第2話 つかの間の休息
ザザーンッ
「あれ、テッドじゃん!こんな夜中にひとりで散歩?」
「ヒナ…か」
夜中の12時
ひとり淋しく岩辺で佇むテッドを見かけたヒナは、首を傾げると
「散歩…ではなさそうだね、背中から哀愁が漂ってるし、何かあった?」と言ってテッドの隣にちょこんと座った
「ああ、ちょっといろいろあってな…話すと少し長くなるんだが」
「うんうん」
テッドはライタから部屋を追い出された過程をヒナに話すと
「成る程…それでライタという人に部屋を追い出された訳だ」と言って苦笑された
「笑い事じゃねーよ!」
テッドは苦笑するヒナを見て、勢いよく立ち上がると拳を握りしめて、クワッと瞳孔を開かせた
「それでよ、あれから時間が経ったから部屋へ戻ったんだ!そしたら……」
「そしたら?」
何故かワクワクした様子でヒナは次の言葉を待つと、テッドは顔に青筋を立てて呟いた
「鍵が閉められてたんだよ!しかも、運悪く部屋に鍵を忘れちまうしよ………俺に帰ってくるなとでもいいたいのか!!あいつら!?」
「あちゃあ……」
その言葉を聞いて、流石に同情したヒナはテッドの肩をポンと叩くと「お互い大変だね」と言って立ち上がった
「もう少しテッドの話を聞きたい所だけど、これから用事があるからそろそろ行かなきゃ!でも最後にいいこと教えてあげる」
(いいことって何だ?)
テッドは首を傾けると、ヒナは何故か得意げな顔をしてニヤリと笑う
「方向音痴のテッドでもわかる所だから安心してね!あの階段を10段程登った後、上を見てみ?いいものが見つかるから♪」
「いいもの……?」
テッドは「そこに何があるんだよ」呟き、再びヒナの方を見た瞬間だった……
「あれ?あいつ、どこに消えて……」
テッドはまわりを見渡すがヒナの姿はどこにもなく、ただ静かに波の音が聞こえているだけだった
「本当、変な奴……海で溺れていたわ、突然いなくなるわ、俺が方向音痴なのを知っているわ……………って!?何であいつ、そんなこと知ってるんだ!?」
『方向音痴のテッドでもわかる所だから安心してね!あの階段を10段程登った後、上を見てみ?いいものが見つかるから♪』
先程ヒナに言われた言葉を思い出し、テッドは顔を青くするが
階段を10段上がった話が気になり、テッドはその場所へ向かうと小さく悪態をついた
「…ったく、あいつは何者なんだ!?前回は助けて貰ったりつい愚痴をこぼしてしまったとはいえ、かなり怪しいしよ…信用してもいいのか?」
初めはヒナに対しては警戒心がなく、ただの少女なのかと思っていた
しかし………
「あの壁破壊といい、瞬時に姿をくらますといい……ただものではないことは確かだよな……」
テッドは「うーん」と小さく唸ると、階段を上がり始めた
「ま、悪い奴ではなさそうだし信用してもいっか!たしか10段目だったよな」
テッドは階段を上がり、10段目にさしかかった所でヒナの言うと通り上を見上げると「なるほど、こういう訳か」と呟く
「たしかにこれはいい・・・この場所なら人からも見つかりにくいし、野宿には持ってこいの場所だな」
テッドはひょいっと素早く木の上に登ると、おそらく人口的に造られたのだろう、人が1人寝ころべる程のスペースがある木で出来た家・・・いや、秘密基地のような隠れ家があり、ほっと息をつく
「あいつ(ヒナ)が造ったのか?それにしてもよくできてんな、俺にはちと狭いがこれなら安心して野宿ができる」
「今度あったら礼をいわなきゃな」とテッドは呟くと、ごろんと横になり
穏やかな海の音をききながら、静かに目を閉じた
第2話 【つかの間の休息】
【ガンジス村宿】
「イオス隊長、昨晩は何処へ行かれてたのですか?皆あなたのこと捜していましたよ」
グランに迎えいれられイオスはガンジス村の宿の中へ入ると、自分の荷物をドサリと置く
「いくら隊長が強いとはいえ、最近は物騒ですよ!出かけるなら一言かけて下さい」
「すまない、心配をかけたな…」
イオスはそういって懐から地図を取り出すと、たんたんと言う
「メアリー様の捜索の為、一晩中ここらを探索したものの姿はおろか気配すら感じられなかった」
