第152話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領で2択では選べない案件を突きつけられる
「そうですか。ご迷惑になりますがありがたいですね。私は主に月曜から金曜は夕方から、土曜は昼から、日曜、祝日は1日通して来ることが可能です。勤務体制もそれに合わして調節して頂ければと思います」
NPCだからとか舐めては逆効果だ。
自分より格上の相手には自分の弱味をさっさと見せて協力を仰ぐ。
こちらの活動時間を曝すことによって私の活動時間外に何か手を打ってきそうな気もするが平日だっていざとなればズル休みを取ることもできる。
ネブラスカの予想外のタイミングでログインすることもできるし、エミリーだっている。
あまり疑心暗鬼にならず積極的に情報を開示して協力を取り付けよう。
「ところで今日はダーダネルス領へ行ってみようと思うのですがアクィナスとイヴァンはどちらに?」
ネブラスカとあまり長く話をしていてはペースを捕まれてしまう。早々に切り上げるためにも2人の存在をダシにした。
「2人なら現在、執務室の設営をしております。元々、副官という役職がガリポリ領には長くありませんでしたからな。急遽、私の部屋をまじ切って作っている最中なのです。それより、春日井領主、緊急にご相談したいことがあり待っていたのですが」
あれ!? 昨日の意趣返しだと思ったがそうでは無かったのか!?
「実はガリポリ領の南東、ダンチヒの森に新種のモンスターが現れ対応に難儀しているのです。なんでも、かなり強い毒を持っているようで」
また、毒か…なにか毒性生物に縁があるな…まさか、また蛇とかじゃないだろうな…
「普段は冒険者組合に討伐依頼の仕事を斡旋し、冒険者組合で対応できなけばガリポリ領騎士団が討伐を行なうのですが今回は冒険者組合もガリポリ騎士団も対応が困難なようで困っているのです。王都ブーランジュに軍の派遣を依頼すべきか、それとも冒険者組合に討伐報酬を上げて対応させるべきか迷っています」
「2択にまで絞れたなら何を迷っているの? それぞれのメリットとデメリットを比較すれば簡単に答えがでるんじゃないの?」
「難しいですな。どちらも一短一長ですから。軍の派遣を依頼すればおそらく黒佐賀王本人か、直弟子の誰かが派遣されるかでしょうな。彼らが軍を率いて万全の態勢で来てくれるでしょうがいかんせん、派遣までに時間がかかりすぎます。それに春日井様が着任された早々に王都に貸しを作るのもあまり面白くありません。討伐報酬の引き上げも領民から預かった貴重な血税をみすみす金目当ての冒険者に渡すことになります。元々使う予定だった予算が減ることにより幾つかの政策に影響が出るでしょう。こちらもあまり面白くありません」
なんだ!? この自然なフラグは…
まあ、手軽な解決策があるならそれにこしたことはないか。
私は深くため息をついてからネブラスカに提案した。
「私が今からダンチヒの森へ行って、その新種のモンスターを倒してくるっていうのはいけないの?」
「春日井領主が!? 絶対にダメです。却下します」
「って、私の方が権限が上でしょう。ネブラスカ一等執政官はアクィナス副官より権限が下でしょう!」
私が冗談じみた軽い感じで突っ込みを入れるとネブラスカは至極真面目な答えを返してきた。
「領主が間違った選択を行なったときは命を賭けて諫言するのが部下たる者の勤めです。領主自ら戦うのはこのガリポリ領が落ちるときのみです。春日井領主が戦う場所は戦場とは別の場所に存在するのです」
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