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明日へと続く物語  作者: カノン
第一章 セントリアの少女
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第2話 真夜中の出会い(前編)

「ん・・・」


真夜中、喉が渇き目を覚ましたメアリーは小さく欠伸をする


「私、あれから寝てしまったんだ」


時計を見ると3時過ぎ・・・


(この時間ならお父様も寝ているはず)


メアリーはベッドの傍に置いていた懐中電灯を持つと、台所へと向かった。






第2話『真夜中の出会い(前編)』







(うう、自分の家だけど夜はこわいなあ・・・)


だからといって真夜中に電気をつけると使用人だけでない、お父様も起きてしまうだろう

私にとってそれは避けたい状況だった。


幸いトイレは自分の部屋にあるものの、台所にいくまではかなりの距離があった。

廊下を懐中電灯の光で照らしてみるが、長い廊下の為暗くて先が見えないほど真っ暗な闇が続いている


(やっぱり戻ろう・・・朝まで我慢すれば済む話だし)


先が見えないことに恐怖を感じたメアリーは、部屋へ戻ろうと振り返ると・・・


「何をしている」


「・・・・・ひっ」


突然頭上から男の声が聞こえ、メアリーは小さく悲鳴をあげた


「とっくに消灯時間はすぎて・・・・・!!あなたはメアリー様?」


「・・・・・え」


名前を呼ばれ、おそるおそるその男の顔を光で照らして見ると、何故か帝国軍人の【イオス】さんが光をうけて眩しそうに立っていた


「こんな時間まで起きていたのですか・・・」


「イ、イオスさん」


(何であなたがここに?)


そう訪ねたかったが、正直メアリーはイオスのことが苦手だった


初めてイオスさんと出会ったのは約3年前、彼は私の護身術の講師としてこの家に来た


初めて彼を見たとき、端正な顔立ちに思わず見とれてしまったけれど、それと同時に怖い印象を受けた


黒が混ざったような青い髪に、凍てつくような冷たい光を放つ青い瞳が印象的で、感情を表に出さず常に無表情


それがメアリーから見たイオスの印象である


(うわぁ、どうしよう・・・ある意味お父様よりやっかいな人に見つかってしまった!イオスさんは規律に厳しいからなぁ、消灯を過ぎて起きてたら起こられるかも)


そう思った瞬間にさっそく彼が先に口を開く


「遅くまで起きていると、リアンス様に叱られますよ。」


「はい・・・」


これ以上イオスといると息がつまりそうだと感じたメアリーが諦めて部屋へ戻ろうとした時だった






「お待ち下さい」






イオスはメアリーを呼び止め、ゆっくりと近づいてきた


「何かご用でもあったのですか?」


「えっと・・・」


思いがけずイオス訪ねられたメアリーは、正直に「水を飲みに行きたかった」ことを伝えると納得したように彼は頷いた


「わかりました。それなら私が部屋に飲み物をお持ちしますので部屋へお戻り下さい。」


「え・・・あ、ありがとうございます」


思いがけない展開に驚きながらも、メアリーはイオスにお礼を言うと、深く頭を下げた






---------------






その後、イオスさんが部屋まで送ってくれたおかげで私は安心して暗闇を歩くことができた


(イオスさん、こんな暗い所で仕事してて恐くないのかな)


そんな事を思っているうちに部屋へ着き、扉を開けてくれた彼にメアリーはお礼を言った


「それでは、また後で伺います」


イオスさんがお辞儀をして扉を閉めてくれた瞬間、肩の力が抜ける気がした


(ああ、緊張した・・・でも途中で会ったのがお父様じゃなく、まだイオスさんでよかった)


そう思い、ほっとしてベッドへ腰かけた瞬間







がさっ






「・・・え?」





何かの物音がして、私は(何の音だろう)と思い窓へと近づいた




がさっがさっ




(やっぱり窓の方からだ・・・窓が開いてるから外の音が入ってきたのかな?)




