第157話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領ダンヒチの森で新型モンスターの攻撃に苦戦する
私が生命の危機を感じたおかげで【白気】がオートで【黄金気】に変わる。
相変わらず完璧な制御はおぼつかないが便利な【気】だ。
身体能力が飛躍的にアップしたことにより巨大ムカデより先にイヴァンの元へ駆けつける。
巨大ムカデはまだ痛みにのたうち回っている。そのせいで周囲に体液が飛び、辺り一面が毒だらけだ。
これはまずい、早く退治してしまわないとアクィナスの辺りにまで毒が拡散していく。
イヴァンに頭からポーションをぶっかけるとようやく一息ついた。
しかし、まだ歯をガチガチと鳴らし体が震えている。毒が抜けていない。
毒消し、毒消し。
そう思ってアイテムボックスから毒消しを探すが見つからない。
たぶん、買ったのはずいぶん前だ。そのせいでアイテムボックスの底の方に眠っているのだ。
アイテムボックスの画面を高速でスクロールしていくが見つからない。
「真澄様、上です!」
私がウィンドウを凝視しているとアクィナスから警告が来る。
顎を上げると巨大ムカデが私達の方に突進してきていた。
イヴァンを担いで慌てて避ける。
しかし、私が避けたのを確認するとまた角度を私達に襲いかかってくる。
回避しながら回復を行なおうとするがとてもそんな時間がない。
どうやら巨大ムカデも自分の体液が猛毒だと理解しているようだ。
毒を散布していくことで自分に有利なフィールドを作る戦闘スタイルらしい。
私は【黄金気】のおかげで影響はないがイヴァンは毒の濃度が上がったためさらに苦しそうにしている。
どうする!?
一旦退却して態勢を整えるか!?
しかし、アクィナスと【状態異常:猛毒】のイヴァンを連れて無事逃げ切れるのか!?
当初の予定と大幅に狂った。
勝てそうにないなら私が血路を開いて2人を逃がすつもりがとんだ誤算だ。最悪、私が死んでも2人は生還させるという覚悟で乗り込んで来たのに!
まさか、イヴァンが先に戦闘不能になるとは。
いや、逃げるにしてもまずはイヴァンを回復させないと!
一か八かアクィナスを囮にして時間を稼ぐか!?
いや、危険すぎる。
そういえば、身体能力アップと攻撃にしか使ったことは無かったが【白気】は回復に特化した【気】だったはず、うまく使えばイヴァンを回復できるのではないか!?
そう閃いた私はイヴァンにもう1度ポーションをぶっかけ回復させる。
「イヴァン君。【白気】を使った回復方法を私に教えられる?」
私がそう尋ねるとイヴァンはかすれかすれの声で教えてくれた。
「敵を倒すという敵対的オーラではなく、友好と慈愛の心を持って自身のオーラを対象者に流し込むのです。害意なき純粋な【白気】ならそれ自体が生命という光に強く作用しその輝きを増加させます」
また概念的な区別の付け方だ。
しかも、害意の有り無しでダメージか回復か識別されるなんて。
他人に一切の害意を抱かずに在ることなど普通の人間にできることなのか!?
今だってイヴァンに足を引っ張りやがっていう感情はわずかには抱いているのに。
しかも、失敗すればそのまま攻撃反映されてしまう。下手をしたらイヴァンは死んでしまうぞ。
「やって下さい。あなたの【黄金気】には害意がまるで無かった。だからあの程度の怪我で済んだ。あなたの心に浮かんだ言葉に乗せて使えば必ず成功する」
私が躊躇っているとイヴァンが背中を押してくれた。
王都ブーランジュでは私が彼をぶちのめし、今また、彼の意に反してダンヒチの森に連れてきて彼を窮地に追いやったというのにその彼が私を信じてくれたのだ。
私も自分を信じよう。
【黄金気】を消し、【白気】に変える。
身体能力は落ちたが巨大ムカデの動きは遅い。
【白気】でも十分に対応できる。
中途半端な【白気】の量では彼の身体を蝕む猛毒は抜けない。
彼の身体の中にある猛毒の排除と体力の回復を願い自分が展開できる最大量の【白気】を流し込む。
「白澄!」
自分の名前の一部を切り取った状態回復の気を彼に送り込んだ。
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