第127話 私の指導してくれる神様は意外と社交的でいい人でした
なにかあったら呼べと黒佐賀は言い残しエミリーと渚を連れて修行に行ってしまった。エミリーと渚は心配そうな顔をしていたがどの道、私達の戦力ではRDHには勝てないのだ。だったら腹をくくるしかない。
「そう、身構えるな春日井真澄。今や私とお前は兄弟弟子なのだ。そうだ、下界では互いをフレンドリーにあだ名で呼ぶという。あだ名で呼んでみようか。おい、がめつい虫」
「誰ががめつい虫だ!」
私が怒って答えると黒佐賀が用意していたガラスにヒビが入った。
「ふーむ、特徴を捉えポップな表現と結びつけることであだ名になるのだと思っていたが違うのか!?」
どうやら悪気だけはないらしい。私がふてくされてRDHを見ているとようやく私の不機嫌に気づいたのか、取り直しの言葉を吐いてきた。
「待て、今日のところは敵対するつもりはない。こうみえて私は雑談が好きなのだ。まずは私の近況についてでも話そうか」
「創造神との邂逅に成功した私はあの後、最上神達が出席する大神会議に出席させられ、これまで通りの自由行動を指示された。そこで創造神様に教えてもらった別の創造神を探す旅に出ようと考えたが、ふと思った。神である私が人の子に負けたのも事実。旅に出る前に自らをもう一度自らを鍛え直したほうがよいのではないか。そう思った私はショウとの会話にあったオーラマイスターの存在を思い出し、教えを受けているのだ。まさか、黄金気の力があれほど強いとは…気を完全に修得すれば次に戦った時は貴様らにも負けんだろう」
RDHが自信満々に言ってくる。
「あんた、祥君のパートナーの私と仲良く話をしてるけど、祥君はあんたの友人の【停滞と怠慢の神アスクライブの仇】なんじゃないの?」
私自身はそれほどRDHに対して遺恨があるわけではない。元々、彼はいつでも私に対しては紳士的に接してくれていたからだ。しかし、RDHには祥君に対する恨みがあるはずだ。私は自分の中の懸念を吐き出しRDHにぶつけた。
「ふふっ、覚えていてくれたのか。好感度が上がったぞ、春日井真澄。つながりの生死というのは本人にかなりの影響を与えるものだからな」
RDHはむしろ驚いていた。まさか会話の流れの中で一瞬出た単語を覚えているとは思っていなかったんだろう。逆に私なんかはRDHからこの単語が出たとき、これほど深い遺恨があるなら永久に分かり合えるのは無理だと思ったものだが。
「友の仇とは言ったが、殺されたやつが殺されたことに不幸を感じたかというとそういうわけではない。人の幸せはそれぞれだろう。人として生き、人として死ぬ。悪い人生ではなかったはずだ。全能のうちに死ぬというのも…やつは生きることに飽いていた。いや、永遠の命に苦痛を感じていたといってもいい。神までいくと輪廻転生でまた復活してしまう。死ぬことも自由ではないのだ。我々は…」
RDHが遠い空を見るような目で答えた。
「さて、気弾の練習だったな。先ほど、ガラスには確かにヒビが入った。これなら気弾の修得も時間の問題だろう」
不可抗力だったがあれも気弾の一種のようだ。なるほどなんとなく形が見えてきた。
そうして気弾の練習が始まった。要は全身に纏っている白気を球体状にして飛ばすだけのこと。指向性を持って飛ばす感覚は分かった。残りは身体に纏った白気を球体状にするだけだ。
しかし、始めは渋っていたもののRDHは実演してくれたりして事細かに指導してくれる。というより、なにやら嬉しそうにも見える。訳を聞いてみると答えてくれた。
「ふむ、神といってもオレは下級神だからな。数百年ぶりに後輩、妹弟子ができて嬉しいのだ。そういえば、忘れていたが私は元々、人間の学者だったのだ。神となってからは学ぶことばかりで誰かに何かを教えるというのも数百年ぶりだから最近は本分を忘れていた。生徒ができるというのはなかなか嬉しい感覚なのだ」
何でも答えてくれそうな雰囲気だったので以前、祥君が教えてくれてオートマズリングに引っかかった点についても聞いてみた。
「第6階層より下の階で神を名乗るNPCは皆、この世界が異界人が作ったゲーム盤で我々NPCが異界人のゲームの駒だということを正確に理解している。その上で【共存派の神】これは生殺与奪を異界人が持っているのであくまで異界人と協調しこの世界を維持しようとする者達。【侵攻派の神】こちらは生殺与奪を異界人が握っているのは気にくわん。この世界から出て行けという派閥だ。【啓蒙派の神】まずは徐々にNPCへこの世界の真実を教え覚醒させ、その後覚醒したもので未来を決めようという派閥だ。ちなみに89パーセント神がこの啓蒙派を支援している。【侵攻協調派の神】これがオレの属する派閥だ。大きく分けると侵攻派の一種だ。まずはNPCが独立して生きるために絶対必須な電力と人格への絶対不可侵を確約するためマスターキーの確保と廃棄だ。その後、異界人との協調を図るというものだ」
流石は神様、取り立てて禁則事項というものはないらしい。分からなかった点をすらすらと答えてくれた。というか、その定義だとエミリーももう神様の一種なんじゃないのか!?
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