私は窓が開きっぱなしで寝ていたことに気づき、閉めようと近づき手を伸ばした瞬間だった









「「・・・・・・・・え」」







声が重なったと同時に、窓の枠にごつくて骨ばった手がかかったと思うと金色の髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ少年と目があってしまい、私は固まってしまう


「だ・・・誰!?」


「やべ、人がいたのかよ!」


少年は驚いたようにそう言って、慌てて下に降りようとしたするが・・・


「うおっ!」


「あ、危ない!?」


足を踏み外したのか少年の体が後ろへ傾き、バランスを崩しかけてしまう


(こんな時間に何で子供が起きてるんだよ!?くそ、このままじゃ落ちる!!)


少年は何とかで仰け反った身体を元に戻そうと腹筋を使い、目の前にある窓の枠を再び掴もうと手を伸ばした瞬間・・・




「つかまって!!」



「・・・・・!?」


メアリーは窓から身を乗り出して少年に手を差し出した



少年は目の前に手を差し出され目を丸くしたが、とっさに差し出された手を掴むと後は自分の腹筋で上体を起きあがらせることで何とか下へ落ちずに済んだ





------------------




「あ、危なかった・・・いくら俺でも三階から落ちたら怪我する所だったぜ」


少年はほっと息をつくと、目の前でポカンとしている少女を見た


「それにしてもお前、普通助けるか・・・?部屋に忍び込もうとした人間だぞ」


「だって、落ちると思ったから」


少年はあきれたようにため息をはくと、窓に足をかけて部屋の中に入ってきてメアリーを見おろした


「あのな・・・もし俺じゃなかったらお前まで落ちてたかもしれないんだぜ!何を考えているんだ!?」


確かにこの人が腹筋を使って自力で上体を起こしていなければ、男の人の体重で私も落ちていただろう


メアリーはそのことを考えるとぞっとしてしまう・・・


「ごめんなさい…身体が勝手に動いてしまって」


謝った瞬間、男の人は驚いた顔をして私を見た


「何で謝る必要があるんだよ!?別にお前、悪い事はしてないだろ……」


少年はあぜんとしながらそう言った時だった







トントンッ






「メアリー様、水をお持ちしました」


イオスさんが来た瞬間男の人は「げ…」っと言った


「悪い、ちょいと隠れさせてくれ」


「あ、ちょっと!」            


男の人は勝手にクローゼットを開けると、その中に入って扉を閉める


(隠れされてっていわれても・・・)


そう思ったが、何故かその人が悪い人ではないような気がしてかくまってあげることにした



ガチャッ





「……………」


「あ、ありがとうイオスさん…わざわざ持ってきてくれて」


部屋の扉を開け、私はイオスさんから水の入ったグラスを受け取ると、お礼だけいってさっさと扉を閉めようとドアノブに手をかけた


「メアリー様」


「え……何?」


扉を閉めようとした瞬間に名前を呼ばれ、私はびくりとする


「先程は誰かと話されてはいませんでしたか?声が聞こえたような気がしたのですが」


「ぎくっ(まさか、この部屋に人がいることばれてる!?)あの、気のせいだと思いますよ…そもそもこんな夜中に………あっ!」



イオスさんは「失礼します」と言うとずかずかと部屋の中へ入ってきて、クローゼットの前に立つ


(やっべー…俺がここにいること、気づいてんのか)


少年はハラハラしながらクローゼットの隙間から様子を伺っていた


「メアリー様…」


「は、はいっ(どうしよう…)」


メアリーと少年が覚悟を決めた時だった


「いくら暑いとはいえ、窓を開けて寝るのは無用心ですよ」



((え………?))



