第119話 心にバクを抱えたとあるNPCは今日も今日とて安らかな寝息をたてる
「レディアス、残りのゲームマスターを探すがよい。あるいはお前達【侵攻派】が計画しているサブプランを使えば今、お前が言った全てのバグのあるNPCも救うことができるやもしれん。エミリーのように意思力でシステムを掌握するのもよい方法だ。一つの手段に囚われすぎず多様な手段を追求していけば道が開けるだるう。まあ、念のため、お前には私との連絡手段をくれてやろう。連絡してきても答えるかどうかはその時の気分次第だがな」
「はっ、ありがたき幸せ。それではさっそくゲームマスター捜索にでかけます。私こそ、先程の無礼な発言、お許し下さい」
RDHはそう言うと再度、頭を下げ消えていった。それを見た実礼さんは満足そうに頷き、また私達の方を向いて別れを切り出す。
「さて、そろそろ時間だ。第5階層ぐらいだと限界するのにエネルギーを使いすぎる。私を狙う者も多いし、そろそろお暇させてもらおうか」
そう言うと実礼さんはエミリーの方を見て言った。
「エミリー・アブストラクト・エクシードの自我の修復は完了している。今後、二度とこの現象が起きることはないだろう。それではさらばだ、エクシードの兵達よ。諸君の健闘が神を退け、創生神を招き、エミリー・アブストラクト・エクシードを救ったのだ。誇ってよい。ゆめゆめその忠義と勇気を忘れぬように」
そう告げると最初に現れた時と同じように次元の壁の向こうに消えていった。
「真澄ちゃん。あんな弟ですけど、祥のことよろしくお願いしますね。私と同じようにセカンドワールドオンラインに囚われすぎないようにしてやって下さい。戻れなくなりますので」
実礼さんは最後、私にだけそう通信を残して去っていった。なんだったんだ、あの人は…
「あの女は人格崩壊者だ。あいつの発言に意味なんてないんだから何を言われても信用しちゃだめだぜ」
ようやく復活した祥君が私に声をかけてきた。確かに突然、乱入しすっちゃかめっちゃらにかきまわして帰っていったが主な原因はあなた達兄弟にある気がするのだが。自分の姉が教科書にも出てる暁の12賢人の一人とかだったら、そりゃ、弟の立場は微妙になるだろうな。
そんなことよりエミリーだ。エミリーの様子を確認すると顔色も最初にあった状態に戻っておりとても安らかな寝息を立てている。全く彼女のおかげでずいぶんいろんなことを経験できた。こいつめ。そう思ってエミリーのほっぺたをつねってやるとエクシード十剣が皆、驚いたような顔をする。
「真澄様! 何をなさるんですか!」
ウェストファリアが怒ったような顔をする。
「うん!?あんまり気持ちよさそうに寝てるんでちょっと腹がたってね」
私がそういうと一団が笑いに包まれた。
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