第3話 真夜中の出会い(後篇)
俺の名前は【テッド】
職業は旅人で、一応この物語の主人公になる人物だ
チャームポイントは金色に輝く癖のある髪に、エメラルドグリーンのつぶらな瞳。
好きな食べ物はハチミツ、そして嫌いなものはスズメバチだ!
なぜハチミツは好きなのにハチは嫌いなんだと聞かれるが、別に深い意味はない
ハチミツが好きでハチは嫌い・・・ただそれだけだ!!
これはそんな俺が18歳の頃、ある目的の為セントリアの大富豪といわれる「リアンス家」に潜入した時の話になる・・・
第3話 『真夜中の出会い(後篇)』
「ひっく…っ、ぐすっ」
(参ったな、このお嬢さん…すっかり俺の存在を忘れてるな)
少年はクローゼットの中で本日数回目のため息をはいた
(あのイオスとかいう、見るからにくそ真面目そうな兄ちゃんが出ていったらすぐにここを出ようと思ってたのに……何か、今ここから出るのはタイミングが悪いと言うか……つか、かなり出にくいぞ!この状況!!)
少年は、声を押し殺してひとりで泣いている少女の様子をしばらく見ていたが、このままここにいるわけにもいかないので、恐る恐るクローゼットの扉を開けた
「……………っ!」
メアリーは、少年がクローゼットから出てきて少し驚いたそぶりを見せると、すぐに手で涙を拭った
(やっぱ、俺がいることを忘れていたのか…ま、あんだけ衝撃的な話をされたんだ、仕方ないか)
メアリーは少し気まずそうに目を擦るとを、少年から目をそらした
「ごめんなさい、何だかみっともない所を見せてしまったわね……」
「いや、別に俺は……」
少年は泣き腫らした少女の目を見て、いたたまれない気持ちになる
「それにしてもひでー話だな、好きでもない奴と結婚させれるなんてよ!こんな年頃の女の子に、いきなり結婚を申し込むなんざホルビィーの王子さん…野暮にも程があるぜ」
「え、あなたホルビィー様を知っているの?」
「ああ、これでも一応旅人でね…ホルビィー様とかいう奴の情報も入ってくる訳だ」
「旅人?」
メアリーは目の前の少年をまじまじと見てしまう
昔、色んな世界を旅する本をよんで旅人に憧れた事があった
まさか、本の世界以外で本物に会えるなんて……
「凄い、私一度本物に会ってみたかったの!」
「え……?」
さっきの悲観的な雰囲気はどこに…?
そう思わされる程、少女の目の輝きが変わり少年はギョッとした
「小さい頃から旅人に憧れてたんだ!凄いね、ひとりで旅をしてるの?」
「あ、あぁ…まぁな///」
あまりにも少女に感動されて、少し照れてしまうが、途中でハッと我に返る
(そういや俺、この家に不法侵入してるんだった!!このお嬢さんと話してると調子狂うぜ……)
少年は今だ感動の眼差しでこちらを見ている少女にあきれたように言った
「あんた変わってんな、普通夜中に見知らぬ男が部屋に入ってきたら普通ビビるだろ…」
「え?」
キョトンとする少女を見て少年は脱落した
「(いい所のお嬢さんにしちゃ、ちと危機感がなさすぎる…少し恐がらせてみるか)あんた危機感というものがなのか? ま、あのイオスとか言う奴に俺の居場所を話さないこと事態、無いのかもしれないな」
「……え?」
少女は突然少年の声と雰囲気が変わったのを感じてギョッとした
「こういう時は普通、助けを呼ぶべきだと思うぜ…不審者なんかと呑気に話している場合じゃないはずだ」
「……はっ」
不審者…
その言葉を聞き、メアリーはハッとした
(そうだこの人、普通に会話してたけど・・・不法侵入者だ!!)
でも……
メアリーは少年の目をじっと見た
「くっくっ、このままだとあんたなかなか美人だし誘拐されちまうかもしれないぜ?」
ここまで恐いことを言われて学ばない馬鹿はいないだろう…
(さて、このばか娘が助けを呼ぶ前に俺はずらかる事にするか…)
何故か当初の目的を忘れ、悪役になりきる(?)馬鹿な少年を見てメアリーは恐がる所か、とんでもないことをいい放つ
「それなら是非、誘拐して下さいっ!」
「……………は?」
少年は耳を疑い、今言われた言葉を理解しようとした
「お前今、何つった?」
「誘拐してくれと言いました」
「………はぁあ?」
少年は思いがけない返答にマヌケな声を出した
「こんな家にいて、ホルビィー様と結婚して暗い人生を送る位なら、旅人さんに誘拐されて色んな世界を回ってみたいです!」
(これはは世間知らずとかいうレベルじゃねェ、かなりの馬鹿だろ!)
目を輝かして言う少女を見て、俺は目眩がした
(こ、こいつ、本気で言ってやがる!目がマジだ!!)
「おい、待てよ!お前、小さい頃知らないお兄さんについていくなと習わなかったのか!?」
「…え?」っと警戒心がない目で見つめられ、少年は参ったようにため息をはく
「誘拐されて、暴行されて殺されるかもしれないんだぜ?お前、そのことをわかって言ってるのか!?」
流石にここまで言ったら、馬鹿なお嬢さんでも理解出来るだろう
(つか不法侵入者の俺が何やってんだ!?)
少年は頭を抱えていた時だった
「確かに、誘拐されたらそんな目に会うかもしれないね……でも」
少女に顔を近づけられ、少年はギョッとした
「あなたはそんな事、しないでしょ?」
「………な!?」
こいつ、何の根拠があってそんな風に言えるんだよ
少年は少女に真っ直ぐな瞳で見つめられ、思わずたじろいでしまう
「だって本当に悪い人なら、私が手を貸した時に身を案じて叱ってくれなかった思うし、知らない人が入ってきた時に助けを呼ぶ事を教えてくれなかった思う」
(こ、このお嬢さん…そういう事に関しては頭がいいんだな)
少年が変な事で感心していると、メアリーに手を捕まれる
「ということで、まわりくどい言い方は止めて単刀直入に言います!私を旅に連れて行って下さい」
「はああああぁあっ?」
少年は、自分が不法侵入をしている事を忘れ、屋敷の中で叫んでしまった
これが後に
『光の魔導士』とよばれる、メアリー・リアンスとの出会いだった