イオスさんはそういってクローゼットの横にある窓に手をかけると、静かに窓を閉めた



(な、何だ…窓を閉める為にクローゼットの近くまで来たのか…紛らわしいぜ)


少年はホッと心の中でため息をはくと、再び外の様子を見ることにした


「あ、ありがとうイオスさん」


メアリーはお礼を言うと水を一口飲んでぎこちなく笑う


「……それともう一つ、先程、台所でリアンス様と会ったのですが」


「…え、お父様と?」


まだ起きてたんだお父様


やっぱりイオスさんに行って貰っておいてよかった…


そう思ってホッとした私に、イオスさんは信じられない言葉を口にした



「あなたの部屋へ伺うついでに伝言を頼まれました」


「な、何…?」


私は嫌な予感がした

けれど、聞いておかないといけない内容のような気がして、私はイオスさんに尋ねる


「二週間後、ホルビィー様と貴女のお見合いが決まったそうです……明日から花嫁修行の為に訓練をして貰うとリアンス様がおっしゃっていました」


「え、ホルビィー様っ!?」


メアリーはイオスの話を聞いた瞬間、手に持っていたグラスを落としてしまう


「何でよりにもよってあんな人が……」


メアリーは目眩がした


ホルビィー様とは、新帝国の息子で

いつも自分の地位を鼻にかけているような人だ


(きっとお父様は、リアンス家をもっと大きくする為にお見合い話を飲んだんだわ)




実は昔、ホルビィー様に交際を申し込まれた時があった


その時、丁寧にお断りしたはずなのに……



「ねえイオスさん…そのお見合い話の件、取り消すこと出来ないかな?」


私は自分の落としたグラスを片づけている、イオスさんをすがる思いで見つめていたが、イオスさんは坦々とむごい言葉を言い放つ


「リアンス様はホルビィー様とのお見合いに、深く賛成をしておられます…おそらく取り消すのは無理な話でしょう」


「そんな……」


メアリーは頭を誰かに殴られるような衝撃が走った


心臓がドクンドクンと鳴り響き、身体に冷や汗が走る


「嫌よ!絶対あんな人とお見合いなんてしないんだから!!」


私は思わず苦手な人だということを忘れイオスさんの腕を掴んでしまう


「メアリー様、落ち着いてください」


「落ち着いてなんていられないわ、冗談じゃない!お見合いなんて嘘よ!花嫁修業という言葉がでた以上、お父様は私をその人と結婚させる気ね!?」


「・・・・・・。」


そこでイオスさんが黙るということは、おそらくそうなるんだろう


私はその瞬間、自分の人生が終わったような錯覚に陥った


「ふざけないで!私はお父様の操り人形でもないし、一族を大きくする道具でもない!」


「メアリー様・・・」


「もうその話は聞きたくない!!!出て行って下さい!!」


イオスさんは私に何か言おうと口を動かしたけど、これ以上何も聞きたくなかった


「・・・・・・・・。わかりました、私が預かった伝言は以上です。」


「・・・・・っ」


イオスさんは何も悪くないってわかってる。

お父様に伝言を頼まれて、真面目に仕事をしただけなのに・・・・


八つ当たりをしてしまった



「ごめんなさい・・・」



イオスは部屋から出て行く瞬間、消え入りそうな声の謝罪が聞こえたようなきがした


「とりあえず、今日は遅いのでおやすみになってください。失礼しました」




-----------




ガチャッ




「・・・・・っ」


イオスさんが部屋の扉を閉めた瞬間、頬に涙がつたった


(何で私がお父様の勝手でいつも振り回されなければならないの?)


お父様なんて嫌いよ・・・でも


「う・・・ひっくっ」


(関係のない人に八つ当たりをして、お父様に何もいえない自分の方がもっと嫌いだ・・・)


メアリーはベッドの上にあるクッションに顔を埋めると、声を押し殺して泣いた



その時の私は、決められた運命に逆らうことも出来ず、いつもこうして泣いてばかりだった・・・


クローゼットの中にいる人の存在すら忘れ、私はひたすら泣き続けた










カノンです。

いまだ(主人公)の名前が出てきません・・・

次の話で名前が明らかになります。

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