第170話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領冒険者組合で冒険者組合書記長に無理難題を押し付ける
「それで困るのは私達だけではなく、冒険者組合もでしょう。時が経てば人々の怨嗟は私達だけに限らず、冒険者組合にも及びます。これまでできていたことを報酬が減らされたからといってわざとやらない冒険者組合は怠慢なのではないかと。それにストライキを実行すればランクが上の冒険者はまだ、別の領地に行って稼ぐこともできますが薬草採取や荷物の運搬、要人護衛などのランクが下の仕事しかできない冒険者は干上がってしまいますよ。そのような焦土作戦はあまり良い手ではありません。そういう事態になれば私は最悪、軍の派遣を要請しモンスターの討伐を行ないます。私達は敵同士ではなく、同じガリポリ領の繁栄を望む同士でありたいのですが」
恐喝じみた脅しに屈せずノータイムで返答するとオダリスクはわずかに怯んだ様子だった。
「しかし、現実問題として報酬を減らされた冒険者はどうなる? モンスターに返り討ちにあってもよいというのか?」
「冒険者組合の冒険者も我が領地の領民です。もちろんそんなことは絶対に許されません。討伐報酬を減額してもモンスターの討伐数は減らず、なおかつ、冒険者が装備の質を落として命の危険に陥らない方法、皆が幸せに暮らすための方策を依頼したくて今日ここに参ったのです」
「また、凄まじい難題を…討伐報酬を減額するというだけの方がまだ簡単じゃったのに」
「来る途中アクィナスに聞きました。不可能を可能にするのが冒険者組合だと! 冒険者組合にできない仕事はない! 無理ならより上位に組合に申し送りしてでも必ず解決するのが冒険者組合だと!」
「そこでその謳い文句をだしてくるか…仕方が無い…なにか良い方法がないか考えてみるとしよう」
オダリスクはついに観念し、私に協力を約束してくれた。頭がいい人が交渉相手で助かった。
「流石はアクィナスの上司だけあって面白い方ですわね、春日井領主は」
私がオダリスク書記長の対応に安堵し、ほっと一息ついていると突然、今まで黙っていたローザンヌが口を挟んできた。
「わたくし、案件解決のための腹案があるのですが発言よろしいでしょうか?」
もちろん、私達に異論はなく、発言を許可する。
「ガリポリ領主館で別の仕事を用意するというのはどうですか。討伐報酬は減額する。但し、別の安全な仕事を受注し総支払額で帳尻を合わせるというのは」
「なるほど、けど、即答はできないな。元々、ガリポリ領の予算が足らなくなってきたから減額交渉に来たのが実態だし…新規の仕事を依頼するのは予算的に難しいと思うよ」
「別段、本年度予算で全て対応しなくてもよいのです。ガリポリ領債を発行したり、銀行からお金を借りればいいだけのことです。帰ってネブラスカ一等執政官とご相談願いますか?」
人材というのはどこにでもいるもんなんだな。正直、オダリスクに出した要求は無茶ぶりすぎて、向こうがまいったと言ってから減額についての本格交渉を行なうと思っていたがそんないい方法があるのならもちろんそちらを採用する。けどまた、ネブラスカとの交渉か…勝てるかな…
「相談だけなら喜んで。建設的な意見が出てありがたいよ」
相手がネブラスカなら勝率は正直5割を切ると思う。安易に了承の返事はせず持ち帰ることにしよう。
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