第6話 宣誓布告
「あら、さっきまでの威勢はどこへ言ったの?女の子だからって手を抜いてると、怪我するわよ?」
「あんたの場合、怪我だけではすまないような気がするがな!悪いが本気でいかせてもらうぜ!」
「な、何がどうなってやがる!?」
ライタは目の前で繰り広げられる戦いをぼーぜんとして見ていたが、剣のぶつかりあう音で我にかえると「テッド!」と叫ぶ
「ああ、大丈夫だ!確かにこいつはスピードはあるが、力負けすることはねぇ!」
いつもの余裕がなく、息を切らせるテッドを見て、ライタは「やめろ!お前、腕怪我してるだろ!?こいつは俺に用があるっていったんだ!テッドが戦う必要はねぇ!」と叫んだ
「ジークも言ってただろ、今は痛みを取ることしかできねーって!悪化したらどうするんだ!?」
「悪化?知らねーよ、んなこと気にして戦ってたらこっちがやられちまう!!」
痛みは取ったもの負担が激しいのか、額に汗をかきながら戦うテッドを見て、耐えられなくなったライタは、ぐっと拳を握りしめると「俺も戦う!」とベッドから立ち上がる
「馬鹿っ!?丸腰のお前が敵う相手じゃねぇ!!死にてぇのか!?」
ライタの言葉にぎょっとしたテッドがそう怒鳴った瞬間、一瞬の隙をついてアリスはテッドの懐に潜り込む
「くす・・・隙だらけね」
「!?」
2人が「いつの間に!?」と叫ぶ前にアリスは、素早い動きでテッドの腹部を蹴りあげると、テッドは物凄い勢いでライタと反対側の壁に蹴り飛ばされてしまう
「が・・・はっ・・・!?」
怪我をした背中にとって、その威力はすさまじいものだった
「ぐ・・・あぁ」
あまりの衝撃にテッドの呼吸が一瞬止まり、「げほげほッ」と咳き込んでいると、アリスは意外とでもいうように驚いた顔をしてテッドを見下ろした
「驚いた・・・フウヤ君とイオス隊長を出し抜いた相手だと聞いたからどんな強敵なのかと思ってたけど」
アリスはつまらなさそうな顔をしてため息をはき、「参謀補佐の私・・・いや、戦いが専門でない私ですらこの様ね・・・!」と呟くと、テッドの首に刀を向けた
「・・・まぁ、気配隠しの結界はたいしたものだし、まだ奥の手を隠し持っている感じはするけどね!力の出し惜しみなんかしてないで、さっきの言葉通り本気で来たら?」
アリスの挑発にテッドは不敵に笑うと、首筋に向けられている刀を脚で蹴りあげる
「上等だ・・・!」
ゾク・・・
ライタはテッドの向ける殺気に背筋が凍りつくような錯覚に陥るが、それより目の前で余裕の笑みを浮かべ、可愛らしく笑う少女の方が恐ろしかった
(何なんだ、この異様な寒気は・・・!?)
テッドが体勢を整え再びアリスの元へと駆け出そうとした瞬間、ライタの頭の中で危険信号はありえない程大きく鳴り響く
「駄目だ!テッド、こいつに近寄るな!?」
何故そのような言葉が出たのかわからない・・・だが、今のアリスに近寄ってはならない!そんなような気がした
「!?」
ライタの言葉を聞きテッドは慌ててアリスから距離をとった瞬間、彼女は口に弧を描くようにして笑うと「残念・・・」と呟く
「もうちょっと距離が近かったら、こいつを仕留めることができたのに・・・流石ライタさん、私が術を唱えようとする瞬間に気づくなんてね・・・」
「何・・・!?」
アリスの言葉にテッドはぎょっとした瞬間、部屋の中ですさまじい程の風が吹き荒れたと思えば、自分の服の袖口が切れていることに気がついた・・・
(いや、それだけではない!?)
