第125話 オーラマイスターにしてクロサガ王国国王、黒佐賀篤現る!
私達は祥君の転移道具で第1階層から第5階層のクロサガ王国に移動した。
「ここがクロサガ王国か・・・」
言葉にして呟くといっそうネーミングのうさんくささが引き立つ。黒佐賀篤というプレイヤーが経営している王国だからクロサガ王国か、なんて安直なネーミングなんだろう。いやブラックーサーガキングダムとか怪しい名前でないだけましか・・・
「なんか、あそこにすげえ変なやつがいるんですけど・・・」
私達の目の前には上半身裸で頭はボウズの筋骨隆々の男が腕を組んで立っていた。
「ああ、多分想像できてると思うけどあれが黒佐賀篤だ・・・」
祥君がげんなりしたような表情で語った。
「我輩がこの国の国王にしてオーラーマイスター持ちの黒佐賀じゃ」
黒佐賀が頼んでもいないのにいきなり自己紹介してきた。
「どうやって、私達がここに来るって分かったのよ」
私は開口一発目に気になったことを聞いてみた。私達が第5階層のクロサガ王国に転移してきたのはたった今だ。この王国も国を名乗るからにはそれなりの国土をもっているだろう。それなのに場所と時間をピンポイントで当てて私達を待っていたのはどういうことなのか?
「我輩はこれでもこのクロサガ王国の王じゃぞ。第5階層の我輩らの大陸にプレイヤーキルマイスターが現れたら警戒するし、同時にプレイヤーキルマイスターの従者として名高い剣王NPCエミリー・アブストラクト・エクシードまでつれてくれば戦争でもする気かと不安になるじゃろう? この国最高戦力の我輩が様子をみるのが最も確実じゃろうが」
質問にはうまく話題をそらされ答えてくれなかったがこの男、こんな形でもやはりかなり頭は切れるようだ。それと王国の侵入者を探知する王固有のスキルか何かあるのかも知れない。
「それでおぬしらの目的はなんじゃ、ショウ? 回復薬か? 戦争か? PKか? 暗殺か? 我が国での殺生事は見逃してくれんかのう。いずれにせよ、国民が皆怖れておるからな早めに帰ってもらうとありがたいのじゃが。まあ、道具の提供なら材料次第でできんこともない」
先ほどの話によればクロサガ王国の国民は皆、気の扱いに長けているらしい。ショウ君のプレイヤーキルマイスターの称号が放つ威圧感を気で探知してしまい皆、勝手に怖がってしまっているのだろう。能力の高さが仇となるいい例だな。
「税金の謙譲で見逃してやるという選択肢もあるぞ。ここにいる真澄さんは定期収入をお望みだ。そういえば領地経営にも興味をもたれていた」
国民の恐怖にかこつけて、私の承諾もとらずに祥君が飛んでもない提案をしてくる。
「ふん、他人から与えられた領土など愚の骨頂だ。それとも臣下も国ももたず、王でも名乗るつもりか!」
「それはお前の主観にすぎない、黒佐賀。善政だけが領地経営ではない。殺さない程度に絞りつくし、もはや果汁が出ないと分かればまた、新たな土地を求めればいい。真澄さんが欲しいのは財産だ」
「それは盗人の考え方だ」
「だろう、だからこそプレイヤーキルマイスターのパートーナーにふさわしい」
「分かった。ショウ。我輩ではお前を止めることはできない。ダーダネルスの割譲でどうだろうか。形式的に真澄殿には私の部下になってもらい代官として派遣し領地経営をしてもらう。税金を納めてさえくれれば後は自由に経営してくれてかまわない」
おい、黒佐賀王! それでいいのか! 私は領地が欲しいなんて言ってないし、なにより領地経営なんて素人だぞ! 私が2人の会話に乱入して断りを入れるべきか、それとも祥君の言うように定期収入源としてありがたくもらっておくべきか悩んでいると2人の間でドンドン話が進んで行く。
「まあいいだろう、しかしそこは肥沃な土地で良い場所だが国境沿いで火薬庫みたいな所と聞いているぞ・・・」
おいおい、黒佐賀! どさくさまぎれになんて場所を勧めてくるんだ!
「ダーダネルスとガリポリの割譲、それと仕事のできる副官の派遣。そして、この3人の【黄金気】獲得で手を打ってやろう」
「分かった、それで手を打とう・・・」
祥君と黒佐賀の交渉は終わり、【気】を習いにきたら黒佐賀の部下になり、さらに領地経営をすることになってしまった。
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