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莫逆家族の巻

籠絡王の台頭より

ルキウス13歳の誕生日。クウィントス家のバースデーパーティの模様です。

パーティの話っていうかツンデレシスコンの話ですw


 今日は3月25日。

 街に出かけて沢山買い物をして、朝から下拵えをしてせっせとごちそうを作り、デザートも用意する。


 アンティパストはインサラータルッサとカポナータを添えた鰹のカルパッチョ。春野菜の炭火焼きにエビのカダイフ巻きフリット。ウサギ肉のラグーソースパスタ。

 メインディッシュはイベリコ豚のタリアータで、ドルチェはレアチーズケーキとオペラとパンナコッタとアフォガードの盛り合わせ。


 昔はお金がなくて豪勢な料理なんか作れなかったが、今はお金に糸目をつけることなく料理の腕を振るえるので、近頃セルヴィは料理にハマり中だ。

 ソースも作ったし、パンも2次発酵を待っているところ。後は出す前に焼いたりするだけだ。大概下拵えは終わった。一通り確認をして、重大な忘れ物に気付く。


「しまったぁぁぁ! パスタ買ってくんの忘れたぁぁぁぁ!」


 慌てて棚の中を探ってみるものの、どう考えても足りない。

 仕方がないので、パスタも手打ちで作ることにした。ラグーソースならスパゲッティーニの方が合うのだが、手打ちとなるとタリアテッレで行くしかない。パスタマシンを買っていなかったことを後悔した。


(折角のラグーソースが……クリームソースにするか……メインのソースも変えなきゃ)


 計画性がないと他の計画が著しく瓦解するという事を学習したセルヴィだった。



 食卓についた夫妻とルキアの前に料理を運ぶ。まずはグラスに赤ワインを注ぐ。フランスはボルドー産ポイヤック製C.H.ラトゥールのヴィンテージコレクション。

 ダメだと言ったが少しだけとごねるので、ルキアにも少し注いで渡した。そして料理の配膳、まずは前菜から。


「鰹のカルパッチョとアスパラと新じゃがのインサラータルッサ、カポナータ添えです」


 みんな目を輝かせて料理にかぶりつく。美味しいという賛辞が何よりも嬉しい。一通り説明なんかをしてキッチンに引っ込み、食べている間に次の料理の支度をする。

 全員が食べ終わって、ナイフとフォークを11時25分に置く。それを見計らって皿を下げて、次の料理。


「エビのカダイフ巻きフリット、ビーツとバジルソース、春野菜のグリルです」


 焼いた野菜を綺麗に並べて、その上にフリットを置き、野菜にはアンチョビソースをかけ、皿の空いたところに綺麗な水玉模様になる様に、赤いビーツのソースと緑のバジルのソースを描いてみた。綺麗に出来た。料理は見た目も味の一つだ。

 そんな風にして料理を提供する。急遽変更した蟹クリームのタリアテッレも好評だったし、メインは言う事無し。

 

