第143話 黄金気を修得した新米領主の私は王都ブーランジュの王城の門を破壊してしまう
「さて、武器は折れちゃったみたいだけど、まだやるの?」
私はあまりこの戦闘に意味を感じていなかった。都合良く武器破壊ができて戦闘に一段落がついた。まさか黄金気の全力展開があれほどの防御力を誇るとは予想外だったが。
「ぬかせ、気使いは武器が無くなったとて闘う意思さえあれば継戦可能だ。【黄金気】などオレの目の錯覚だ。【黄気】をそれっぽく見せているだけだろう。オレの闘う意思を挫かぬ限りオレの戦闘に終わりは無い」
イヴァンはまだまだ意気軒昂だ。高位の気の使い手は自己暗示もすごいのだろう。ここまでの実力差を見せてもまだまだ、戦闘続行の意思は固い。
兵士としては優秀極まりないが相手をするほうはシンドイことこの上ない。ましてこちらは因縁を吹っかけられて相手をしているだけなので余計にシンドイ。さっさと終わらせてしまおう。
「なら決着をつけるのみだね。生憎と【黄金気】を使った技はこれしか修得してないだ」
考えてみれば黒佐賀師匠が言ってたそれっぽい中国拳法の構えというのもこの自己暗示を強化するためにやっているだけかもしれない。
もしかして、この構えの下りはいらないんじゃないかと思いながら自身の迷いを消し全力で声を振り絞る。自分で撃てるという絶対の確信がなければ撃てないのだ。
「流派黒佐賀が奥義! 黄金気弾!!」
そう叫ぶと見事、黄金の気弾は精製されイヴァンに直撃し城門ごと吹き飛ばした。
そして威力の加減が一切できないことがこの技の弱点だということが分かった。
◇◆◇
他の門番達は私が【黄金気】を使い、イヴァンを倒し、城門に穴を空けたことに混乱している。
私も城門に穴を空けたのはやり過ぎたと思っている。そして、城門で狼藉を働いたのは事実だ。ここは素直にお縄につくしかないか!?
しかし、そうして私が覚悟を決めたというのに誰も私を取り押さえようとするものはいなかった。誰もが遠巻きに私を取り押さえるべきか、応援を呼ぶべきか悩んでいる様子だった。
しばらく重い沈黙が辺りを支配すると突然、1人の門番が剣を抜いた。それがきっかけとなり全ての門番が剣を抜いた。やはり城門で騒ぎを起こしたことで職業魂に火がついたのだろう。
「そこまです。黒佐賀王国の兵達よ」
なぜか非常に聞き馴染んだ声が門の中から聞こえる。確認してみるとエミリーだった。
「それ以上、この方に狼藉を働くというのならこのわたくしが相手をします」
そう叫ぶとエミリーはひと飛びで私の隣に飛び、門番に対して同じく剣を抜く。
「エミリー姫だ!」 「剣王姫だ!」
門番達から声が飛ぶ。
「真澄様、お怪我はありませんでしたか?」
「うん、大丈夫だよ。それよりなんでエミリーがここにいるの?」
私の問いにエミリーは渋い顔をして答えた。
「【カラーオーラ】修得が全くうまくいかず、あの日からずっとこの黒佐賀王国に滞在して修行をしていたのです。黒佐賀王国の兵達に剣技を教えることで代わりに気のコツを教えてもらったりして。セカンドワールドに来られたなら呼んで頂ければすぐに飛んでいきましたのに。わたくしはあなたの護衛なんですよ」
「いや~ごめんごめん。今回は戦闘無しの野暮用だったからエミリーの時間を使っては悪いかな~と思って」
「戦闘の有り無しなど真澄様にコントロールできる代物ではありません。現に今だって戦闘に巻き込まれていらっしゃるじゃないですか!」
エミリーが強い口調で叱責してくる。
「いや~ごめん。それで、この状況どうしよう? 一旦、逃げようか? けど、あそこに友達を連れてきてるんだ」
私が指を刺した方向には三重野先輩が1人立っていた。門番の側にいるようにお願いしたが流石にこれだけ騒ぎを起こせばボディーガードは不可能か。
「そうですね。彼らは気の運用は素晴らしいですが実力的にはそれほどでもありません。直弟子はまた異次元の強さを持っていますが。そもそも、真澄様は先頃、この国の17ある領地の内2つを賜ったのでしょう。なぜ、この国の兵士に追われてるのです? あなたは領主として軍に守られる立場でしょう」
「なんかいきなり黒佐賀師匠の直弟子で領主の人間はいないみたいなんだ。んで、直弟子で領主なのはおかしいって話からフォリー・フィリクション・フロックとかいう盗賊団と間違われてしまったようで」
「馬鹿馬鹿しい。黒佐賀殿も異界人のくせに非常に非合理的な真似をしますね。そもそも、国民皆兵と政軍分離が根本から矛盾しているではありませんか」
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