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明日へと続く物語  作者: カノン
第二章 人生の選択肢
8/23

第1話 幼なじみ

「見つけた!」


「な、なんで…?」



メアリーは勢いよく扉を開けた人物を見て、目を見開く



「何でライタがここにいるの?」




【第2章】

第1話 『幼なじみ』





イオスは自分よりも一回り体格がある男を見上げ、眉間にしわを寄せた



「グラン、この張り紙をつくったのはお前か?」



イオスやフウヤとは対象に、筋肉質な身体を持つ【グラン】と呼ばれた男は自慢気に言った




「はい、フウヤと一緒につくりました!!」



人選ミスだ……


イオスは目を輝かせて言うグランを見て思った



【グラン】は【フウヤ】の弟で、観察や尾行に対しては天才的だが、兄と同じ天然である



フウヤと同様、銀色の髪に、青い目を輝かせて自分を見る【グラン】に向かって、イオスは残酷な言葉を言い放つ



「今すぐ張り紙を剥がせ」


「な……!?」



その言葉を聞き、グランは絶望的な顔をした



「隊長酷いです!俺、徹夜でこれをつくったんですよ!?」



ああ、だからグランの目の下が黒いのか


確かフウヤの目の下も黒かったな



イオスは兄弟の目の下が黒い理由にひとりで納得した後、グランに張り紙を差し出した



「これを見ろ」



突然剥がした張り紙を渡されグランは首を傾げた



「確かこの部分は俺が担当しました、ここがどうかしましたか?」



「ここに、メアリー様の本名が載っている」



イオスが指した所に【メアリー・リアンス】と記されている


何故それがいけないのか、グランは首を傾げた



「リアンス家は、セントリアの大富豪…その娘が誘拐されたと世間に知られては、問題になる…もう遅いが…」


村の人が張り紙を見てひそひそと話をしているのに気づき、グランはハッとする



「それに大富豪の娘なら、狙われる可能性もある…我々の任務はメアリー様の保護だ、ゆめゆめ忘れるな」



「はい、申し訳ありませんでした!」



素直に頭を下げて謝る部下に「終わったことだ」と告げると



張り紙をぐしゃりと丸めた







----------




「くそ、宿の周りが完全に包囲されている!!」



軍人を避けながら宿まで辿りついたテッドは、宿を取り巻く軍人を見て舌打ちをした



「こりゃ、メアリーが連れ戻されんのも時間の問題だな」



いつかこうなるとわかっていたし、俺とメアリーは赤の他人だ




(下手をすれば俺まで捕まり牢獄行き、それにあのわがまま娘をそこまでして助ける義理もねーしな)



「悪いがお前の旅はここまでだ、あばよ!」



そう言って去ろうとした瞬間、ふと昨日に見た、殴られて泣き叫んでいるメアリーの姿が頭を過ぎる







(助けてッ!!)






「やめだやめ、俺には関係ねぇ!!あれはメアリーの問題だ」



昨日の出来事を頭から打ち消すようにテッドは呟く



(もう、あんな思いをするのはごめんだぜ!あの時、ずるくても賢く生きようと決めたじゃねーか)




テッドはぐっと拳を握りしめると、走って乱れたマフラーを直してその場から立ち去った









−−−−−−−




「うぅ…見渡す限り、軍人だらけ!」


メアリーは窓を覗くと、泣きそうな顔をしてライタを見た


「ライタ、一体どうなってるの!?」



ライタから外に張ってある張り紙の事や、村に広まっている話を聞いて私は唖然とした



どうやら私は、誘拐されたという事になっているらしい



(確かに、リアンス家の娘が家出をしたというよりも、誘拐にしておく方が、聞こえがいい……それにしても)



私はちらりと窓を見るが、テッドの姿が見当たらない



おそらくテッドは軍人を見て逃げたのだろう



その事に対しメアリーはホッとした気持ちになる



あのままテッドが宿にいれば、確実に彼は捕まっていた



(よかった、これ以上テッドに迷惑をかけずにすんで)



