこのようなことにならなかったのに…こういう狡い手を使うのは副書記長のカージャールでしょうか。あの方も冒険者上がりで冒険者のためという点では優秀なのですが視野が狭く、討伐報酬の減額という単語を自体が許せなかったようですね。どうします?」
読んで頂きありがとうございました。ちょっと早く書けたので投稿しちゃいます。
7時に投稿って言ってたのに申し訳ありません。早い分には問題ないですよね!?
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