「隊長、仕事で出かけてたのですか!?」
「相変わらず仕事熱心ですね」というグランの声を聞き流し、イオスは話を続ける
「おそらくメアリー様はウンディーネという街で滞在をされている、ここから近い街といえばそこしか心辺りがない」
「なるほど……」
グランは地図を広げるイオスの手を見て「ん?」と目を凝らした
グランが地図から目をはなしたのに気づき、イオスは「何だ?」と問いかける
「イオス隊長!それは!?」
「?」
イオスはグランの視線が自分の手に注がれていることに気づき「ああ、これか」と呟くと
何事もないように再び地図に視線をおとす
「馴れない道の探索だったからな、途中木などで切ったのだろう」
「切ったのだろうって…掌から血が出てますよ!手当をしますので、じっとしていて下さい!!」
救急箱を開け、手際よく手に包帯を巻くグランを眺めながらイオスは「大袈裟だ」と呟く
「そういえば!」
包帯を巻き終える頃に、グランは思い出したように呟くとイオスは「何だ?」と言う
「実は隊長と入れ違いにフウヤが帰ってきたのですけど【隊長に報告がある】と言って出ていきましたよ、おそらくここで待っていれば彼も戻ってくるでしょう」
「そうか…そういえば無線でも大事な報告があると言ってたな」
イオスはフウヤに連絡する為懐から無線を取り出すと、グランに向かって言い放つ
「フウヤが戻ってきて次第、ウンディーネに出発する! それまでここで待機をしてもらう」
「わかりました!それでは私が他の隊員にも伝えてきます、隊長は休んでいて下さい」
そういって、部屋から出ていくグランを見てイオスはため息をはくと
「…心配しすぎだ」と呟いた
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【その頃、ウンディーネでは】
「ったく、お前たちが鍵を閉めだしたせいで昨日は野宿だったんだぜ・・・何か他に言う事があるだろ」
「ごめんなさい、テッド鍵を持ってると思ってたから・・・それに外は物騒だし」
結局あの場所で野宿をしたテッドは、ジンジンと傷む背中を手で抑えながらジロリとライタを睨んだ
「お前も俺に何か言うことあるだろ!ふて腐れてないでメアリーみたいに素直に誤ったらどうなんだ!?」
その言葉にライタはぴくりと目元をひくつかせると、テッドのもとへと歩いてきた
「悪かったよ、だがお前にも非はあっただろ……鍵を持たずに出歩くか?普通」
「だからお前に追い出されたから鍵を持つ暇もなかったんじゃねーか!?開きなおってんじゃねーぞ、クソガキッ!!」
テッドはその場で立ち上がり突然上の服を脱ぎ出すと、メアリーは顔を赤くして「きゃあ!?」と叫んだ
「お前、メアリーの前で何をやってるんだよ!?」
突然のテッドの行動にライタとメアリーは目を見開くと、テッドは青くなった背中を指をさして言った
「昨日木の上で寝ててから落ちたんだよ!見てみろ、この痛々しい背中を!!」
「木から落ちた?何でまた……」
ライタは意味がわからんと首を傾げるのとは対象に、メアリーは顔を青くすると
「大変!?青くなってるわ!!すぐに手当を…いや、病院に連絡しないと!」と叫び、慌てて部屋の電話に手をかける
「ストーップ!電話しなくていいから、つかお前大袈裟すぎ!?んなもんほっとけば治るし……」
電源に手をかけるメアリーを阻止しようとテッドはメアリーの手首を掴む
「離しなさい!?ライタ、何が何でもテッド病院へ連れていくわよ、早く彼を取り押さえて!!」
「マジかよ!?」
テッドはその言葉を聞いて、顔に青筋を浮かべると
「くそ、病院に連れていかれてたまるか!?」と叫び、窓から飛び降りる
「あ、逃げた!?」
「あいつ、上半身裸で外に出やがったぞ!?」
メアリーとライタはテッドの行動にあぜんとしていたが、いち早く正気に戻ったライタがぽつりと呟く
「あ、そういやここ3階……」
ガッシャーーーーン
「ぎゃああああッ!!」
「うわあああああッ!?」
ライタがそう言ったとどうじにテッドと誰かの悲鳴が聞こえメアリーは慌てて窓から身を乗り出すと、窓の外で起こった光景にメアリーはギョッとする!
