第167話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領冒険者組合を訪ねる
「このような成り立ちから冒険者組合は国の存在を快く思っていません。しかし、現代の冒険者組合は単なる冒険者の互助会ではなく、総合商社です。快く思っていなくとも組織を維持するため国からの討伐依頼を断ることはできません。国からの討伐依頼は彼らの貴重な定期収入だからです」
さすがは黒佐賀大学主席卒業、まるで息を吸うようにすらすら解説が出てきた。アクィナスの専攻は歴史だったんだろうか。
「よって、普段から好まれていないのにさらに火に油を注ぐような今回の値下げ交渉は相当難航すると思います」
そんなことは分かってるって。分かっててもやらなきゃいけない仕事だと判断したからネブラスカの指示を受けたの。頭はいいけど、空気を読むのが下手なのかなアクィナスは。ただでさえ、気分がダウナーなのにそれに拍車をかけてどうするつもりなのだ。
私が冷めた目で彼女を見るとようやく分かってくれたようだ。
「そっ、それで概況でしたね。そのような背景があった末、現代の冒険者組合はどんな仕事でもできる総合商社と化しています。薬草の採取、荷物の運搬、護衛、討伐、商売の助っ人、商品の売買、新人冒険者の教育、仕事の斡旋、等々およそできない仕事はないでしょう。地方の支部で達成不可能な仕事はより上位の冒険者組合に申し送りし必ず実行します。彼らにとって達成不可能な仕事というのは恥だという風潮さえあります。その組織力、資金力、諜報力、人脈で我が国のみならず人類の文化に深く寄与しているのです」
「う~ん、そういう内容じゃなくてやっぱりもっと具体的なことを聞きたいな~」
私が催促するとアクィナスはさらに慌てたように言葉を重ねた。
「えっと、そうですね。そういえば真澄様も冒険者ではなかったのですか? 冒険者組合はランク制を採用しておりAからFまで冒険者ランクを割り振りその証明書は戸籍なみの効力を発揮しますよ。Aランク冒険者は我が国でも数少なく黒佐賀王の直弟子がお1人所有されておられただけだったような。さらにその上のSランクというものも存在はしているという噂はありますが真偽の程は定かではありません」
イマイチ、私の欲しい情報が手に入らなかったが仕方が無い。そうこうしているうちにガリポリ領の冒険者組合についてしまった。
中に入ると非常に広大なホールになっており、正直、初心者はどこに行けばいいのかさっぱり分からない。どうやら、酒場や食堂の施設も持っているらしく、人々が赤ら顔で議論していた。
私はカウンターにいた手近な男に自分の身分を名乗り組合書記長に面会を求める。すると、耳のいい冒険者達が私達の会話を拾い、場内は騒然となった。
「馬鹿なあれが17領主の1人!? まだ小娘じゃないか」
「いや、2領同時経営だから16領主だろう」
「ローラット領を二つに割ってまた、17領主に戻すって噂もあるぞ」
「確かにローラット領は大きいが今のままダーダネルス・ガリポリを2つに分けたままの方が効率的だろう」
「プレスビテリアン帝国に対抗するためにはいつまでも2つに分かれてちゃだめなんだ。統合された組織が必要だからだろう」
「あれは黒佐賀王の秘蔵っ子らしいぞ」
「あの王様も耄碌したよな~なにが賢武王だよ」
「単なる傀儡だろう。どうせネブラスカの手の上で踊るだけだよ」
「いや、あれでも黄金気を使えるらしいぜ」
「嘘だろう。黄金気を使えるのは大陸で黒佐賀王だけだぜ。黒佐賀王の直弟子でも誰1人修得できなかったんぜ」
皆、口々に好き放題、自分の感想を言う。こんなものをイチイチ相手にしていても時間の無駄だと思い無視していたが1人全く毛色の違った感想を私達に述べる者がいた。
「あれ!? アクィナスではありませんか!? あなた、王都で官僚になったと思っていましたのに〜」
読んで頂きありがとうございました。体調が最悪ですが明日もなんとか朝7時投稿に挑みたいです。
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