第139話 黄金気を修得した新米領主の私は現実世界のバイト先で慎重に動くことの重要性を再確認しています
接客室から出た私は再びチラシ配りに戻った。水無瀬さんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。仕事のミスは仕事で返す。
とはいえ、やはり先ほどのクレームのせいで臆病になっている。
再びクレームを起こさないようにできるだけ相手の仕草を細かく見て渡すようにする。すると先ほどまで、気付かなかったことが次々分かってくる。
学生もいれば、お年寄りもいる。新婚さんぽい人や、おばちゃんもいる。仮想現実がいくら進もうとも、やはり、買い物は買い物。人類の買い物に対するライフスタイルが劇的に変わるいうことは誰も予想もしていなかっただろう。
というか、渡すときに『どうぞ』と言って渡すのもどうなんだろうか? もっといい渡し文句はないものなのだろうか?
こんなことならもっとよくチラシ配りの人の様子を見ておくんだった。『気づいたときには全てが遅きに失し、過去の積み重ねだけが今を作る』誰が言ったか忘れたが自然とそんな文句が心に浮かんだ。
商品の性質上、カラオケ店や飲み屋のように活気よくいくわけにもいかない。難しいな。
やはり、先ほどの続きでさらに細かくお客様の仕草を見て対応するしか方法は思いつかない。特に私がチラシを配っているのを興味深げに見ている人や巨大ポップを興味深げに見ている人に優先的に声をかけるぐらいしかないか。
そんなことを思っていると初老に差しかかったぐらいのおじいさんが1人、太陽光パネルの巨大なポップを見上げている。帰っていく人で、レジの方を時折みているから待ち合わせかもしれないが、たぶん、興味を持ってくれてるのだと思う。
「どうぞ」
私は初老のおじいさんの目をしっかり見て、チラシを渡す。こうすればチラシを受取ってくれると思ったからだ。しかし、しばしば現実と予想とは大きくギャップが開くことがある。
「先程は大変でしたのに元気にお仕事を続けれおられるようですな」
ガ~ン、さっきのクレームを遠巻きに見ていた人だったのか。格好悪い~
「いえ、お騒がせして申し訳ありません。実は今日がバイトの初日でどう対応すればいいか分からなかったんです。上司に助けてもらいました」
心の動揺を顔の表情に出さないようにしてなんとか自制して答えることができた。
「ふむ、非常に質の高いスタッフが揃っておるようですな。実は私も昔はセールスマンでしてな。就職した頃、いきなり大失敗をやらかしまい、私も上司に助けてもらいましたよ。最初に大きく失敗すると慎重に動くことを覚えトータル的にはミスの少ない仕事人生を送れるものですよ。今はその上司も他界しておりますが当時、様々なノウハウを教えもらい感謝したものです。しかし、同時にワンマンで他人の意見を聞かず自分の考えだけで突っ走る人でよく衝突しました。そういえば、その上司も自宅に太陽光パネルを設置しており、家を訪れるたびに電気代が無料だと自慢しておりましたな~。懐かしい。当時、転勤も多く持ち家というものを持っていなかったのでさして興味はなかったのですが今は腰を落ち着け生活していますので今なら設置することもできますね。お話を聞かせてもらっていいですか?」
やった~始めて第3段階まで到達できた~
私は嬉しくなってすぐに水瀬さんを連れ戻しにきた。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿時間は休みなので不明ですがなんとか7時投稿をできるようにがんばりたいと思います。
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