「ちょっと、ライタ!大変よ!?」
「そりゃ3階から飛び降りたら大変なことになるだろうよ」
「そうじゃなくて!」
メアリーに腕を引っ張られライタもしぶしぶ外を見ると、その光景にライタもギョッとして思わず窓から身を乗り出して叫んだ
「あんの馬鹿!!何をやって・・・おい、今すぐ下へ降りるぞ!!」
「う、うん!!」
メアリーは顔を青くしながら返事をすると、すぐに走り去っていくライタの後を追いかけた
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「本当にすみませんでした!!ほら、テッドも謝りなさい!!」
メアリーは目の前の金色の髪の毛を鷲掴みにして無理やり頭を下げさすと
テッドは「痛い痛い、ちょ・・・抜ける抜ける!マジで禿げるって!?ライタくん、助けて~!!」と叫び、ライタに助けを求める
「さっき、俺にクソガキといったくせに調子いいぜ・・・・人様に迷惑をかけたんだ、しばらく反省してろ」
「そんな冷たいこといわずに助けてくれよ!こいつ、お前の幼馴染だろ!?」
ぎゃーぎゃーとテッドとライタが揉めている中、テッドの髪を掴みながら頭を下げるメアリーを見てジークは
「確かに驚きましたが、怪我もないですし大丈夫ですよ!そろそろ許してあげたらどうですか」
と言って苦笑した
「本当に悪かったな!怪我がなくてよかったが、運んでたグラスを台無しにしてしまっただろ」
ようやく解放されたテッドはちらりと粉々になったグラスを見ると、ライタはため息をはく
「まったくだ、弁償ものだぜこりゃ・・・」
その言葉を聞き、ジークはいち早く反応すると「とんでもない!?」とでもいうように手を横に振った
「そんな、これは私の不注意でもあって・・・!?それに怪我を負わせたのは私の方です!ほら、背中も真っ青ではありませんか!?」
「それはもともとだ・・・」といってライタはため息をはくが、確かに落ちた時にまた打ったのか、更に背中が青く腫れあがっていて、メアリーの顔がみるみるうちに青くなる
「大変!悪化してるわ!大丈夫!?テッド!!」
「・・・お前、今更かよ!?痛ッ、触るな!?」
メアリーが右腕を触った瞬間、テッドの顔が歪んだのを見て
ライタはテッドの右腕をつかむと
「痛ってえええええええええええええ!?」と、近所迷惑になる程の悲鳴が響き渡る
「やっぱり折れてやがる・・・3階から飛び降りたんだ、当然だな」
「痛ぇな、何しやがるクソガキ!?」
テッドは恨みがましい目でライタを睨むと、ジークも「どれどれ」と言ってテッドの腕に触る
「いッ・・・・!?」
軽く触れられただけでも腕に激痛が走り、テッドは冷や汗をかくと
ジークは「成るほど・・・」といって納得したように呟く
「3階から飛び降りてこの程度の怪我ですむだなんて、すごいですね・・・・これなら完治とまでは無理ですが、一時的に痛みを取ることはできます!おこがましい話かもしれませんが私にも手伝わせて下さい!」
「一時的にって・・・できるのかよ」
疑わしい目でジークを見るライタに対し、ジークはにこりと笑いかけると
再びテッドの腕に触れた
「・・・・・ッ」
痛さで顔を歪めるテッドにジークが「すみません」と謝ると、もう片方の自分の手をテッドの負傷した手にかざし
何かを唱え出した
「おい、メアリー」
「何?」
メアリーは、ジークの行動を見て首を傾げていると
ライタに耳打ちされる
「あいつ、本当に信用できるのか?テッドを任せて大丈夫なのかよ・・・」
何故だか異様にジークを警戒するような発言に、メアリーはため息をはく
「ライタ・・・人見知りなのはわかるけど、いくらなんでもそれは失礼なんじゃないの?」
注意をされ、ライタは「うっ」っと声をあげると
メアリーは困ったように笑うとライタに言った
「でも、テッドを心配してそう言ってくれたんだよね・・・大丈夫、ジークさんは悪い人じゃないわ!だからそんなに構えなくても大丈夫よ」
「はあ!?俺は別に、テッドのことなんか・・・」
少し顔を赤くして反論するライタを見て、メアリーはくすりと笑うと
再びテッドとジークに目を写す
「あ、テッドの顔色が!それに背中の腫れも少し引いて・・・」
ジークはテッドの腕から手を離すと
テッドは「おおッ」と歓声をあげて、負傷した腕や背中をぺたぺたと触ってみる
「お前すげーな、治癒術が使えるのかよ!?」
「はい、ですがやはり完治とまではいきませんでした・・・すみません」
