第145話 黄金気を修得した新米領主の私は地獄までお共してくれる友人を得た
「さて、いつまでもここにいても仕方がありませんし、行きましょうか! お2人共」
「えっ、エミリーも領地経営を手伝ってくれるの?」
「当然です。真澄様が苦労なさると分かっているのに放っておくことなどできません。地獄まで一緒についていきますよ」
重いな。私が地獄に落ちることは確定なのか。
「と思ったらこちらから尋ねずとも騒ぎを聞きつけ向こうからやってきてくれたようです」
エミリーが見つめた先には禿げた小柄なおじいさんがいた。よく見ると門番達がおじいさんに対してしきりにペコペコしている。えらいさんなのかな?
「春日井様この度は誠に申し訳ありませんでした。春日井様のことは王より聞いております。通達が末端までいきわたらなかったのは私の落ち度、本当に申し訳ありません。私、黒佐賀王国内大臣マカートニーと申します。生憎と主である黒佐賀は本日、留守にしております。立ち話もなんですのでどうぞこちらへ」
内大臣マカートニーが先導すると今まで意気消沈していた門番達が敬礼し見送ってくる。
よく見るとイヴァンも早くも回復し、ふらつきながらも立ち上がり敬礼している。【黒気】の全開防御で防いでいたのかな。だとしたら今までエミリーが言ってた黒佐賀王への罵倒も聞かれてしまったかも知れない。余計な恨みを買わなければいいのだが。
◇◆◇
マカートニーによって案内された部屋は大臣室と呼ばれるものだった。非常に広い部屋ではあったが装飾といったものは一切無く、無機質な感じを抱かせる部屋だった。
「黒佐賀王は質素倹約、質実剛健を重んじる王であってな。華美な装飾といったものにあまり理解がないのだよ」
私が部屋を見回しているとこちらの心を読んだようにマカートニーが答えた。
「さて、先ほどの門番の暴走、改めてすまなかった。国家の要人に対してなんという狼藉、誠に申し訳なかった。彼は我が国の法に基づいて厳正に処罰しよう」
「いえ、もう過ぎたことです。謝罪を受け入れます。それと彼、イヴァンの処罰も不要です。処罰するぐらいなら私の領地に下さい。」
この先、優秀な人材はいくらでも必要なのだ。私に一撃で敗れたが彼はエクシード十剣のフレディックと同格の強さ。【黒気】、【青気】、【剣気】の3重のオーラを操る猛者。処罰するぐらいならもらっておいたほうが得だろう。
問題は火のように熱い男なので私に扱いきれるかどうかだが。それと黒佐賀師匠への尊敬が強すぎて師匠への侮辱は、即、鉄剣制裁で返礼する件か。これも矯正させないと。上手くできるかな。
「分かりました。彼に関する人事権は私には無いが後で王城の警護隊長に話をしてみよう。いや、後でと言わず今の方が良いか、ちと失礼」
そういうとマカートニーは椅子に座ったまま、誰かと会話し始めた。うん!? そうか、内部通信(気)か! 流石は識気率99%の国だ。大臣がナチュラルに気を使って他人と交信できるとは。ということはこの大臣も戦闘になれば強いのだろうか。
「警護隊長と話が纏まりました。治療が終わった後、ここに出頭させます。一応、身分は王軍ダーダネルス・ガリポリ領派遣駐在武官となります。まあ、出世という扱いになりますが構いませんな? 給料は引き続き王軍から支給されます」
もちろん私に異論は無かった。三重野先輩とエミリーの顔色が微妙に変わったが今は気にしないでおこう。
「それともう1人紹介したい人物がいます。ご要望されていた仕事のできる副官です、アクィナス入りなさい」
「アクィナス・ユトレヒトであります。よろしくお願いします」
パリッとしたスーツを着用しメガネをかけ肩まで伸びる金髪をした小柄な女性が現れた。
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