後は私が自分から出ていけばいい話だ



「ライタ、仕事の途中なのに来てくれてありがとう!私のことは大丈夫だから、早くあなたもここから離れて!犯人だと間違われるわ」




張り紙を見た後、メアリーが宿にいると噂で聞いてここまで来てくれたらしい



テッドに迷惑をかけた上にライタにまで心配をかけてしまった



これ以上、自分のわがままで周りに迷惑をかける訳にはいかない




メアリーが決意をして椅子から立ち上がった時だった




「待てよ」



ライタに声をかけられメアリーは振り返った



「ライタ?」



「戻るつもりか?あの屋敷に」



「うん、こうなることは運命だったんだよ、私が戻らなければ余計誰かに迷惑をかけ………」



メアリーの言葉を最後まで待たずに、ライタはメアリーの腕を掴むとじっと顔を覗きこんだ



「真っ青な顔しやがって…そんな状態のお前を一人置いて逃げれるかよ!腕だって震えてるじゃねーか!!」



「ライタッ、痛いよ!」



ぐっと腕を強く捕まれメアリーは顔を歪めると、ライタは慌てて腕を離す


そして、一瞬ばつの悪そうな顔をすると「悪い」と言った



「ううん、いいの…気にしないで」



昔からライタはそうだった


不器用で荒々しくて、恐い印象を持たれがちだったけど、本当は人の気持ちには人一倍敏感で優しい人だった



お父様はライタを悪く言うけど、私はそんなライタが大好きだった




お見合いが成立すると、おそらくライタとは会えなくなるだろう


お父様が許してくれる訳がない




「ありがとうライタ、でも私…行かなくちゃ」



私はライタに背を向けると、急ぎ足でドアへと向かった




「…………っ」



後ろで名前を呼ばれた気がしたが、私は振り返ることが出来なかった




「(泣いては駄目……せめて最後くらいは笑顔でさよならをしたい)…ごめんねライタ、本当にありがとう!こんな私なんかと友達になってくれて」



そう言って立ち去ろうとしてドアノブに手をかけた瞬間

再び声をかけられ、私は一瞬立ち止まる



「いいのかよ、お前はこれで…」



「うん、もう決まったことだから」




私はライタの顔が見れなかった



本当はいいはずがない、でもリアンス家に生まれてきた以上…

お父様の娘である私にはどうしようもできないこと



「本当に、これでお前はいいのかよ!?こんなに顔が腫れるまで殴られて、したくもないお見合いをさせられて……」



「ライタ……」



ライタに、昨日の夜の出来事を話した時、自分の事のように怒ってくれて嬉しかった



でもこれ以上この場にいるとライタの優しさが余計に辛くなる



「ふざけるな、メアリーは道具なんかじゃねぇ!自分の娘を道具として見ている親父の所に帰って、お前は幸せなのかよ!?」



「それは………」



口ごもる私に腹を立てたのか、ライタは私の肩を後ろから掴んだ



「メアリーがお見合いをして幸せになれるのなら俺は何もいわねーよ!」




ライタは鞄から、仕事着とマスクを取り出すとメアリーの正面へ回った




「俺に考えがある!ほぼ賭けに近いがな……」



「………?」



メアリーは仕事着とライタを交互に見て首を傾げた



「このまま屋敷に戻るか戻らないかは、メアリーの人生だ…お前が選べ」


ライタは立ちふさいでいた道を開けると、最後に付け足した



「自分のしたいようにすればいい…どっちを取るにしろ、俺はお前の味方だ!」




「………っ」



メアリーは顔をあげライタの顔を見た瞬間、今まで我慢していた分の涙が込み上げてきた



「お、おいっ!?」



自分の顔を見て泣いたメアリーを見てライタはぎょっとすると、消え入りそうなメアリーの声が確かに耳に届いた




「ライタ、私は……」
















−−−−−−−−





「フウヤ先輩、そろそろ突入した方がよろしいのでは?誰も出てきませんし、もしかすると逃げたのかも……」



フウヤは少し考える仕種をすると



「確かこの宿は裏口もないし出てくるとすれば正面しかない、確か宿主はメアリー様の写真を見て我々に知らせてくれたのだな?」


「はい、確かにこの写真のおなごだとおっしゃってました」





フウヤは部下から写真を受け取ると、ため息をはく



「やれやれ、人騒がせなお嬢さんだ…これでは、らちがあかないな」



フウヤは片手をあげると、周りのものに指示を出した




「突撃だ、この写真の方を保護しろ!犯人探しはその後だ」






フウヤの掛け声と共に、宿の中へと軍人の群れが入っていった



確か宿主殿の話では、客はメアリー様達だけだといっていた




思ったより早くにこの事件が片付きそうだ



フウヤは口元に笑みを浮かべると、イオスに連絡を取る



「隊長、今宿の中へ突撃しました!」



【ご苦労だった、フウヤ!しばらくしたら俺もそちらへ向かう、それまで待機をしていろ】



「はい!」



フウヤは返事をした後、無線を切り、自分も宿の中へと入っていった
















【次回予告】語り:メアリー




今まで私は、お父様のひくレールの中で生きていた


このまま屋敷に戻っても、お父様から逃げ続けても



私に待ち受ける運命は残酷なもの……




だから後悔しない道を選びたい!



「ごめんなさい・・・やっぱり私は------」






第2話『人生の選択肢』






これからも、人生で重要な選択肢があるだろう



その時も、後悔をしない道を歩き続けたい……




イオスを書くのが最近面白いです(笑)


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