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第12話 女勇者が動く訳

 翌日から今日まで私は一人でログインしていた。

 昨日のようなことがあったのだ、誰かを誘うような気分ではなかったのだ。

 時折、報音寺君とは一緒にレベル上げをしてたが彼以外とは誰と一緒にパーティーを組んでも合わなかったのだ…

 事前に調べていた通り、このゲームは誰でも勇者になれるという昔ながらのRPGを下地に作成されている。

 高位のレベルになれば別だが低位のうちはシステムアシストのおかげで楽にモンスターを倒せた。

 レベルも鈴なりに上がり今ではレベル4だ。

 最初の予定では一人でレベル上げを行い、その後、ゲームシステムを熟知し、限界を感じたらパーティを募集する。

 またはパーティーかギルドに入るつもりだったが、なんだがずいぶん妙な方向を向いてしまった。

 私は今までこのゲームをゲームとしてか捕らえてなかった気がする。

 清水谷君や天都笠さん、襲撃してきた青青森や赤秋田といったエキセントリックなプレイヤーを見てしまうとなんだか他の人間のように浮ついた気分でプレイするのが馬鹿らしくなったのだ。

 いろんな人に一緒にプレイしようと誘われたが彼らとはゲームに対する熱量が違う。そうすると自然、一人(ソロ)プレイが増えていった…

 悶々とした気分を持ちながらも今日も一人でログインし、情報管理局の前でどのクエストをするか悩んでいるといつものように女性の声が聞こえてきた。


 「大破局は必ず起こる! 共にこの街を大破局から守らないか!! パーティーを募集しているぞ~」


 天都笠さんだ。

 初日から今日までチョイチョイ視界の端に見えてはいたのだが…

 天都笠さんがパーティー募集の勧誘をしていた。

 しかし、4日前から1人たりもとメンバーが増えていないのだ…

 辺り一面にパーティー募集のポスターが貼ってあるのが逆に痛々しい。

 自らビラをまいてパーティー募集の勧誘をしているのだが誰も相手にしない。

 あ~もう!!!

 天都笠さんとは第3階層のあの荒野から送ってもらった時に喋っただけで、正直、面識もないと言っても大丈夫な程の間柄だがさすがに4日間全て無視、こちらから一声もかけないというのもバツが悪い。


 「あの、私で良ければ入りましょうか?」


 このぐらいの勧誘で何をココまで手こずっているんだろうか。

 不思議に思いつつ天都笠さんからもらったチラシを手にして、参加の意思表示をする。


 「おおっ、ありがたい。それでお前、レベルはどのくらいある?」


 人懐っこい笑みで天都笠さんは聞いてくる。


 「えっと先日、ログインしたばかりだからまだレベル4だけど」


 流石に、毎日ログインしているだけあってレベルアップが早い。

 天都笠さんには全く叶わないが同級生の中ではトップクラスだろう。

 自信を持って答えると予想外の答えが返ってきた。

 

 「話にならん、雑用でもレベル100は必要だ。お前みたいな素人に用などない」


 ぐっ、レベル100って、まるきりプロプレイヤーじゃないか。

 それだけのレベルを持ったプレイヤーがこんな地方都市にいるのか?

 それに今の言い方。 

 断るにしてももう少し言い方ってもんがあるだろうに。


 「あなたね~そんなだから清水谷君のスカウトにも失敗するのよ」


 一応、助けてもらった恩もある。

 できる限り穏便に、嫌味で返す。

 しかし、今度は天都笠さんの方が話に食いついてきた。

 それも随分と驚いた様子でだ。


 「お前、ショウを知っているのか?」


 「この間、あんたが清水谷君をスカウトしてた時、同席してたでしょ。さらにメッセンジャーガールの真似事までさせて…ほんとにお目当て以外は眼中にないのね」


 「ああ、思い出した。Sランクカードを見せびらかしてPKプレイヤーキルされそうになったあのまぬけか」


 つくづく頭の悪い人間を見るように天都笠さんは言ってきた。

 

 「そうよ、その節は助けてくれてどうもありがとうございました」


 思いきり皮肉まじりに答えたが、天都笠さんはひねり無く受け取ったようだ。


 「礼には及ばんよ、無知な素人を助けるのも上級者の務めだからな」


 思わず、ため息が出ていた。もうダメだ。この人これが地なんだろう。


 「それで、この間はスルーしたけどあんた、この間からなにやってんの? そんなに今度、起きる大破局クエストってのは大きいの?」


 「大きいなどというものではない。福天市の全人間が死亡し構造物が全て破壊されるぐらいの規模だ。どっかの馬鹿が非正規ルートを使って第1第階層から6階層に次元の穴を作って進入したのだ。その穴は当然閉じられていないわけだからその穴から第6階層のモンスターがうじゃうじゃ出てくるわけだ」


 「よく、理由が分からないけどそれほど高レベルがプレイヤーが必要ならもっと深い深度で探すとか、こんな田舎街じゃなくて都会で探すとか高い金額の報奨金でクエストを募るとかいろいろ方法があるんじゃないの?」


 「ふん、素人が!!! これほどの規模の大破局を食い止めるためにはレベル200以上のプレイヤーが必要となってくる。レベル200を超えるプレイヤーが日本に何人いると思ってるんだ。さらにこのクエストは死亡の可能性が極めて高い。レベル200を超えるとレベルを1つあげるのに1年はかかる。リスクが高すぎる! そのリスクに見合うだけの金となると正規報酬で一体いくらになることか、1億シェルでも集まらんわ! 階層、場所を問わずクエスト募集すればいくらか応募はあるだろうが私が用意できる報酬が少なすぎるから現実的にはこのパーティー募集は不可能なんだ」


「なるほど、じゃあ、ここ数日ずっとやってるパーティ募集には一体どんな意味があるの?」


「これを見たこの街出身のプレイヤーが高位プレイヤーに宣伝して応募してきてくれんかな~って意味と4月29日はログインせずとっとと逃げろってことを告知してるにすぎん。まあ、どうせ行政から正式な告知があるだろうがな」


「けどさ、清水谷君も言ってたけど、ここはただの情報体(アバターなんだよ。現実の街じゃないんだよ。壊れたからと言ってまた、オートで即、修復されるんだよ、そこまで頑張る意味ってあるの?」


 「表面上はな…但し、NPCはこれまでの記憶が全て消去される。彼らが産まれてきて今日まで生きてきた記憶が全て消去される。それどころか存在そのものが消去される。セカンドアースオンライン開始から既に数世代経ってる。それが完全に最初の世代まで巻き戻ってしまう。デフォルトに戻ってしまうんだ。ゲーム特有MAPもリセットされてしまう。例えば、この始まりの広場、あの落書き、あれは限定大型モンスタービックリケラトプスを倒した記念に皆で書いたものだ。あっちあの花壇は白香川さんが作ったものだ。現実世界にはないものは全て破壊されてしまうんだ」


 天都笠さんは胸に手を置き、切実な顔をして訴えた。


 「この街は私にとって出発点、起点なんだ。帰還点として何万時間過ごしたんだ、もう目をつぶっても目的地にたどりつけるほどだ、この景色、この風景に絶対的な愛着があるんだ!! だから私はどんな手段を使ってもこの街を救いたいんだ!!!」


今日は電撃文庫の発売日〜さあ、上条さんの活躍を読むぞ〜ってな日なのに読んで下さりありがとうございました。感想などあればお待ちしております。

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