表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二分の一の精霊と才  作者: 舞蹴冗談
7/7

方法

 ―—数十分後、エストたちの負けという形で模擬戦は終了した。

 学園内での模擬戦は今年の本大会と同じルールで行う。そのルールとは《全員の先頭不能又はリーダー紋章の強奪》。だが予選のルールは当日前夜に発表される。ゆえに予選の対処はしようがない。

「もうっ! どうして私が負けなければならないんですの!」

「知らないよ!」

「もともと言えばエストさん、貴女が精霊術を使わないから悪いんですのよ!」

「キュエラだって一人で先走っちゃったじゃん!」

 模擬戦終わり早々、エスト、キュエラが互いに言い合っている。

「それは――」

「落ち着けよお前ら!」

 言ってカナタが間に割って入った。すると、

「…………ふんっ! 戻りますわ」

 と言ってきびすを返し、遠ざかっていった。

 首をすくめたカナタはぼやきながら振り返ると、無表情なウェルカの瞳と視線が合った。そしてそのまま近づいてきて、少し手前で止まった。

「……なんだよ……」

「おそらく今回の敗因に貴方が大きくかかわっている。覚えておいて。……それからエスト、ちょっと」

 エストに向き直って歩み寄り、彼女の耳元で何かを囁き始めた。

「……うん。うん……え! そ、それは~……しょうがないよね」

「じゃ」

 囁き終わると、ウェルカもキュエラ同様、足早に場を後にした。


「ちょっといいかタカツキカナタ」


「……はい!」

 不意に名前を呼ばれた。左に目を向けてみると、こっちに来いと言わんばかりの顔でこちらを見ている。何も言われずともカナタはマリアルの前まで移動した。

「学園長が呼んでいる。ついてこい」

「え……あ」

 曖昧な返事をすると、歩き出したマリアルの後に続いた。後ろからはエストがついて来ようとしていたが、

「悪いがお前は来るな。戻っていろ」

 と、気づいたマリアルが落ち着いた声で止めた。そして再び歩き出した。



「――で、今回の要件はな、お主が仮とは言え契約をしてしまったということなじゃが」

 椅子に腰掛け、窓の外を眺めたままのジーウィルが呟いた。

「してしまったのはもうどうしようもないことじゃが、それ以上はなるべく控えてほしいのじゃ」

「と言うと?」

 カナタが返した。

「まず、自分が何者かわかっているか?」

「いや……」

「お主は人であると同時に人ではない何か(、、、、、、、)、つまり精霊なんじゃ。加えて、今では存在が確認できていない《闇》属性の。そんなお主が本契約したらどうなるか、わしにも想像できん」

 くるりと回り、ジーウィルがこちらを向いた。とても真剣そうな表情で見つめてきている。

「よくわからないけど……つまり、俺がその本契約ってのをしなきゃいいんだな?」

「そうじゃ。それからもう一つ、お主にとって有益な情報がある。……二ホンとやらに帰れる、というような噂が入ったきてな」

「本当かそれは!」

 カナタは机に手をつき、ジーウィルに近づくように前傾姿勢になった。

「うむ。以前にも何人か来たことがあるらしくてな。噂はそのときのじゃが、その方法は……」


            ◇   ◆   ◇   ◆


 戻ると、《人型精霊を召喚した》ということは既に学園の隅々まで広がっていたようで、廊下を歩いていると、羨むような視線が向けられる。そういう目線がある一方、敵意のこもった視線などもまた向けられている。

 だがそんなのを気にせず歩いていると、すぐ隣を歩くウェルカが話しかけてきた。

「ね、本契約はしないの?」

「ほほ本契約!? いやいやいや! だってあの人とそんな事できるわけ……」

「確かに。相手は何から何まで私たちと同じよう。だけど、今日の模擬戦を見てわかるように、仮契約じゃ本当の力は引き出せない。今後いずれ……少なくとも二か月後にはしていないと。貴女はせっかくのチャンスをまた無駄にするの?」

 視線をこちらに向けることさえせず、無表情な言葉だけを発した。

 まるで心配していないような声だったけれど、エストはその言葉から気持ちを悟った。

 聞こえないように「ごめん」と呟いた後、後に続いてゆっくりと教室に入った。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