プロローグ
初めて書く小説なので続くかどうかわからないですし、文章構成も下手ですが、読んでいただけたら幸いです。
緑が生い茂る林の中。誰もいない場所でエストは微かな声で詠唱を始めた。伸ばした両手の先には、小さな魔方陣が出現し、くるくる回りだした。
詠唱が完了――と同時に、目標としていた木の陰から少年が出てきた。
――危ない!
慌てて攻撃を中断しようとしたが、時既に遅し。魔方陣から放たれた水属性攻撃が、正面に現れた少年を襲った。
幸い、一番苦手とする水属性だったので相手に大したダメージもなく、全身が濡れる程度で済んだ。だが問題は別だ。
いきなりのことに驚いたのだろう、少年は目をぱちくりさせている。エストもまた口をぱくぱくさせている。そして。
ごめんなさい。
と言うこともなく、一目散に木々の間を隠れるように逃げ去ってしまった。
一方、場に残された少年は頭を整理するために記憶の確認。
――誰だあれ。知らない人のはず……てかここどこなんだ?
周囲を見渡し、先ほどまでいた世界とは大きく異なっていることに気が付いた。東京の街並みは消え去り、林の中。木々の間から見える景色もまた違っていた。一面に緑が広がっている。もちろんビルなんてなく、あるのは高い塀に囲まれた大きな建物一つだけ。さっきまでいたあいつも――
「おいお前、ここで何している」
いきなり後ろから声が聞こえた。わずかにドキッとし振り返ると、そこには一人の女性がいた。怪しいものを見るような眼でこちらを見つめている。
「あの……」
ここはどこですか、と訊ねようとしたとき
「お前名前は?」
「え、あ……長田彼方です」
こちらを見つめる鋭い眼と視線を合わせないようにして答えた。
「ナガタカナタ……。変わった名前だな」
「ええっと」
「まぁいい、ここは学園の敷地内だ。来い」
女性によってカナタはぐっと腕を掴まれ、向こうの大きな建物の方へ引っ張られっていく。
「ちょっ、待っ……」
どうやら不審者と勘違いされてしまったようだ。誤解を解くために必死に抗うが、細身の身体に合わないものすごい力で引っ張られているため、止まれない。
女性はどんどん進み、ついに林を抜けた。