第104話 私を助けてくれる人のエクシード兵への説得
「生きているか、グロス?」
戦いの流れの中で思わず超高威力の攻撃を放ってしまったが殺してしまっては意味が無いのだ。制御には成功したが精神にかかる負担も極大だ。私は虚脱感が残る身体を引きずりながらグロスの元に行き、彼の状態を確認した。
「はい、大丈夫です。天都笠殿。四肢は動きませんが命に別状はありません。数日もすればまた剣を振れるようになるでしょう」
あれだけの攻撃を受けて数日で回復とはどういうデタラメな身体をしているのやら。私は半ば呆れながら彼の元にエリクサーをおいた。
「これは?」
「HP完全回復アイテムだ。お前に死なれるとエミリーに恨まれるからな」
「なぜ、今これを私に? これを使い再度、私があなた達に襲いかかるとは思わないのですか?」
「それだったらリトライを選択するだろう。逆にこちらからも聞かせてもらうがどうしてリトライを選択しなかった?」
グロスは難しい顔をしながら一つ一つ噛み締めるように言った。
「迷いがあったからだと思います。人は何度も甦りのような苦しい経験に耐えることはできません。しかし、あなたはそれを為した。戦いの最中、なぜそれができるのかずっと考えていました。そこを崩さぬ限りあなたは文字通り何度でも私に挑んでくる。しかし、崩せなかった。あなたが引かない理由はエミリー姫のためだと言う。だとすれば、私のやっていることはなんなのか。結論が出ず結局、戦いを続けることしかできなかった・・・」
「結論が出ないと言うが答えが出たから、お前はリトライを選択したのではないのか? それに私と戦う前に後は剣にて語ると言ったがそんなものは自分の頭で思考することを諦めた人間の言葉ではないのか」
私は冷たく突き放すようにグロスに言った。
「敗者に厳しい言葉を投げかけますな・・・」
「剣王の力というものにはそれだけ責任が伴う。馬鹿な命令にほいほい従っていくようだとその国を滅びに導くだろう。今、お前が為すべきことはなんなのか考えてみろ。本当に愚かなのはそうやって自分の間違えに気づきながらまだ、間違えた道を進むことだと思うがな。『過ちて改めざる。これを過ちと呼ぶ』なんて古い言葉お前も知っているだろう。剣王の持つ勇気とは間違えた選択を断つために使うべきだろう」
「なるほど、ようやく理解できました。そのためのエリクサーというわけですな」
グロスはエリクサーに手を伸ばし一口で飲み干す。そして、未だライトニング・スタン・ショットの影響で動けないエクシード兵に激をとばした。
「聞け! エクシードの兵達よ。私はたった今より天都笠殿の陣営に加わる。敵はあの呪い士だ。天都笠殿が曇っていた私の目を晴らしてくれた。真に姫様のために戦っているものがどちらなのか私達の戦いを見ていた者はもう分かるはずだ。さあ、私と共に戦う者は名乗り出よ。私の敵となる者は前に出よ。どうすればよいか分からぬ者は道を空けよ」
そうグロスが一喝すると283名のエクシード兵はグロスに呼応した。皆、グロスと私との戦いを見てグロスと同じ問いを抱いていたのだ。
こうしてエクシード兵283人と剣王が仲間になった。
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