テッドはずきんと痛みが走る自分の右手に目をうつすと、そこからはとめどなく血が流れていて、「まいったね、こりゃ・・・」と呟く
「なるほどな、あのままお前の挑発に乗って突っ込んでたらバラバラになってる所だったぜ・・・おい、ライタ!お前は怪我していないだろうな?」
「ああ・・・ッて!テッド、お前血が・・・!?」
ライタはテッドの腕を見て顔を青くさせると、その様子を横目で見ていたアリスがくすりと笑う
「あら・・・もう右腕は使えなさそうよ!でもよかったじゃない、もともと3階から落ちて怪我してたのでしょ?左腕だったら両腕が駄目になってるところだったよね♪」
「「!?」」
アリスの言葉を聞いて、テッドとライタは驚いたように目を見開くと、「なぜ、そのことをお前が知っているんだ・・・」と警戒するような低い声でたずねる
「何でって・・・」
テッドの問いにアリスはきょとんとした顔で答える
「これから偵察する相手の事や情報を知っていておかしいことでもあるの?」
そう言って目を丸くするアリスは、幼く可憐な少女そのものだが、そんな彼女の仕草でさえ、今のライタにとって恐怖以外の何者でもなかった
(まさか俺達を監視していたのか!?)
そんなことを思い、ライタはゾッとしていると、突然アリスの胸ポケットが振動し始めた
「「!?」」
(一体何なんだ!?)とテッドとライタは目を見開くと、アリスも驚いたような顔をして「まさか・・・」と呟く
そして、胸ポケットから無線を取りだし耳にあてた瞬間、みるみるうちにアリスの顔が真っ青になった
「「!?」」
そんなアリスの様子を二人はぽかんとしてを見ていたが、尋常ではない彼女の怯えぐあいにテッドは思わず「おい・・・」と声をかけた
しかし、アリスはテッドの声にすら気がついていない様子で、電話先の相手と話を続ける
【アリス・・・僕に黙ってどこへ出かけてるの?駄目じゃないか、勝手に外へ出歩くなといってるだろ】
(男・・・?それにこの声、何処かで聞いたことがあるような・・・)
人一倍、感がいいと言われてきたライタだが、彼は耳も人一倍良かったため、アリスと会話をしている相手の言葉が耳に入ってきた
「ごめんなさい!勝手な真似をして・・・でも私、少しでもお兄ちゃんの役に立ちたかったの!!」
(お兄ちゃん・・・?こいつの兄貴か?)
隙だらけのアリスに攻撃するのを忘れ、ぽかんとしているテッドとは対象に、ライタは更に耳を傾ける
(悪いが盗み聞きさせてもらう!もしかすると、こいつらについて何か情報を掴めるかもしれねぇ)
そう考えたライタが耳に全神経を集中力させ、隙だらけのアリスに近づこうとしたその時だった
【無線ごしなのに僕の声が聞き取れるなんて・・・流石ライタくん!ちょうどよかった、君とも一度話がしたかったんだよ】
ゾクッ・・・
「おい、ライタ・・・お前までどうしたんだ?何か変だぞ?」
突然肩をびくりと震わせて、真っ青な顔をするライタを見てテッドは首を傾ける
「何で、俺が聞き耳たててるってわかったんだよ・・・」
「はぁ!?何に?つーかお前ら二人揃って同じ顔色しやがって・・・一体何だっていうんだよ!?」
一人だけ状況が理解出来ていないテッドはイライラした様子で「あー、もう!じれってえええっ!!」と叫ぶと、アリスの無線を食い入るように見詰めるライタに向かって叫んだ
「おい、ライタ!何をぼーってしてやがる!?今がチャンスじゃねーか、早くこの生意気な小娘をどうにかするぞ!!」
「!?」
しびれを切らしたテッドの声に、ライタとアリスはハッとすると
テッドは「隙あり!」と叫びながらアリスに飛びかかった
「え・・・あ、ちょ・・・きゃああああっ!?」
もちろん無線との会話に集中していたアリスは、飛びかかってくるテッドを見て「しまった!?」と意識を覚醒させる
「よし、捕まえた!・・・こうしてしまえばこっちのもんだぜ!!」
テッドに両腕を片腕で拘束され、ベッドの上で抑えつけられたアリスは真っ赤な顔をして「はなしてぇ!」と身をよじった
しかし、テッドも一応男!
