第169話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領冒険者組合で冒険者組合書記長と会談する
ローザンヌの案内の元、通されたのは最上階の一室だった。
中に入るとやたら恰幅のいい、いや太っていると評価した方が正しい小太りの男が席を立って待っていた。
「私がガリポリ冒険者組合書記長オダリスク・タイラーだ」
「ローザンヌご苦労だったな。下がってよいぞ」
「あら、せっかくの幹部同士の会合ですものわたくしも見学させて頂きますわ」
「なにが見学だ。さっさと仕事に戻れ」
「仕事ならとうに片付けてありますわ。私をデスクにくくりつけておきたいのならせめて今の10倍の仕事はもらわないと。今はオダリスク書記長と16領主春日井様のお手並みを拝見するのがお仕事ですわ。大丈夫です。邪魔も口も挟みませんから」
そう言ってローザンヌは当然のようにその場に臨席する。それを見たアクィナスは苦笑いしていた。きっと彼女は大学時代からこうなのだろう。
オダリスクもローザンヌを咎めることなく話を進めていく。
「それで、今日は何の用ですか? まさか、16領主の1人が挨拶だけというわけでもないでしょう」
「いえ、挨拶に来たのがメインの用件ですよ。私はそれだけ冒険者組合の存在を買っています。あなた方の協力がなければガリポリ領の存続と繁栄は望めません」
「ふん、ありがたいことだ。それで一体我々に何をさせたいのだ。まあ適正な報酬が支払われれば我々はどんな協力でも惜しまない」
「その報酬についてご相談したいのですが…」
先延ばしにしても決意が鈍る。相手はやり手と見た。最初から本論ありきでいく。
「まさか、モンスターの討伐報酬を値切りにきたのか!? モンスター討伐はこの領地に生きるものの生命線だろう。安全とは全ての活動の源だ。16領主の最初の仕事がそこに住む生活者の生命の保証を脅かすことだとでもいうのか」
オダリスクはオーバーにリアクションし、私達に罪悪感を抱かせる。テンプレな対応だ。
ローザンヌはニヤニヤ笑って見ている。
「今のモンスターの討伐に関しては領主館は非常に満足しています。今年はモンスターの発生率が多いですからね。引き続き冒険者組合にはモンスターの迅速な討伐をお願いしたい。しかし、このままではガリポリ領の予算が持たなくなる。ですので単価の引き下げをお願いしたくやってきたのです」
「阿呆か! あなたは! 冒険者に取ってモンスター討伐の報酬というのは生命線だ。彼らはその報酬のために命がけでモンスター討伐を行なっているのだ。報酬が減ればモチベーションが落ちるとかそんな精神論の話ではない。治療や装備に金をかけねば命の危険にさらされるのだ。それを減額するなどと馬鹿も休み休み言え」
「私もやりたくてやってるわけではないのですよ。必要だからやってるだけです。当然ご存知のようにモンスター討伐の報酬は領民の税金で支払われています。しかし、領民の血税はモンスター討伐だけに使っていいわけではない。治水、貯水などの土木工事から街道の整備、緊急時に備えての食料の備蓄、スタッフの給料等々。モンスター討伐だけに使わずバランスよく使わないと誰もが困ってしまう。あなたも組織の責任者ならお分かりでしょう」
「そんなことを提案するなら我々はモンスター討伐をボイコットするぞ。街道にモンスターがあふれてしまう。どう責任を取るつもりだ」
オダリスクはこちらの足元を見てあからさまな恐喝を行なってきた。
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