第148話 黄金気を修得した新米領主の私はついにダーダネルス・ガリポリ領に現地入りした
医務室に入るとイヴァンが敬礼し出迎えてくれた。
どうやら、誰が気を回して私達がココに来るということを伝えてくれていたらしい。入れ違いにならなくてよかった。
イヴァンは全身を包帯だらけにしていたがそれでも意気軒昂だった。
考えてみればここは全員【気】が使える国、クロサガ王国の首都ブーランジュなのだ。私以上の【白気】の使い手は当然いるか。
「本日付けでダーダネルス・ガリポリ領派遣駐在武官の任を賜りました。イヴァン・カロリングです。春日井様、先ほどは誠に申し訳ありませんでした」
先ほどまでの遺恨を全く感じさせない様子で私に話しかけてくる。
これは上っ面だけなのか、本音なのか真意を図りかねた。
「うん、終わったことだし、いいよ。私こそ、急に転勤を言い渡すことになってごめんね」
軽い気持ちで彼を欲しがったが考えてみれば人一人の人生を大きく変えてしまったのだ。ここは素直に詫びておこう。
「いえ、17領主の内の1人に襲撃を働くなど極刑もいいところ。それが栄転まがいの配置換え。この上は春日井領主のために命を捧げ罪を雪ぐ所存であります」
「う~ん、固いな~私のことは真澄でいいよ。軍隊に所属してる人間が個人の存在ために命をかけちゃダメでしょ。あくまでも国民の命と国王である黒佐賀王のために働かないと」
私がそう告げるとイヴァンは目を丸くして驚いていた。アクィナスも同様だ。エミリーはうんうんと嬉しそうに同意し、三重野先輩はやや不満そうな顔をしている。
私としては当たり前のことを言ったつもりだがそれほど意見が分かれるようなことなのだろうか。
黒佐賀師匠との約束で私は黒佐賀の配下となり領地経営を行なう。その際、しっかり税金は入れる。後は自由に領地経営をしていいとのことだったから彼らも私の私兵になるわけではなくこれまでと同じように黒佐賀王国のために働いてほしかったのだが。
なぜか室内に微妙な空気が流れてしまった。まあいい、とりあえずイヴァンとの合流は果たしたのだ。
「さて、メンバーもそろったし皆でダーダネルス・ガリポリ領に転移しようか!」
私は待ちきれず皆にそう告げた。
◇◆◇
「ここがダーダネルス・ガリポリ領か~」
海と山に囲まれたのどかな風景が私の目の前に広がっていた。
既に何度も現地入りしたこともあるアクィナス主導の転移で私達はようやくダーダネルス・ガリポリ領に来ていた。
「正確にはここは海があるのでガリポリ領です。この海を目指して隣国プレスビテリアン帝国が領土拡張の野心を持っているのです」
アクィナスがすかさず訂正を入れてくる。
「さらにここより東の位置にあるのがダーダネルス領です。あちらは完全に周囲をプレスビテリアン帝国に接しています。奪われるとしたらまずダーダネルスです。プレスビテリアン帝国の野心はダーダネルス領を確保し最終目標であるガリポリ領に侵攻し港を手にすることにあります。だからこそ、ダーダネルスには大要塞マムルークがありプレスビテリアン帝国の侵攻を阻止しているのです。後であちらの大要塞にも挨拶に行きましょう。さしあっての問題はダーダネルスとガリポリどちらに本拠を置くかですね」
なるほど、アクィナスは軍事的脅威を説明するためにわざとガリポリ領を転移先に選んだのか。
しかし、2つの領地の経営、しかも両方国境線を持っている。要塞まで領地にあるのか。
知れば知るほど領地経営に対して恐怖しか湧いてこないのだがどうしよう。
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