暴れるアリスの力強さに思わず力負けしそうになるが、「負けてたまるか!」と意地になって力を込めた
「あうっ、痛い!?」
片手とはいえ、容赦なく大の男に無理矢理抑えつけられ、アリスは無線から手を放す
するとテッドはそれを拾うと
「おい!これはどう使うんだ?」
とライタに問いかけた
「知らねーよ、つかお前女の子供相手に容赦ねーな!たしかにこいつはやべー雰囲気はあるが、可哀想だとは思わねーのかよ?」
ライタはあきれたように呟き、「電話と同じでこうやって使うんじゃねーのか?」と言うと、テッドの耳に無線をあてる
「でかした、ライタ!このままそこで固定してろ」
そう言ってテッドは不適に笑うと、無線越しに向かって思いきり叫んだ
「おい、誰だか知らねーがあんたはこのアリスとかいう小娘の仲間か!?」
「仲間って・・・さっきアリスが兄貴だと言ってただろ」
無線越しに叫ぶテッドに、ライタは冷静につっこみを入れると、アリスも「ちょっと、顔に唾とんできたんだけど!」と怒鳴る
【仲間・・・というより彼女は僕の妹だよ!なるほど、君がテッド君か・・・】
無線越しに特徴がある低い声が聞こえ、テッドは「ん?」と首を傾げると「あれ?お前の声、どこかで聞いたことがあるような・・・」と呟く
「まあ、そんなことはどうでもいい!とりあえず単刀直入に言うぞ!!」
一瞬相手の声が聞き覚えのある声に思えて、テッドは疑問に思うが、今はそれよりやるべきことがある
そう思い、テッドは眉間にしわを寄せると、無線に向かって言った
「だいたいの話はアリスから聞いた!あんた達がライタを狙っていることも、イオスとは別部隊のやつらだということもな!」
【あらら・・・】
無線の相手は少し困ったように、ため息をはき【アリスは本当に口が軽いなぁ・・・もうそこまでばれてんだ】と呟くと【で、用件は何?】とテッドに問いかけた
「あんたもわかってんだろ?」
テッドは、主人公とは思えない程の悪どい顔をして笑うと、ニヤリと笑う
「なぜあんたらがライタを狙うのか・・・そして、メアリーの親父が持っていた【赤黒い水】について詳しく話して貰おうか?」
「「!?」」
テッドの言葉を聞き、その言葉に反応を示したアリスは「お兄ちゃん!駄目っ!?」と叫ぶ
「何が駄目なんだ?」
テッドは必死になるアリスを見て納得したように笑うと「やっぱりそうか」と言った
「イオスやフウヤの行動を見て思ったが、メアリーの親父と帝国騎士軍はどうやら繋がってるみてーだからな!」
「っ!?」
テッドの言葉に「しまった!」と冷や汗を流すアリスを見にテッドは苦笑すると「やっぱりカマをかけてよかったぜ!お前の態度を見て、核心が持てた!」と言った
「さぁ、そういう訳だ!この2つ・・・いや、その他もろもろお前達についての情報を吐いてもらう!!」
【・・・・。】
無線の相手はテッドの言葉に対し、少し間をおいて【んー、困ったな】と呟くと、今度ははっきりとした口調でキッパリと言い切った
【・・・嫌だ!冒頭が長すぎていちいち説明するのがめんどくさい!!】
「・・・なっ!?」
テッドは無線の相手の出した答えに、あぜんとするが、瞬間で我にかえると「お前、今の状況がわかってんのか!?」と叫んだ
「さっきのアリスの悲鳴、聞こえてたんだろ!?普通こんな状態でその言葉が出てくるか!?妹の自分の妹が危ない目にあうかもしれねーんだぞ!!」
【んー、さっきの悲鳴は尋常じゃなさそうだし、そうかもしれないね・・・】
そう言って無線の相手は、仮面越しにくすりと笑うと少し声を低くして囁くように口を開く
【確かにアリスがつかまってる以上、どう考えても今の状況じゃ僕達の方が不利だ・・・でもさ、君も今の自分たちの状況を理解できてないんじゃないかな?】
「何がいいたい?」
遠回しな言い方をする相手にテッドは少し苛ついたように顔をしかめるのに対し、仮面の男はくすりと笑うと【さぁ・・・今にわかるさ】と呟いた
【さてと、僕はこれから仕事があるからそろそろ話を終わらせて貰うよ!】
「お、おい!?」
テッドは無線越しに「まだ話は終わってねぇ!」と叫ぶ
すると仮面の男はくすりと笑い
【大丈夫、そんなの慌てなくてもまた近いうち会えるからさ!その時にゆっくり話そうよ・・・テッドくん】
と一方的に話を進めると、ブチリと音をたてて無線を切ってしまった
「何なんだ、一体?・・・つか何で俺の名前を知ってるんだよ・・・気味が悪ぃ!!」
『君たちも今の自分たちの状況を理解できてないんじゃないかな?』
