第165話 黄金気を修得した新米領主の私は気落ちしながらもガリポリ領を今日も訪ねる
学校が終わった私は昨日と同じように一目散に家に帰り、セカンドワールドオンラインにログインする。
帰る前に水無瀬から今日もバイトをしないかと誘われたが断った。
正直、お金が全然無いんでバイトの方に参加したかったが仕方が無い。
私はもう領主様なのだから。
しかし、こんな感じでは税を納めさえすれば自由に経営していいと約束も履行は難しいな。
私のポケットに現金が入ってくるのは一体いつなんだろう。
昨日は第5階層でログアウトしたからどこにログインするんだろうと心配してたが第1階層の自分の部屋にログインした。
どうやらエラー扱いされたようだ。
祥君からもらった転送アイテムのおかげで第5階層までなら自由に下りられるが元々、私のアバターではグランドクエストも全く進めておらず正規の手順では第2階層にすら行けないのだ。
そんなことを考えながらまた、第5階層のガリポリ領のいつもの場所におり、ガリポリ領主館に向け坂道を登っていく。
坂道を登りながらも気落ちが止まらない。
昨日はもっとウキウキしながら登ったのに。そんな感情を抱いたままとりあえず、いつものようにアクィナスに連絡を取る。
(アクィナス、真澄だけど、聞こえる?)
(はい、聞こえますよ。真澄様。来られたのですね。私達は今、ガリポリの領主館にいます。迎えに行きますね)
そう、返事が返ってくるとガリポリ領主館の中から人が出てきて元気一杯に手を振っている。
遠目からでも分かるアクィナスだ。彼女の姿を見ると心が癒される。私も頑張らねば。
「真澄様、ようこそガリポリ領へ」
アクィナスと続けてイヴァンから挨拶を受け領主館に入ると昨日よりさらにスタッフの人数が増えていた。
これはやはり、私のログインシフトが取られているのか。
いつもの受付の男性に挨拶しネブラスカが出勤していることを確認する。昨日は1人体制だったのに受付も2人体制に変わっている。
アクィナスとイヴァンを伴って真っ先にネブラスカの執務室に向かう。
ノックし入室すると昨日のことがあったのにネブラスカはいつものように立って待っていてくれた。
「ようこそ、ガリポリ領へ、今日はどんな御用で」
「いや、用は特に無いけど、これでも領主を拝命した身だからね。報告を聞こうと思ってよったんだ。今日はダーダネルス領に行く予定もないしね」
ネブラスカの勧めも無く勝手に座り、話を進める
。報告とは言ったがなにかプランがあるわけでもない。
しかし、ぽろっと出た言葉だが我ながらいい切り出し方だったな。
なんて返すんだろうネブラスカは。
「そうですか、報告、報告事項ですか。昨日と今日では特段、報告すべき事案は発生していません。モンスターの出現率は例年以上、しかし、冒険者組合にできる職員が入ったらしく討伐数は昨年度を上回っています。失業率は微減。このベラスケス大陸は戦争の絶えない大陸ですので景気は常に良いですな。ただ、やはり王都ブーランジュなどに比較すると魅力に欠けるので、人口における若者の構成比が極端に少なく歪な人口ピラミッドを形成しています。それとこれはガリポリ領だけの問題ではありませんがプレスビテリアン帝国の侵攻が目下のところ最大の懸案事項ですな」
なんの報告かも指定せずいきなりの攻撃だったはずなのにネブラスカは立石に水の如く淀み無く答えてくる。
当たり前のことだがなんて有能な人間なんだろう。
無茶ぶりに対しても全くペースが乱れない。もう、ネブラスカが領主でいいような気もする。
いや、それは単なる逃避か。成り行きで領主になったからといって、ここで放りだすことはできない。
あくまでネブラスカが一等執政官で私が領主なのだ。
ネブラスカにはできず、私にはできることがきっと何かあるはずだ。
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