第161話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領の領主館でネブラスカ一等執政官と対峙する
ガリポリの街まで転移した私達は領主館に続く坂道を登っていた。
転移で来るたびにいちいち坂道を徒歩で登っているが領主館に直接転移はできないものなのだろうか。
内大臣からもらったアイテムからではこれが限界か。
祥君の転移アイテムか魔法ならもっと精密な転移ができるんだろうが。
いや、よく考えればダメか。戦争相手が直接、領主館に転移してきたら? あるいは私のすぐ後ろに転移してきたら? あっという間に暗殺がなってしまうか。そういう理由から直接転移はできなくなっているのだろうか。
私は独りそんなことを考えながら歩いていくと知らぬ間に領主館に到着した。
領主館のドアを開けるとネブラスカが待っているわけでもなかった。やはり、前回のあれは私が来るのをどうやってか事前に知ったからか。
「お疲れ様です。春日井領主」
カウンターから若い男性が立ち上がり笑顔で私に挨拶してくる。
そういえば、この子、名前なんだっけ? 後でアクィナスに確認しよう。いや、領主館のスタッフ全員の名簿を取りよせるのが先決か。
「お疲れ様。ところでネブラスカ一等執政官はいるかな?」
「はい。まだ、お帰りになられていないので執務室にいらっしゃると思いますが」
「分かった。ありがとう」
挨拶を終え、二階の執務室に向かう。
心なしか一番最初に領主館を訪れた時よりすれ違う人の数が多い気がする。
もしかして、ネブラスカの勤務時間を変更するということは領主館のスタッフ全員の勤務体制が変更されるということだったのか。
背中に冷や汗をかきながらネブラスカの執務室のドアを叩く。
どうぞという許可の元、入室する。
この古式然としたスタイルはやはり緊張するな。
いずれ、ドアを撤廃した現代型のオフィスに模様替えしたいな。
いや、エアコンなどがないからそれは無理か。
私が入室するとネブラスカは立って出迎えてくれた。
今思ったがもしかして、私が自分の執務室に戻ってネブラスカを呼び出すのが正しいスタイルだったのではないか。
いや、そんなのは時間の無駄か。
用がある人間が自分で出向いた方が効率的か。
それにこちらから突撃したほうがプランを練って自分のタイミングで突撃できる。
受け手はどんな攻撃がいつ来るかも分からず受けなければならないのだ。
突撃するほうが絶対に有利!
そう自分をだまくらかし発破をかける。
「今日はダーダネルス領に赴き、そこから直帰されるのかと思っていましたよ」
こちらの心の準備が整う前にネブラスカは語りだす。
「それで今日はもう挨拶は済んでいるはずです。どういう用件で再度、来られたのですか」
うわ~やっぱ、怒ってる。
敬語を完璧に使い、声こそ普段どおり落ち着いているがどうも内容が刺々しい。
「それとも、まず後ろのイヴァン・カロリングの報告を聞いたほうがよろしいのですかな」
ネブラスカがじろりと私から視線を逸らし睨むとイヴァンとアクィナスはそれだけで青ざめていた。
神を相手にして戦う気概を見せた軍人をひと睨みでびびらせ自分のペースにもっていくとはどういうおっさんなんだ、この人!
駄目だ。とても嘘を言ってごまかしたり、領主権限で黙らせたりとかそんな相手ではない。ここは脚色を交えて正直に話してしまおう。
「いや~冒険者組合に行ってから私の知り合いに連絡を取ってみたんだけどさ。皆忙しくて無理だったんだ。それにあんまり放置してても近隣住民に危害が加わるとかと思うとまずいかな~と思って、それならイヴァンと自分で2人でやっちゃえと! 威力偵察のつもりで先行して様子を見てダメなら引き返そうとはしてたんだよ。けど、まあ倒せるものなら倒してしまえばいいかなとか思って。予想通りちゃんと討伐できたし、原因は身内の不始末だったから結果的にはOKかな~と思うんだけど」
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