第163話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領の領主館で今後の善後策を講じる
ネブラスカの執務室を後にした私達3人は領主の執務室に移動した。
初めて入ったがアクィナスの机とイヴァンの机も用意してある。
アクィナスに聞くと出かける前はまだ設営の途中だったとのことだ。完成していてむしろアクィナスが驚いていた。
たぶんネブラスカが手配してくれていたんだろう。
「なんか、せっかく新型モンスターを倒したのに後味の悪いものになっちゃったね~ごめんね。2人とも」
なんとなく空気が悪かったので私から謝罪を切り出すと2人が弾かれたように答えてくれた。
「いえ、真澄様が謝ることでは」
「そうです。私が間違っていたのです。ネブラスカ一等執政官が正しい。やはり、あの場は命を懸けても止めるべきだったのです」
「とりあえず、今日は疲れたね。悪いけど、今日は第1階層に帰るよ。2人はどうする? ネブラスカさんのいる領主館にはいづらいでしょう。王都に帰る?」
「そうですね。あれほど叱責されるとさすがにバツが悪いですね」
「アクィナスさんがそうおっしゃるなら自分は護衛として従います」
「流石にネブラスカさんを怒らせたままじゃ、まずいから明日も来るよ。たぶん、夕方の4時以降かな。ああっ、またダーダネルスに行けなかった。そうだ、エミリーに連絡を入れておかなくちゃ」
私は慌てて内部通信(気)で連絡を取る。まさか、いつかのホテルでの待ち合わせの時のようにずっと待ってるなんてことはないだろうか。
いや、エミリーの性格なら十分有りえる。沈んだ心がさらに重くなる。
失敗した。もっと早くに連絡を入れておくんだった。
(エミリー聞こえる?)
私がおそるおそる尋ねてみると明るい声で返事が聞こえた。
(はい、真澄様。聞こえますよ。私は今、ダーダネルス領の大要塞マムルークに来ています。さすがに大要塞というだけあって凄い大きさですよ。エクシード城よりも大きいんですから。えっと、ずいぶん、遅くなりましたが今から合流しますか?)
(いや、それがごめん。こっちでトラブルがあってそれを片付けてたらこんな時間になっちゃって、悪いけど、また今度行くよ)
(そうですか。それは残念です。今日はダーダネルス領のカンザス一等執政官のさんにお会いしました。カンザスさんも楽しみに待たれているようですよ。挨拶は重要です。なるべく早くこちらにも来てくださいね)
ふう、どうやらエミリーの方はうまくいったようだ。今度、エミリーには何か埋め合わせしなければ。
「エミリーとは連絡が取れたよ。向こうは問題無いみたい。なんか疲れちゃったんで、悪いけど、今日はこれで帰るよ。また明日!」
2人に別れを告げてその場でログアウトする。
考えてみれば、第5階層で直接ログアウトするのはこれが始めてだ。
明日、ログインした時、出現場所がおかしくなるかもしれないがかまうものか。
自分で疲れたって台詞を吐くとどっと疲れがきたのが分かった。
領民のためにモンスターを討伐したら自分の部下から叱責を受け、さらに他の部下2人も気落ちしてしまった。
こんなに苦労して一体、誰のためにやってるんだか。
ログアウトした私は何にもする気になれず、夕食も取らずそのまま寝てしまった。
こういう時、親が2人とも仕事なのは実に都合が良かった。
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三連休も台風もほぼ終わり今日からまた日常のスタートですね。気合を入れていきましょうか!