先程相手に言われた言葉の意味はわからないが、その言葉に不吉な予感がした
(そんなことより・・・)
テッドは(とりあえずこいつをどうするか、だ)と心の中で思うと、すっかり大人しくなったアリスを見て、ほっと息をはいた
しかし、ライタはテッドと違いハッとしたような表情で扉を見つめると
「扉の外に誰かがいる」と威嚇するように静かな声で言った
「は?」
ライタに言われテッドは耳をすますが何も聞こえず、彼はくびを傾げると「また何か来るのか・・・勘弁してくれよ!」と言ってため息をはいた
そんなテッドにライタは苛立ちを感じると「お前、聞こえないのかよ!?ひそひそ声でちゃんとは聞き取れないが、今まさに扉の前で何かを話てるじゃねーか!!」と怒鳴る
「もしかすると、こいつの仲間がきたのかもしれねぇ!それなのに呑気にため息をはいてる場合かよ!?」
「ああ、なら大丈夫だ」
テッドはつかまえたアリスをライタに見せると
「いざとなりゃ、こいつを人質に・・・いや、盾にして逃げればいい!」
そうきっぱりいい放った
「!?」
その言葉を聞き、仮面の男との一件で、顔を青くして大人しくなっていたアリスはぎりっと唇を噛み締めると、再び暴れ出す
「何ですって!?あなた、か弱い女の子を盾にするなんて、男・・・いや、人として最低だと思わないの!?」
そう言って暴れ出すアリスに、男・・・いや、人として問題があるテッドは「おい、暴れるなよ!?」と叫ぶ
「心配すんな、アリス!お前は強い!きっとどんなピンチがおとずれようともお前なら乗り切れるさ!!そう、俺は信じてる!!」
「信じてるって何をよ!?意味がわからない!!」
ギャーギャーと言い争う2人を見て、ライタはため息をはき
「テッド、お前本当に容赦ねーよな、いくら何でもそれは可哀想だろ・・・やることえげつねー!!」
とテッドに対してそういい放った時だった・・・
『・・・・・』
『・・・りました・・』
「「!?」」
扉の前での声を聞き、テッドとライタはびくりと肩を震わせる
その後、ライタが「来るぞ!」と叫ぶと、部屋の扉がゆっくりと開かれた
「さぁ、来るなら来いッ!こちとら準備は出来てんだ!!さっさと姿を現せ!」
だんだんと扉開いていき、テッドとライタが構えた瞬間
途中で勢いよく派手に扉が開かれると、そこには・・・
「あの、すみません!さっきからここの病室が煩いと苦情が来ているのですけど!?」
「「えッ・・・!?」」
鬼のような形相で血管が浮き出る程怒り狂ったナースと、静かに怒りのオーラを放つ治癒術師の若い女性二人がが仁王立ちで立っていた
「お、鬼だ!ライタ!白衣の天使であるべき人物がおおお・・・・鬼にッ!?」
その人物を見たテッドは慌てたように口を開くと、ナースは「誰が鬼だ!?」と叫ぶ!
「もう面会時間はとっくに過ぎてんのに、ここの病室からは叫び声や爆発音は聞こえるわ、部屋は荒れてるわ・・・一体どうなってるんだよ!?ただでなくてもくそ忙しいっつーのに、うちらの仕事増やすなっつーの!!」
もう敬語でも何でもない、おそらく相当怒っているのだろう
そんな彼女を目の辺りにしたテッドとライタは素直に謝ると、今度は治癒術師の方がなだめるように言った
「あの、小さい子もいるのであまり怒鳴るのはどうかと・・・」
しばらく黙って様子を見ていたアリスは二人の様子を見ていたが、(小さい子・・・これは使える)とほくそ笑むと、思い切り息を吸う
「?」
突然深く呼吸をしだすアリスを見てテッドが首を傾げた瞬間
「きゃあああああっ!」
いきなりアリスが叫び出した
「うお、うるせー!?」
突然悲鳴をあげるアリスを見て、テッドとライタがぽかんとしていると、彼女はじたばたと暴れ出す
「いやああああッ、放してッ!誰か、誰かぁ、助けて下さいっ!?」
「・・・な、お前!何いってやがる!?」
アリスの言葉にギョッとしたテッドは慌てて否定をしようと口を開くが
すがるような潤んだ瞳で「助けて」と叫ぶアリスを見ると、ナースは疑いの目でテッドを睨んだ
「そういやさっきから気にはなっていたが、何であんたその子に跨っているんだい?見た感じ女の子は嫌がってるし・・・まさか!?」
「何だ、その目は!?違ぇよ、俺にそんな趣味はねー!!」
ナースの言葉にテッドは慌てたように否定すると、今度は治癒術師の方が口を開く
「それなら何故あなたは嫌がる女の子を押し倒しているのです?しかも、面会時間が終わった病院で!!」
「う・・・」
確かにそうだ!
