第128話 黄金気修得の条件とは!?
「というか前から聞きたかったんだけど、時々、数百年って表現が出てくるけどセカンドワールドオンラインができてからまだ、30年ぐらいよ。何百年も経ってるわけがないんだけど」
私とRDHの会話は弾む。彼は様々なことをしゃべりたくてたまらないという感じだし、私は私で聞きたいことが山ほどあるのだ。
「なんだそんなことか、神には【マップの創造】スキルがあるのだ。マップの経過時間を自由に操作できる。時間が1万分の1のマップでなら100年も3日ちょいぐらいだ。精神と肉体が100歳、歳を取ることになるがな」
さすがはセカンドワールドオンラインの中の特別製のNPCだ。すごい使用だ。
「まるで並行世界の創造じゃないの」
「誰が考えたか、どうやってそれを実現させているのか知らんがそういう意味では怖ろしいな異界人の力というのは」
「ところでエミリーは神じゃないの?」
私は一番気になっていたことを聞いてみた。もしかしてエミリーにもそのうち【マップの創造】が付くのだろうか。だとしたらとりあえず、ログイン時間の件で悩むことはなくなる。というか今、RDHに頼んで修行時間を縮小すれば祥君と一緒に冒険もできるのではないか!?
「さて、創造神が出てきたりしたせいで、もうさっぱり分からんな。普通は世界がゲーム盤で我々、NPCがゲームの駒に過ぎないと知り、それを知って壊れることなく覚醒すれば迎えが来て神になるのだが、あの子は失敗して、お前達がエクストラクエストで創造神を呼び強引に治したような格好だからな!? どういう扱いになるのか誰にも分からん。普通ならどこかの神がエミリーの前に現れ、連れていき神の教育を施すのだが…もしかして、私がやらねばならなかったのだろうか!? ちなみに私の時は覚醒した後、上級神ゲティスバーグという神が迎えに来てくれ、神が弱くては話にならんと100年ぐらい肉体強化の部屋に押し込められたな」
なんだかRDHが遠い目をして当時のことを語ってくれた。
そんな話をしつつ気弾の練習をしていたらとうとうガラスは割れ気弾を修得することができた。
◇◆◇
「どうやら気弾は修得したようじゃな。白気を纏う者が使う気弾なので白気弾と名付けのるがよかろう」
黒佐賀が頼んでもいないのになんの捻りもない名前をつけてくる。まあ、便利なので使わせてもらうか。エミリーと渚は視気薬による修得に失敗したとかで今は別の修行に励んでいる。その修行の効果で視気薬での発現が劇的に上がるという。一体どんな修行なんだろうか。
「ならば、そろそろ黄金気の修得じゃな。レディアスよ、ここからは我輩が引き継ごう! お主もよく見ておるのじゃ!」
「はっ」
RDHは黒佐賀に対して非常に従順だ。神のくせに体育会系なんだろうか。
「春日井よ、我輩の前に出ろ!」
私は黒佐賀の前に出る。別に黒佐賀が向きをちょっと調節すれば済む話だったのだがなにか意味でもあるのだろうか。
「気については学んだな。黄金気とは黒気のように攻撃力が偏って上がったり、白気のように回復力が偏って上がったりするわけではなく全能力が等しく底上げされる、カラーオーラの最高峰! その獲得条件はシンプル極まりない。情熱、熱血、熱量、声の大きさじゃ」
声の大きさが関係あるのか!? いや、ろうそくの炎を消したり、ガラスを割ったり気と声には関係があるような!? いや、祥君は特に大きな声を出していなかったような!? 祥君は達人だからか!? 素人の頃は大声をだしていたんだろうか!?
「まず、それっぽい、中国拳法の構えを取るのじゃ。そして、我輩が発声した以上の声量と長さで我輩の後に続くのじゃ」
それっぽい、中国拳法の構えってどんなんだ!? 私が混乱していると構わず黒佐賀は話を続けていく。
「今から、ワシがお主に気弾を撃つ、お主も気弾で打ち返すのじゃ。その時、見事成功すればお前の体は黄金のオーラに包まれておるじゃろう」
そう、言うと既に黒佐賀の身体には黄金色の膨大な気が収束している。
「ゆくぞ、春日井!!!」
「はい、黒佐賀さん」
「ダメじゃ、春日井、やりなおしじゃ。そこは、はい、師匠。おう、私は今日こそ、あなたに勝つ!!! などの台詞がのぞましいのじゃ」
黒佐賀が訳の分からない指示をだしてくる。訳も分からず、仕切り直しが行われもう一度、気弾の力比べが始まる。
「はあぁぁぁぁ」
「はあぁぁぁぁぁぁ」
「おぉぉ」
「おぉぉぉ」
「はぁ」
「はぁぁ」
「流派黒佐賀が奥義、黒篤弾!!!!!!」
黒佐賀から放たれた極大の気弾が私に襲いかかる。私が放った拳大の気弾ではとても迎撃できない。
チュドーン! というテンプレな音と爆発と共に私が遥か後方に吹っ飛んだ。
RDHが空へまった私を華麗に受け止め回復してくれる。流石は私の兄弟子だ。
「阿呆か、お前は! なんでもいいから心に映った必殺技を叫ぶのじゃ、叫びながら気弾を放てばそれが即ち必殺技となる。さらに、必殺技は気合を乗せるためにも五文字以上が望ましい。さあ、もう1度じゃ」
チュドーン!
「ダメじゃ、ダメじゃ。黄金気を修得するのに何を白気で対抗しとるんじゃ」
チュドーン!
「どうした! もっと魂のこもった技名を叫ぶのじゃ!」
チュドーン!
「なんでこの程度のこともできんのじゃ! この馬鹿弟子が!!」
こうして黒佐賀との特訓は夕方まで続いた。
読んで頂きありがとうございました。今日の回はちょっとテンションが上がらずに難産でした。下書きがあったのになかなか書けなかった。明日も9時投稿で行くと思います。
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