第102話 私を助けてくれる人のさらなる賭け
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「翠嵐劫火旋風突!!!」
「応天威の剣!」
炎と嵐を身に纏いまるで大砲の弾ように標的へとまっすぐ突き進む私の会心の一撃は剣王の見事なカウンターに返され、私はまた腹部に大ダメージを受け敗北した。しかし、【哀れなる決闘者の牢獄】効果が発揮され、迷わずリトライを選択し私とグロスは完全回復状態に戻る。
一度目の敗北から何度戦いそして何度、敗れただろうか。やはりこの剣王グロス・アシミレイトという男は私より一段階上の強さを持っている。相手は剣だけで攻撃し魔法は使えないのに一切、勝てない。
だが光明はある。今、突き系の二重属性付与も使えた。これで二重付与はほぼマスターしたこれ三重付与もできるかもしれない。
自分で気持ちを持ち直したことで私はますます意気軒昂になり、グロスを正面から見つめる。
私は疲労困憊であるが士気が高いのに対しグロスは表情からも疲れが見て取れる。当然だ。私は追う立場で彼は追われる立場なのだ。私にはゴールがあるが彼には永久に終わりがないのだ。
戦闘のスタイルも変わってきた。
最初のうちは自分は軍人だから尋問の手段は山ほど持っている。どんな屈強な男でも口を割らせてきた。我慢するだけ無駄だからさっさとリザインを選択しろなどと時折、口撃を混ぜてきたが今では互いに無言で殺り合っている。
所詮、この【哀れなる決闘者の牢獄】は我慢比べカードである。お互いに精神力こそが勝敗を分ける命綱だと分かっているのだ。そして精神力は言葉と密接な関係を持っている。互いに終わりが近いと感じているのかも知れない。
だが顔色を見るとまだまだこちらの方が有利。ならば余裕があるうちに仕掛けるのみ。
私がグロスに向かって駆けるとグロスから牽制技が入ってくる。
「三段斬り改」
疲弊して技の選択の幅が狭まっている。予想通りだ。
「三段斬り改」
私もこの戦闘中に覚えた三段斬り改で応戦する。
「馬鹿な、私の技を!」
「私だって三段斬りを覚えてるんだ。あれだけ何度もこの身で学べば誰でも覚えるわ!」
さらに言葉による牽制を放つ。これで判断が一泊とはいえ遅れるだろう。今こそ、最大最強の技で勝負をする時。
私は二重付与を始めて成功させたときの心境を思い出す。制御するのは炎と風、そして雷だ。反発減衰を避ける手持ちの組み合わせはこれしかない。雷と炎を纏い風の如く攻撃する。自身のイメージは完成した。あとは実践のみ。
「雷滅翠嵐劫火炎熱斬」
そう、叫んだ私は巨大な炎の竜巻の中で電撃を纏って立っていた。しかし、これは!? 二重付与とはまるで違う。制御が維持できない。そう思った瞬間、巨大な炎の竜巻が私自身を襲う。数秒のタイムラグの後、さらに電撃が私の身体を焼いていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
完全に失敗した。しかも戦闘の真っ最中に。剣王の間合いの中で。炎の竜巻と稲妻は消失したがダメージが甚大だ。一度、舌を噛んでリセットするか!? 私がそう決心したとき、一条の光が私を包んだ。
「エリクサーショット×1」
今まで完全に傍観者とかしていた報音寺からの助け舟だった。
読んで頂きありがとうございました。難産でした。書き始めの時間が遅くて低いテンションの状態から書くのはキツイですね。明日の投稿は11時を予定しています。よろしくお願いします。ブックマーク、感想、評価、メッセージなんでもお待ちしております。よろしければお気軽にどうぞ。