テッドは治癒術師の質問に言葉を詰まらせると、今度はライタが「ごほん」と咳をすると、助け船を出してくれた
「こいつは、ベッドの上ではしゃいでたこの娘が転びそうになったから助けようとしたんだ・・・別にあんたらが考えてるようななんて、こいつは何一つしちゃいねーよ」
「「「!?」」」
ライタの言葉にホッと息をつくテッドに対し、アリスはギリッと唇を噛み締めると
「違うもんっ!」
と叫ぶ
「私、この人に痴漢されました!騙されないで下さいッ!」
「はああああぁあ!?何デタラメなこと言ってるんだ!?」
アリスの言葉を遮ってテッドは思わず叫んだ
「ふざけんなクソガキ!お前のを触るくらいなら、まだそこのナースの姉ちゃんのを触って・・・いや、違う!」
テッドは言い直そうと、「ごほん」と咳き込むが、現にナースと治癒術師はドン引きしている
「と、とにかくだ!俺は痴漢なんてしてねーよ!!」
そう言いながら冷や汗を流すテッドをナースは睨みつけると
「嘘つけっ!痴漢したやつはみんなそう言って誤魔化すんだよ!!今の言動からして変態そのものじゃねーか!?女の子に跨りながらキリッとした顔で言われても説得力がねーんだよ!!」
と怒鳴った
「とにかくその子を放しな!警察を呼ぶのはその後だ!?」
「警察っ!?」
ナースの言葉にテッドは青筋を浮かべると「勘弁してくれよ!」と呟いた
「おい、待てよッ!」
ナースがそう言ってケータイを取りだした瞬間、ライタもテッドを庇うべく、ナースと治癒術師を真っ直ぐに見る
「こいつは痴漢なんてしてねーし、全部この女が嘘をついてるんだ!警察を呼ぶ前に話を聞いてやってくれ」
「そういわれても・・・」
テッドとは違い落ち着いた物腰のライタにナースは言葉を詰まらせた
「どう見たかって私からは女の子が襲われているようにしか見えないし・・・それにこの状況になった理由をどう弁解・・・・あれ?」
ナースは話の途中でテッドをちらりとみた瞬間、首を傾げる
「あのこ、どこへ行ったの?・・・・・あッ!?」
「「「!?」」」
痴漢騒ぎでテッドがナースに抗議をしているうちにアリスはテッドの腕から抜け出していて、窓辺に座っていた
「お前、いつのまに!?」
テッドはいつの間にかアリスではなく枕を抱えていたことに気付き、ハッとする
「くそ、変わり身か!?油断したぜ!!」
テッドは抱えていた枕を地面に叩きつけアリスを睨むと、彼女はニヤリと笑って言った
「いい気味ね、テッドさん・・・」
「あ、あの子!いつの間に!?」
テッドと抗議をしていたナースと治癒術師も、アリスの素早い身のこなしにぎょっとしている
「本当これだから人間は甘いのよね・・・」
アリスは窓に身を乗りだし、くるりと振り返ると余裕な笑みを浮かべて言った
「で、さっきの話に戻るけど、ライタさんに残されたタイムリミットはまだもう少しあるし、もう少し待ってあげるよ!」
「「!?」」
アリスの言葉に、テッドとライタは反応を示すと「どういう意味だ?」と問いかける
するとアリスはライタを見て、くすりと笑うと「何ってそのままの意味」と答えた
「実際の所、今日はあなたたちの実力を知りたかっただけなの・・・それにテッドさん程度の実力なら、いつでもライタさんを連れていけると思ったからよ」
「んだと・・・コラ!」
アリスの言葉にテッドは青筋を浮かべると、彼女はそんなテッドを見下したように目を細めた
「とりあえず今日の所はこれで引いてあげる・・・ライタさんが毒に侵されどうしようもない事態になった時、またあなたを迎えにいくわ!今は関係のない人もいるし、次会った時に決着をつけましょ?」
「おい、テメー!勝手に一人で話を完結させんじゃねーぞ!!こっちからしたら訳がわかんねーんだよ!?」
テッドは窓から逃げようとするアリスに向かって走り出すと、彼女は「馬鹿ね・・」と呟いた
「よせ、テッド!?」
ライタはアリスが手をかざすのを見てテッドに静止をかけた瞬間、テッドの身体が吹き飛ばされた
「ぐあぁっ・・・」
