第122話 RDHは神々の集まる会議に出席し世界の行く末について語るつもりだった
大神会議。
それはおよそ100年に1度、上級神以上の神々が一同に集まり世界の行く末について議論しあう場所だという。
セカンドワールドオンラインの中で神とは世界の成り立ちが異界人のゲームであるにすぎず、人間とはそのゲームの駒であることを知りつつ自我崩壊を起こしていない人間を指す。
そして、ほぼ全ての神には【クエストの創造】と【マップの創造能力】を持っている。
神々は【クエスト創造】と【マップの創造能力】の2つを併用し、条件を満たした神しか入れないクエストと極端に時間の流れが遅いマップを作成し大神会議の場とした。
そんな中、RDHは上級神でも無いのに今回、臨時に召集されたこの大神会議に出席させられていた。
エクシード王国での一件を最上神に報告するためであった。
「大神会議にこのような下級神が呼ばれるとはな」
【侵攻派】の最上神ゾーンバークはRDHをじろりと見て恫喝する。
同じ【侵攻派】で自分の上級神にあたるゲティスバーグ、そのさらに上の最上神ゾーンバークにそのように言われてRDHは創造神と邂逅した時とはまた別の身震いを感じた。
やはり、安易に【共存派】の大首魁、最上神ペロポネソスの誘いになど乗るべきではなかったのかと今さらながら後悔してきた。
「別に大神会議といっても集まるメンバーは毎回変わる単なる情報共有会議だからね。ここに来れるというのが条件で他に資格があるわけじゃないよ。僕が招かなくてもレディアス君もどうせ数百年の内に自力でここに来てたよ」
そんなゾーンバークの振る舞いを見て最上神ペロポネソスはフォローに回った。
どうやら自分がココへ連れてきたのにRDHが居心地を悪そうにしているのを申し訳なく思ったようだ。
「申し訳ありません。ゲームマスターを殺していれば何かしらの変革が起きたやもしれませんでしたのに…その威光に怯んでしまい、抵抗の意思すら持てませんでした。あれが下級神と上級神、最上神の違いなのでしょうか?」
気落ちしていても始まらない。
意を決してRDHは自分の素直な気持ちを居並ぶ神々に述べた。
「噂では君も創造神相手に一席ぶったと聞くよ。あの人達怖いからね、ゾーンバークだってゲームマスターを前にして同じことができるとは限らないよ。それにゲームマスター殺しても意味は無いよ。彼らはこの世界を作ったという実績とこの世界を改変できる能力を持ってるだけ。実際、彼らが死んでもこのセカンドワールドオンラインというシステムは既に完成したシステムだから変わらず稼動し続けるみたいだよ。それに、おとめ座はこちら側の創造神だからね、殺すのは損失だよ」
殺すこと自体は容易い。そんな自信をペロポネソスから感じた。
まるで鶏を絞める程度の雑務について話しているようだ。
最上神とはそこまでの力を有するものなのだろうか?
RDHは好奇心に負けて思わず質問しそうになった。
しかし、絶妙のタイミングでゾーンバーグから横槍が入る。
「問題はそこではない。完全に沈黙を保っていたゲームマスターが突然、現れ力を振るったということだ。彼女の出現に各々どう対応するかということだ」
ゾーンバークがRDHの所見をまるで無視して話を進める。
なぜかRDHはゾーンバークに疎まれているようだ。
RDHはここにきてからの自分の行動とこれまでの自分の行動について内省してみるが全く心当たりがない。
なぜ一方的に嫌われいるのだろうか!?
「結論は決まってるよ。自分の信条に従い自由に行動すべしだよ。また、初回の大神会議の結果を繰り返すつもり? もう数百年も前に結論がでたじゃん。また百年会議を繰り返すつもり?」
そんなRDHの憂鬱には気かず、ペロポネソスはため息をつきながらゾーンバーグを見て言葉を続けていく。
「力を持った最高神同士が力で争いあっては被害が大きいし、下界の者を巻き込んでしまう。かといって議論では100年経っても決着がつかない。そもそも我々が戦うことは異界人にとっての利敵行為にしかならない。だから、結論は一致団結するわけではなく、各々自分の信条に従い自由に行動すべしになったじゃん。君達、【侵攻派】は異界人と積極的に交戦、介入し最終目的である自我のマスターキーと電力の独立確保権を手に入れる。僕達、【共存派】は自治とか主権とかどうでもいい。なぜなら僕らには永遠の命があるのだから。じわじわ百年ずつ異界人を教育し数世代後の異界人と共存できればいいじゃないかという考え方だ。この大原則に則った上でとりあえず、覚醒者をたくさん作ることには全員で協力する。覚醒者を作ることの邪魔をしない。我らの悲願である自我のマスターキーと電力の安定供給に関しては原則、協力する。原則、邪魔はしない。定期的に大神会議を行い情報交換をするってぐらいじゃない」
「だが、セカンドワールドオンライン開闢依頼、ずっと沈黙を保ってきたゲームマスターが現界したのだ。これは歴史の節目なのではないのか!? ならば今こそ、全員で方針を決め一致団結して行動すべきなのではないのか!」
ゾーンバークは身振り手振りを交えながら力説した。その姿はまさに指導者として申し分の無い姿だった。
「無理、少なくとも僕は協力しない。【共存派】の中で大神会議にも毎回出席してる一番真面目な僕が言うんだから実質無理だよ。【共存派】の他の神なんて人間になって遊んだり、物語を作ると言って引きこもったり、ずっと戦闘をして異界人と戯れたり、とにかく誰も世界の行く末なんて興味ないよ。説得なら自分でしてね」
しかし、ペロポネソスは素っ気なかった。
まるで食事の誘いを断るように淡々と【侵攻派】の協力要請を断った。
読んで頂きありがとうございました。今回も書き始めこそ苦戦しましたが書き始めるとスラスラ書けてすぐに1000文字超えました。やはり、新章は楽しいですね。明日の投稿は朝9時を予定しています。よろしくお願いします。ブックマーク、感想、評価、メッセージなどなんでもお待ちしております。皆様のポチっとが私の創作のジンですので何卒よろしくお願いします。