 ドルチェの順番になると、マルクスが指をパチンと鳴らした。それと同時に部屋に灯っていた蝋燭が消える。

 ルキアがキョロキョロしているところに、ロウソクを立てたドルチェを持っていく。


「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディーアルーキアー。ハッピバースデートゥーユー」


 歌いながら持っていくと、マルクスとポリシアも手拍子してくれて、ルキアも喜んで手を叩く。


「ルキア、13歳の誕生日おめでとう!」

「ありがとう!」

「おめでとうルキア」

「子供の成長は早いわねぇ。おめでとう」

「ありがとうございます!」


 今日は3月25日。ルキアの13歳の誕生日。普段食事は別々に摂っているが、こういうお祝いの日は姉弟を主役にしてくれるし、同席を許してくれる。

 ちなみにセルヴィは、料理を作る工程で味見をしている間にお腹いっぱいになるし、主食の血液はスポーツドリンク感覚でいつでも飲めるので構わない。


 嬉しそうにしたルキアがアフォガードにスプーンをいれて、ソースのエスプレッソに浸けて口を運び、顔を綻ばせる。


「美味しい。このアイスもおねーちゃんが作ったの?」

「そーだよ。頑張ったでしょ」

「うん、でかした」

「何様」


 あははと笑いながら他のドルチェにもルキアは手を伸ばしていく。マルクスとポリシアにも同じドルチェを出すと、ご好評戴けた。


「美味いな」

「本当に美味しいわ。セルヴィはいいお嫁さんになれるわよ」

「えー? やったー」


 奥様に褒められて照れていると、ルキアが口を挟んでくる。


「ダメですよ奥様。おねーちゃんは一生独身を貫くんですから」

「ちょ、なんでよ!」

「おねーちゃん惚れっぽい割に全然モテないから、絶対その内変な男に引っかかって騙されるって。恋愛経験ほぼ皆無じゃん。ちょっと優しくされて悪い男にコロッと騙されるよ。目に浮かぶ」

「浮かばないし!」


 反論したもののポリシアは納得してしまった。


「そうねぇ。マルクスが処女と見抜けなかったのが不思議なくらいだもの」

「……そうなのか」


 奥様はコクリと頷く。


「あのね、女の子は顔だけじゃモテないのよ。オーラというか雰囲気と言うのがあるのよ」


 それはモテオーラ皆無という事でしょうか、と脳内で不満を呟く。


「セルヴィは可愛いんだけれど、色気がないのよねぇ」

「確かにな」


 そりゃ奥様は色気タップリですけども、と脳内で反論する。


「モテないから余計ですよ。本当おねーちゃんの惚れっぽさは風邪と同レベルなんです。ちょっと誰かが優しくして抱きしめたりでもしたらすぐに惚れますから。もう病気ですよ」

「普通そういうことされたらさぁ、好きになるじゃん」

「私はならないわねぇ。むしろ気安く触れられると腹が立つわ」


 ポリシアが否定してしまったので、ほらね、とルキアは得意げだ。

 ふとマルクスがポリシアの髪を撫でる。


「私でも嫌か?」


 その問いにポリシアはマルクスの手にそっと手を添えて優しく微笑む。


「そんなはずないでしょう? あなたにしか許さないわ」


 そして食卓で熱烈なチュウを交わしイチャつきはじめる。超絶ラブラブな夫妻の様子には割と慣れたが、敗北感が堪らない。


(チクショーいつも見せつけてくれて。羨ましいなぁもう)


 心の中でグチグチと文句を言って溜息を吐く。

 するとルキアが腕をぐいっと引いた。はずみで傾いた頭にルキアが顔を寄せる。


「羨ましい?」

「そりゃね」


 小声で会話をする。


「ルキアも彼女欲しいでしょ?」

「ヤダいらない」

「ウソばっかり」

「ウソじゃないよ」


 そう言ったルキアが頬を撫でたので、つられて視線を合わせた。


「僕にはおねーちゃんがいるから、他の女の子なんかいらない」

「えっ!」


 想定外の言葉に反射的に離れた。恥ずかしくて顔が熱くなってきた。それを見てルキアは笑って、夫妻に振り向く。


「ね? 見たでしょ? 僕がやってコレですよ」

「本当に免疫ないのねぇ」

「お前、弟の言う事を真に受けるか? 普通」


 まさか弟にからかわれるとは思わず、一層恥ずかしくなったうえに猛烈に口惜しい。

 当のルキアはニヤニヤしながらドルチェを頬張って満足気にしている。


「もー! ルキアのバカ!」


 グラスのワインをぶっ掛けてその場から逃げた。


 頭からワインをかけられて、服を赤く染めて髪から滴るワインに呆然とするルキア。


「あらあら」

「少し悪戯が過ぎたようだな」


 溜息を吐いて、ナプキンでワインを拭う。


「いいんです。自分がモテないって思い込んでくれた方が、彼氏作ったりしないでしょ」

「おや」

「あら」


 回答を聞いてニヤニヤしだす夫妻から視線を外して、ガトーショコラを口に入れる。


「おねーちゃんが結婚して、ウチからいなくなるようなことになったら、美味しいデザート食べられませんから」

「へぇ」

「ほぉ」


 言い訳がましい口上にやっぱり夫妻はニヤニヤして、ルキアは少しやけくその様にデザートを美味しいと言いながら頬張った。



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