第2話
今回プロローグまで行けたけど、強引だった気がする……
曇天の空の下、無数のコンテナが積まれている港の一角、数十人の男たちがコンテナの中に沢山の木箱を積んでいた。
「今回はこいつらを運べば良いんっすね」
体格のいい体に、頬にドクロの刺青を彫った金髪の若者が自分の後ろにあるコンテナに体を向け尋ねる。
「ああ、いつもご苦労だな、報酬はいつもより倍払ってやる」
「おぉ、ありがてぇ、いつもありがとうございます、旦那」
ドクロの男は話し相手の男に頭を下げる。
「なぁに、気にするな、今回のブツはかなりヤベ―からな、運ぶ際は細心の注意を払えよ」
「分ってますって……ところでこの木箱は一緒に積まなくていいんすか?」
ドクロの男は自分の左隣にある木箱に指を指す。
「そいつは俺からお前へのプレゼントだ、中見てみろ」
ドクロの男は木箱のふたを釘抜きで開けると。
「こ、こいつは……ほ、ほ、ホントにくれるんですかい!?」
「まぁな、お前の下の連中が使ってるようなトカレフや水平二連装ショットガン(スパルタン)とは違ってかなり半端ないぜ」
ニヤリと相手の男は笑う。
「た、た、た、大変だ!!」
ドタドタと少し太ったスキンヘッドの男が走ってきた。
「うるせぇな!!いま大切な話し中だ」
ドクロの男がスキンヘッドに怒鳴りつける。
だが、そんなことをしている場合ではないとでも言うような勢いでスキンヘッドは言い続ける。
「み、見張りをしていた仲間が全員やられちまってるんだ!!」
「な、なんだと!?」
周囲の作業をしていた男たち、そしてドクロの男は驚愕した、なぜなら彼らのこの活動は警察にも嗅ぎつけられていないうえ、銃の武装もしているのでほかのギャングチームが襲いに来ることもない、そのうえ見張りの数は5人、銃に素人とはいえ何も報告なしにやられるとは思わなかったからだ。
「い、一体誰にやられたんだ!」
ドクロの男はスキンヘッドの胸倉をつかみ怒鳴る
「だ、誰かは分らない!けどやられた奴ら気絶してるだけだから起きたらわかると思う」
「すぐにそいつら叩き起せ!やったやつ見つけ出してぶっ殺してやる!!」
「おちつけよ」
動揺の広がるなか、先ほどまでドクロの男と話していた男が言う
「俺には、だれがやったのかは分からないが、どこがやったかは分ってるぜ」
「お、おしえてくれ!一体どこのどいつがやったんだ」
敬語を忘れてドクロの男が尋ねる。
「『ホーク・トライアングル』さ」
男は先ほどまで被っていたテンガロンハットを脱ぎながらニヤリと笑う。
「ほ、『ホーク・トライアングル』」
「あの犯罪撲滅組織……」
「や、ヤベ―よ……」
周囲にいた男たちは口々に言いだす、ドクロの男も顔色が少々悪い、なぜなら『ホーク・トライアングル』に目をつけられた犯罪組織は必ずと言っていいほど壊滅、もしくはそれに該当するくらいの打撃を受けるからだ。
「おいおい、何ビビってんだよ、相手は少なくとも1人か2人くらいだ、それに俺もいる」
テンガロンハットの男は動揺する男たちに問いかける。
「そ、そうだ俺たちにはこの人がいるし、こいつもある!」
ドクロの男が、テンガロンハットの男から貰ったプレゼントである「AK 107(グレネードランチャー付き)」を抱える。
「よくわかってんじゃねーか、安心しろ何かあったら俺が殺ってやるよ、ヒャ―ハハハハハハハハハハハハハハ!」
テンガロンハットの男は高笑いあげた、その笑いは曇天の空に響いて行った。
啓介は電車やタクシーを乗り継いで任務の開始地点である港に着いた。今回啓介に与えられた任務は、港を拠点にしている武器密輸を行うギャングチームの討伐、もしくはその武器の密輸先、密輸元をつきとめることだ。