壁に背中を強く打ち付けたテッドは小さく呻き声をあげると、ライタは「テッド!?」と叫ぶ
「あら、ごめんなさい?加減して射ったつもりだけど、あなたには強すぎたかしら?」
そう言ってくすくすと笑うアリスを見て、テッドは眉間にシワを寄せると「なるほど、あんた化けるだけじゃなく、水属性の技も使えるのか」と舌打ちする
「本当にやっかいな能力だぜ・・・特に水属性と風属性の技を肉眼で見るのは困難だからな
その言葉にアリスは余裕の笑みを浮かべ、窓に足を掛けると「そう?」と首を傾げた
「それじゃあ私はこれで失礼するね、今度私があなたたちの前に現れる時は、タイムリミットが近いっていうことだから」
「くっ・・・!」
その言葉にテッドとライタは顔をしかめると、アリスは青い髪をなびかせながら、不敵に笑う
「その時、いい返事を待っているから・・・ね、ライタさん?」
「・・・・・ッ」
ゾクッ・・・
アリスに微笑まれライタがゾクリと背筋を凍りつかせた瞬間だった、再び辺りに強い風が吹きテッド達は思わずその衝撃で目を閉じる
「くそ、また風か・・・目が開かねーッ!?」
そうテッドが叫んだとどうじに風が止み、テッドが目を開けると
そこにはアリスの姿はなく・・・
「くそ、あいつ!どこへ消えやがった!?」
ライタと乱れた病室・・・そして、今の出来事が理解出来ずにあぜんと目を見開いているナースと治癒術師の姿しかいなかった・・・・・
-----------------------------------------------帰らずの洞窟 【中編】へ続く---------
【おまけ】
しりとりをしよう! 「1回戦・テッドVSヒナ」
テッド
「ヒナ、しりとりで勝負だ!いくぞ!俺の名前を取って【テッド】」
ヒナ
「・・・・・【鈍感!】」
テッド
「・・・・・・・・」
ーーーーーーーーー終了ーー
【テッドVSヒナ2】
テッド
「おい、お前わざとだろ!いいな、今度はちゃんとするんだぞ!わかったか!?」
ヒナ
(めんどくさい・・・)
テッド
「この前は『ど』で終わったからな、いくぞ!【ドライアイ】」
ヒナ
「【イルカ】」
テッド
「【菓子!】」
ヒナ
「【鹿!】」
テッド
「か・・・【買い物】」
ヒナ
「【農家】」
テッド
「おい、『か』ばっかじゃねーか!?【カバ】」
ヒナ
「【馬鹿】」
テッド
「くそ、【か、カブトムシ】」
ヒナ
「【進化】」
テッド
「【貝!】」
ヒナ
「【イカ】」
テッド
「【カビ】!」
ヒナ
「【美化】ッ!!」
テッド
「か・・・【価値】」
ヒナ
「【地下っ!!】」
テッド
「おい、ヒナ!俺を嵌めてそんなに楽しいか!?」
ヒナ
「何のこと?(しれっ)」
テッド
「ちくしょー、俺をはめやがって!今に見てろ!!【カモメ】」
ヒナ
「【めだかっ!」】」
テッド
「ふん、やはりそうきたか!まだまだ、【かき氷】」
ヒナ
「【理科」】」
テッド
「【観光】」
ヒナ
「【宇花っ!】」
テッド
「頃合いだな・・・ヒナめ!『か』返しにしてくれるわ!くらえ【閣下】っ!!】」
ヒナ
「!?」
テッド
「クックックッ、ざまあねーな!まさか反撃を受けるとは思わなかっただろ!」
ヒナ
「・・・・・」
テッド
「どうした、ネタギレか?俺が随分と出しちまったからな!くくくっ」
ヒナ
「・・・・【蚊ッ!!】」
テッド
「・・・・・・・」
数分後・・・
ライタ
「なぁ、テッド!何でそんなつかれた顔してんだよ!何をやってたんだ?」
テッド
「何ってしりとりだよ・・・ヒナのやつ、俺をはめやがって」
ライタ
「・・・しりとりってそんな疲れる遊びだったっけな?つか、ヒナって誰?」
----------------------------------------------------続く--------------------------
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