第108話 私を助けてくれるエクシード兵の想いには答えられない
彼らの考えは正直ありがたい。そして確かにチャンスである。エクシード兵が足止めし、私達がこの場から立ち去る。彼らをゲームのキャラクターと捉え、エミリーをレベル上げの道具として考えればそれが一番だ。しかし、そんな考え方はとうの昔に捨て去っている。私は即座にウェストファリアに返事をした。
「断る! 私が救いたいのはエミリーだ。エクシード王国のエミリーだ。エミリーはエクシード王国の一部だ。たとえエミリーが助かってもエクシード兵が死にまくってたらエミリーが悲しむだろう。ウェストファリア、伝令だ。この無謀な特攻をいますぐ中止しろ。この戦場は私達のものだ」
そう告げると私のパーティーメンバーを再度、見返した。 皆、気持ちは同じようだ。
「祥君、渚、報音寺君。そろそろ準備OKだよね?」
「おかげでこっちも準備・回復・分析ができたよ」
祥君が不敵に笑う。
「あ~あ~せっかく私がエクシード兵を連れてきたのに無駄にしちゃって」
渚が思ってもいない軽口を叩く。
「というか対神戦闘を4人でやるのは無謀なんだけど・・・」
報音寺君が今さらながらの弱気を吐く。全てが順調だ。問題ない。
「エミリーいつまで呆けてるの? さっさと目覚めないと置いてちゃうよ」
最後にモノ言わぬエミリーに声をかけ進む。また、わずかに反応してくれたような気がするが気のせいだろうか。
ウェストファリアの伝令が伝わったのかエクシード兵が囲みを解き、エミリーの周囲に集まってきた。エミリーの守護は彼らに任せればいい。
「じゃあ、いこうか」
私が声をかけると弾かれたように散開した。
「まずはあの擬似時間転移を止めないと勝負にならないね」
報音寺君はカードをかざし叫んだ。
「HPを50パーセント捧げ【蒼き次元城の一室】を発動。このカードが発動中、時間転移を行うと蒼き次元城に迷いこむことになる」
蒼き次元城というのがどんな場所なのかも知らないがRDHの表情が変わったのが仮面越しでもはっきり分かった。
「ぐっ、そんな転移カードで私の動きを止めるとは。しかし、正気か!? 誰かが時間系の魔法、スキル、アイテムなどを使えばココにいる者全員が次元迷宮に迷い込むことになるんだぞ。神ですら脱出が不可能と言われている大迷宮だぞ」
「まあ、このメンバーで時間系スキル使えるのはあなただけだし、オレは次元城から生還したことがあるしね」
「そこまでの実力者を連れてきたというのか・・・」
RDHが讃えるような声で呟いた。
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