「そんじゃま、ボチボチ始めますか」
啓介は港に入っていた。
しばらく歩いていると異変に気付いた。
(妙だな、いくら素人ばかりとはいえ見張り一人いないなんて……)
ヒップホルスターから「ベレッタM92F」をひきぬきコンテナの集積所へと向かっていく。
「ふむ、あのコンテナの見張りは2人か……」
啓介は迷路のように積まれたコンテナを抜けて開けた場所に出る、その場所は相変わらずコンテナが周囲を取り囲んでいるのだが、中央にある三つ並んだコンテナは周りのとは違い遠くから見てもサビ一つ着いておらず、重要な物が入っているという雰囲気をかもしだしていた。
「まずは見張りを無力化するか」
入ってきた場所から近くにあった木箱に身をかがめながら啓介は呟く。
啓介は品定めをするかのように2人の見張りを観察する。
「よし、まずあいつからだ」
啓介の隠れている木箱の近くを歩いていたモヒカンの見張りに目をつける。
啓介はそのモヒカンに気付かれないように、周辺にある木箱やコンテナで身を隠しながらモヒカンの背後に近付き。
ガツン!!
銃のグリップで後頭部を殴りつけた。
バタっとモヒカンは倒れる、啓介はもう一人にばれないようにそっと引きずりながら運んで行く。すると、初めに隠れた木箱の近くに大の大人が1人入るくらいのダンボールがたくさん積まれていた。
啓介はそのダンボールを一つ取ると、モヒカンを中に突っ込みほかのダンボールでカモフラージュする。
「ったく、こんなところにタイミング良くダンボールなんて配置しやがって、コードネームを蛇にしている眼帯の兵士が前に来たのか?」
啓介は、独り言をさみしく呟いた。
「さてと、次は最後の奴か」
並んでいるコンテナ周辺を歩き回っている見張りを最初の位置と同じ場所の木箱に隠れながら、腰に差しているナイフを鞘からゆっくりと抜く。
啓介の場所からコンテナにかけて距離は50メートルくらいで、走っていけば見張りに普通にばれてしまう、そこで先ほどと同じように途中にある木箱やコンテナで身を隠しながらゆっくり進むことを決めた。
「はぁ、ホントに眼帯つけたダンボール好きのコードネームが蛇の奴みたいだ」
啓介は再びぼそりと呟いた。
そしてややあって、見張りが歩き回っているコンテナのすぐ近くの木箱に行くことに成功した。
啓介は見張りの動きを観察し、見張りが啓介に背後を向けた瞬間。
「うごくな」
啓介は木箱から飛び出し、見張りの首元にナイフを突き付け拘束した。ヒッと息をもらした見張りの首を腕で締め上げる。
キュッと言う声をもらし見張りは気絶した。
啓介はコンテナのセキュリティを開ける作業をしていた、暗証番号を入れなければ解除できない仕組みだったが、幸いにも暗証番号を解読する装置(桜田から持たされた)を使用し難なく開けることに成功した。そこで啓介の見た物は。
「え?靴ぞ」
靴底だった、それもスニーカーの、啓介は最後まで言えずにそのスニーカーで顔面に蹴りをいれられたのだ。
「ぶぺぎゃ!!」
世紀末的な声を上げ3メートル近く吹っ飛んだ、まるで漫画のようだ。
「いてて……何が起き……!」
仰向けに倒れた啓介は喋るのをやめすぐにホルスターからべレッタを引き抜き蹴りをくらったコンテナの中に向ける。
コンテナの中から赤い色のポニーテールをした少女が啓介に銃を向けながら出てきた。
「ふーん反射神経はそれなりにいいようね」
これが龍崎啓介と水無月ユイとの初めての出会いだった。
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