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第13話 女勇者を動かした訳

 「分かったわ、私も協力するわ!」


 誰かに一緒にプレイしようと誘われても断り、ずっと一人で悶々とプレイしていたがきっとこれだ! 

 彼らに足りず私が欲しかったものは!!! 

 セカンドワールドオンラインに賭ける圧倒的な想い。

 この天都笠渚という女性からは身体から滲み出るほどの仮想現実ゲームに賭ける情熱がある。


 「全く、お前ような素人の手助けなどあってないようなものだが…」


 そう言いながらも天都笠さんはどこか嬉しそうだった。


 「それで、どこか高レベルプレイヤーの知り合いはいないのか?」


 「私はまだ入学してから四日しか経ってないの。高位プレイヤーの知り合いなんているわけないでしょ」


 「ほう~それは奇遇だ、私もこの春入学したばかりだ」


 「げっ、同い年だったの!? それでその立ち居振る舞いって…」


 「言ったろ、このゲーム(セカンドワールドオンライン)においてはレベルが全てだと。レベルの差だけ敬意を示せと」


 胸を張り、自分の優位性を誇示する。

 心の底からゲームでの優位性が現実世界でも有効だと考えている顔をしている。

 なんだか突っ込むのにも疲れてきた。


 「ちなみに福天高校だ!」


 天都笠さんはそんな私の様子を察することもできず、話しを進めていく。


 「げぇ~、同じ高校だ!? まさか一組じゃないでしょうね…」


 「いや、八組だ。どうやら近々にリアルでも会えそうだな」


 「なんか、理科室への移動の時、似たような顔を廊下で見たな~って思ってたんだ。八組の『沈黙の日本人形』ってのは、あんたのことか」


 「私もこの間、全校集会の移動中、狐顔をみたことがあったぞ。祥を見ていたついでだったがな」


 「というか高校から初めてなんでそんな反則的にレベルが高いのよ。なんかズルしてたでしょ。小学、中学じゃ情報体アバターは学校の外にはでられないはずよ」


 「やれやれ、お前のような人間がいるから日本は外貨獲得に失敗するのだ」


 そう言って胸を反らし、昏々と説明してくる。


 「今日び、そんな罰則規定もないログイン学校縛りや家庭縛りのルールなんて守ってる人間の方が愚かだよ。察するにお前の情報偏差値も透けてみえるよ。お前、周りにネット環境に詳しい友達いなかっただろう。それに両親、親類もみんなネット嫌いだろう。どうせ、パソコンを買ってもらったのも中学入学の時なんじゃないか。それも親の何世代も前のパソコンを譲ってもらったか、中古の型落ちを買ってもらったぐらいだろう~悲しいね~情報教育格差ってやつは…まあ、我々は頼まれもしないのに知識の押し売りをするカルト宗教家ではなく問われて初めて答える賢者でありたいからお前の境遇に関して一定の責任を感じるよ。分からないことがあったらなんでも聞きたまえ」


 「あんたさ~リアルに友達いないでしょ」


 「その質問からして情報偏差値50の発言だよ。リアルの友達とやらに一体どんな意味があるというだい? 建前だけのきれいごとを繰り返し、真理触れる発言をすることも事象を掘り下げることもない。ただ一度の失言を揚げ足をとってみたり、どこかでタブーワードを踏まないか神経を極限まで張り詰める。全く中身のない日常会話にどれだけのエネルギーをそそぎこんでいることか。疲れるだけで全く意味がないのだよ」


 「そこが間違ってるんのよ。疲れるだけの成果がきちんと現れているんだよ。疲れるけど、疲れるからこそ、そこから逃げちゃダメなんだよ!!! その、意味のない会話から人間関係は始まっていくんだよ。生の人間は初めから濃い話なんてできないよ。確かにネット上ならいきなり濃い話だってできる。けど、目の前のリアルの人間と濃い話をするのはもっと楽しいよ。コストを支払うだけの価値が確かにあるんだから。そして、ネットとリアルの違いはその繋がりが現実世界の環境を変えることだってあるんだから!!!!!」


 私は思わずそう叫んでいた。

 天都笠さんばかりに吼えさせているわけにはいかない。

 むこうが仮想現実オンラインのハイエンドなら、私は現実世界オフラインの達人だ。


 「ネットにだって、リアルを変える力はあるさ。暁の12賢人の革命がそうだっただろうが…ネットの一石がリアルを変える大きな渦になることもあるよ。けど、今の発言は心に染みたよ。春日井真澄、お前の名前は覚えておくよ。レベル4にしてレベル300のプレイヤーを打ち負かすことができた最強のレベル4として。そして改めてお願いする。春日井真澄どうか私に力を貸してほしい。私はどんな手段を使ってもこの街を救いたい。私にとってこの街は出発点、起点なんだ。ホームポイントとして何万時間過ごしたんだ。この街の中でなら目をつぶっても目的地にたどりつけるほどだ。この景色、この風景に絶対的な愛着があるんだ!!!!!!!! 私はもう一度、ショウに自分の全てをぶつけてみる。だから春日井、君にも協力してほしい」


 私はこれまで響くことのなかった彼女の言葉に始めて共感を感じた。


うーん、会話だけになってしまった…

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