第101話 私を助けてくれる人が私に与えた役割の邪魔をした
【冥桜朧十字蓮撃】冥力をぶち込んだ状態で連続攻撃を行い、命中箇所から4方向、8方向、16方向、32方向、64方向、128方向、256方向・・・と体内から冥力による暴発を招く心桜流暗殺術の奥義の一つ。
通常、【冥力】とは耐性を持っていないものには存在そのものが毒。触れるだけで相手にダメージを与えることができ、どちらかというと魔法に近い力なので加工も楽。まさに攻撃職には夢の能力なのだが今回の相手は神。おそらく状態異常耐性も持っているだろうし、これで死んでくれるほど楽な相手ではないだろう。
それでも流石は神、4発しか当たらなかったか。冥竜王の怪力と【冥力】、オレの【黒気】、ブラッディーエクスカリバーの攻撃力、これだけそろって全弾命中なら神竜とかでも殺せる自信があったのだが。
やはりと言うべきか、当然と言うべきかRDHは何事もなかったように立ち上がってきた。
見ると命中箇所から白い光が出ている。超自動回復か。既に傷口が塞がっている。
全く規格外の相手である。理想は傷口が塞がる前に超威力の一撃を当て一撃で絶命させることだがこの相手では不可能だろう。それでも肉が裂け、それを修復したのだ。体力消費ぐらいはあるはずだ。やはり、これだけレベルが近い相手だと消耗戦になる。2、3日の連続戦闘は覚悟しなければならないか。学校どうしようかな。
そんなことを考えていると思わぬ方向から飛び蹴りが入った。真澄さんだ。
「私とエミリーを殺す気か!!!」
うん???
そっ、そうか!
【冥力】の室内散布か! 頭に血が昇ってRDHの攻略にのめりこんでいたから、すっかり真澄さんの存在を忘れていた。真澄さんとエミリーも【冥力】の耐性がないんだった。というか、それだと真澄さん邪魔だな。どっか飛ばそうかな。けど、それだと後で怒られるだろうし。
そう思って真澄さんの方を見るとちゃっかり【白気】を身体に纏わせ見事に防御しているが。うまくなったな【白気】の使い方。これなら中・低位の状態異常はモノともしないだろう。
「ごめん、ごめん。戦闘に集中しすぎてて真澄さんが見えていなかった。えっと対抗策どうしようかな。冥竜王の眷属になる? 冥力をもらえるよ」
「いまさら要らんわ!!! こんな良いものがあるなら【白気】の修得の時に出しなさいよ」
「いや~眷属ってことは部下だし、嫌かな~とオレなりに気を使ったつもりだったんだが・・・それに同じパーティーに2人も【冥力使い】がいるのはパーティー構成としては良くないっていうか・・・」
「部下だけが唯一、上司を殺す存在だから大丈夫よ。そんなことより、いきなり冥竜王を呼び出すなんてどういうつもりだ! あれじゃあ、エミリーのトラウマを刺激するだけだろうが!!!」
「いや、冥竜王を見て発奮するかなと思って」
「しかも合体するなんてどういうつもりだ。これじゃあ、エミリーの敵が祥君になっちゃうじゃないか」
「まあ、不可抗力だよ。それでエミリーが復活するならお安い御用だけど、やっぱエミリー治らないね」
オレ達が2人して気落ちしていると、回復が終わったのかRDHから声がかかる。
「話し合いは終わったか?」
「先程のエミリーとの遣り取り、戦闘をしながら聞かせてもらったが見事な弁舌だ、春日井真澄。だが、それでもエミリーは目覚めなかった。もう打つ手は無いはずだ。諦めろ。」
「絶対に嫌。私がエミリーを見捨てることは永久にないわ」
真澄(レベル4)さんが神を相手に啖呵をきった。
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