第131話 依頼PK(プレイヤーキル)
「ふうん、よくガズナに接触できたな」
「私に接触するための専用のエージェントと情報屋を雇ったようです。単独の依頼ではなく連名の依頼ですね。既に方々にかなりの金を支払っているようです」
祥君の問いにガズナは淡々と感情をこめることなく答えていく。
「情報屋で依頼 PKをできるメンバーを絞り込み、私と接触できるエージェントの情報を買い、私に接触できるエージェントに仕事を依頼したようです。相当な手間がかかっています。それほど恨みが深いのでしょう」
そういうとガズナは祥君に手紙のようなものを渡した。
「またブラック企業の社員からだ。報酬もかなりの金額が連名で前払いしてある。ここまでされたら受けようかな。断るとどうせリアルで殺人が起きるだろうし」
2人でどんどん話が進んでいっている。あるいはわざと私に話を振らず、別れもせず話を進めているのだろうか。ここで割り込めば確実に祥君の世界に足を踏み込むのがさわりだけでも分かった。
「依頼 PKって何?」
それでも私は勇気を持って割って入った。2人だけで話を進めていいような問題ではないはずだ。私はなんとなく察しはついたが会話の糸口をつかむためそう切り出した。
「もちろん、誰かから依頼を受けて対象をPKする行為だよ。自分の意思で行うPKとは異なり依頼者の意思に賛同したから、依頼者の想いを汲んだからPKしてあげるみたいな形かな。いろんな依頼PKの形があるけど痴情のもつれみたいなものは受けない。オレが受けるのはこういった自分の力ではどうにもできない。しかし、恨みは残る。せめて仮想現実上で復讐してくれってパターンだね。大体、金持ちとか政治家とか社会的地位の高い人間が多いね。こういった人間はセカンドワールドオンライン上でも護衛を侍らせているからね。彼らにとっても自分の情報が失われるのは損失なんだよ。痛み以外の五感の全てを共有する情報体を殺害される。そうして依頼者の溜飲はわずかに下がるってことだね」
そう語る祥君の目は嬉々として輝いていた。そして、決定的な選択肢が与えられた。
「真澄さんも一緒にくるかい? 見学だけでもいいけど」
まるでピクニックに誘うような陽気な声で祥君が誘ってきた。
「ちなみに顔を見られたら永久に表舞台で就職なんてできないよ」
まあ、当然のリスクだろう。暁の12賢人の革命によってPKは法律では禁じられていないがセカンドワールドオンラインの情報体はもはや、個人の財産なのだ。それを意図的に害すれば表の世界では当然、社会的制裁を喰らうだろう。セカンドワールドオンラインのシステムではPKを容認していると言っても自称常識人達には通用しないだろう。いや、祥君の定義する依頼PKという行為は弱者が強者の驕りを正す最後の一手だ。そういった自称常識人がターゲットなることの方が多いだろう。だとすれば自らの保身のために怒りくるってなおさらPKに協力する関係者など許さないだろう。一般プレイヤーがPKされるのはゲームシステムの一部と言って何の対応もしないが護衛を連れてワザワザPKを防止しているのにそれを突破してくるような存在には社会的制裁など諸々の搦め手で攻めてくるはずだ。
「分かった、私も行く。前に言った私の目標をまさか忘れたわけじゃないでしょう?」
私の選択はもちろん参加の一択だ。そして、自分の決心を確認するために、祥君に渡した報酬がずっと生きているということを証明するために、嘗て祥君に言った言葉を繰り返した。
「私の目標は全てのプレイヤーの頂点に立つこと! そして、そのために全てのプレイヤーを殺し尽くす。だから清水谷君、私の作るギルドに入らないか? このクエストに対する報酬はこの私だ。血みどろのプレイヤーキラーであるあなたにどこまででもついていってあげる。私があなたのパートナーになる、最後の瞬間まで絶対に裏切らず最後の最後までついていく!!!」
そう一息で言いきり最後にこう足した。
「今はまだ足手まといになるかもだけど」
「黄金気を使えてオレに一撃入れれる人間が足手まといなはずがないさ」
祥君も私の参加を認めてくれたようだ。
「けど、記念すべき真澄さんの最初のPKの相手がこんな小物じゃあつまらないよ。だから今回は見学とお手伝い程度だね」
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