第153話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領で次案選択を行い話をまとめる
「って言うけど、私はネブラスカさんより強いよ。アクィナスから聞いていると思うけど【黄金気】を使えるのは知っているでしょう」
私はややムキになって反論した。
ネブラスカが本気のトーンで私の提案を否定してきたからだ。
いくらなんでも上下関係をはっきりさせねば後顧に憂いを残す。
「だとしてもダメです。たとえ、あなたに黒佐賀王以上の戦闘力があってもお止めします。どうしても領主自ら戦われるというなら私の辞職をお認め下さい」
ぐっ、そこまで本気だったとは。覚悟が足りなかったのは私の方だったのか。
私の身を案じてくれるのは嬉しいが頭が固い。
というかぽっと出の領主がモンスターに殺されてで死ねば万々歳じゃないのかな?
私は実力で上り詰めた訳でもなく、王の酔狂で領主に選ばれただけのコネ領主だ。
そんな人間のためにそれも会って2度目の人物のためにここまでの発言ができるとは。
人物像を練り直さないといけないな。
「分かった。じゃあ、次案。イヴァン君を派遣するっていうのは?」
「彼はなかなか強いですが冒険者レベルで言えば中の上と言ったところです。中の中の冒険者でも失敗しています。敵の強さの底が分からない状態の中では、いささか不安です」
「なら、彼+私が異界人の冒険者を連れてくるっていうのはどう?」
「それなら…いや、しかし、それだと討伐報酬の値上げと実質変わらないのでは? だとしたら地元の冒険者に仕事を依頼したほうがまだガリポリ領にお金を落としてくれるのでマシなのでは…」
ネブラスカは私の提案をじっと慎重に考え、そう返してきた。
よし、大分折れてきた。もう一押しだ。
「いや、報酬は今のままでやらせるよ。うまくいけば黒佐賀師匠が来るかもだしね。ああっ、それと中央に対する私の面子とか、貸しとかは気にしなくていいよ。予算も大事だけど命はもっと大切だからね。被害が出てるのなら多少、出費がかさんでも害獣の駆除は早めにやって。命さえあれば後でいくらでも税金は納めてもらえるでしょう」
最後の一言でようやくネブラスカが折れた。
なんだかんだで私達2人の目的地は一緒なのだ。
少ない予算で迅速に害獣を討伐する。
2人の違いはリスクを取るか取らないかの違いにすぎない。
いや、ネブラスカに取ってはリスクだが私に取ってはリスクでないというだけの話だろう。
「じゃあ、ダーダネルス領に行くついでに冒険者組合によって手続きしてくるよ」
私がそう結論付けるとちょうどアクィナスとイヴァンが2階から降りてきた。
◇◆◇
「イヴァン! 無いとは思うが春日井領主がダンチヒの森に行こうとすれば命に変えて止めろ。これは一等執政官の正式な命令だ。よいな」
ネブラスカは私の様子に何かを察したのだろうか、強い口調でイヴァンに命令した。
「嫌だな~ネブラスカさん。そんな命令を出さなくともダンヒチの森になんか行きませんよ。さあ、イヴァン君、アクィナス、さっさと冒険者組合に行かないとダーダネルス領にまた行けないよ。そろそろ行こうか」
私はネブラスカに丁重に挨拶するとガリポリ領主館を後にした。ネブラスカはまるで何かを監視するように私達が見えなくなるまで見送ってくれた。
ネブラスカの姿が見えなくなるのを厳密に確認し尾行も付いていないことを確認してから私は2人に言った。
「さっ、ダンチヒの森に行こうか! 2人とも」
私の提案に2人は目を丸くして驚いていた。
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