悔しそうに謝るジークにテッドは「いや、たいしたもんだ」と笑いかける
「何を謝る必要があるんだよ、痛みを取って貰えただけでも十分だ!ありがとな、ジーク!」
「いえ、お礼を言われるようなことは・・・」と言って頬を掻くジークの前にメアリーとライタも立ち、それぞれお礼の言葉を言うと
ジークは顔を赤くしてごほんと咳払いをした
「ただ、痛みを取っただけなので安静にしていて下さいね!私はここを清掃する準備を致しますので、失礼します!」
「あ・・・・・」
すたすたと逃げるようにして去っていくジークを見て、メアリーは残念そうな声をあげると
テッドはにやりと笑ってメアリーに耳打ちをした
「残念そうな顔をしやがって、お前ってわかりやすいんだな」
「はああああ!?」
メアリーが素っ頓狂な声をあげるのを聞き、テッドはおかしそうにくくっと笑うと
今度はちらりとライタを見た
「そういやお前さ、すげージークに対して警戒してたよな」
「別に・・・・」
ライタはぶっきらぼうに返事を返すと、未だに顔を赤くして一人ぶつぶつ言うメアリーをちらりと見る
「あいつが信用してるんだ!それにあんたの怪我を治したりするくらいだ、だから悪い奴ではないんだろ」
「ははーん、成るほどー♪」
テッドはライタの肩に腕を回すと、メアリーには聞こえないくらいの声でぼそりと言った
「お前さ、前から思ってたんだけどよ・・・・メアリーのこと好きだろ?」
「なッ!な、な、何を言って///////!?」
明らかに動揺するライタを見て、テッドは新しいおもちゃを見つけたように、にやりと悪そうな顔をして笑うと「ビンゴ!!」と呟いた
「テメー、何がビンゴだ・・・」
ギロリとライタに至近距離で睨まれ、テッドは「顔怖ッ」というと、がしがしとライタの頭をなでる
「前から気になってたんだよなー!お前メアリーに対して【だけ】は優しいし、ただの幼馴染がこんな危険な旅に文句も言わずについてこねーだろ♪」
「ぐ・・・」
核心に触れられ、ライタは冷や汗を流すと
テッドはとどめの一発をお見舞いする
「それによ、お前あの時言ってただろ?(ライタの声真似をしながら)⇒【言っただろ…俺はお前の味方だって!どっちを取っても怒ったりしねーよ】てよ!やっさし~、普通気のない女にそんなこと言わな・・・・・ぐほおッ!?」
「言うな!!」
ライタは至近距離にあったテッドの顔面に頭突きを喰らわせると
鼻血をたらしながらテッドは起き上がり、すぐさまライタに抗議をする
「痛ぇな!俺のビューティフルフェイスに何てことをするんだ!?」
鼻血をぼたぼたと垂らしながら瞳孔を開かせて詰め寄ってくるテッドに
ライタはため息をはくと、白けた顔をしてテッドを見た
「お前さ、自分でそんなこと言ってむなしくな・・・」
「だまれ小僧」
ライタの言葉を遮りテッドは低い声で言うと
さすがに自分の世界に入っていたメアリーも2人の異変に気付き、ハッとする
「ちょ、何でそんなに険悪な雰囲気になってるのよ!?それにテッド、何で鼻血を垂らしているの!?」
突然間に入ってきたメアリーに、テッドはぎょっとしつつも「おう、聞いてくれよ!」と言って、メアリーの肩をがしっと掴む
「ライタのやつ、いきなり俺の顔面に頭突きをしたんだぜ!ひでーよな、お前からも何か言って・・・」
「テメー・・・もう一発喰らわせてやろうか!ちょうど頭も太陽で焼けて温まってきたところだぜ・・・・・」
「わ、悪い!そんな怒んなって・・・今のはジョークだってジョーク!!」
テッドは頭突きをされないよう、ライタの頭をがしっと掴むと
ライタはムキになって自分の頭からテッドの手を離そうとする
「くそっ!はなせ、テッド!?」
「はん、やなこった!お前なんてこうしてくれるわ!!」
「ぎゃーーッ!?上半身裸で抱きついてくんな、暑苦しい!そして気持ち悪い!メアリー、この馬鹿をどうにかしてくれッ!?」
顔を赤くして、ライタはテッドの腕から逃れようともがくライタを見て
メアリーはあぜんとしていたが、ふとライタに違和感を感じメアリーは「あれ・・・」と呟く
(ライタ初めて出会った時とは違って、テッドを見る目に敵対心がない・・・)
ライタのテッドに対する態度ははじめと全く変わってないし、はたから見れば中が悪そうに見えるけど・・・
「なるほど、そういうことか」
メアリーは、テッドから逃げ回るライタを見てくすりと笑うと
「あーあ、心配して損した」と呟いた
確かにさっきはまた険悪な雰囲気で心配したけど
なんだかんだ言ってテッドはライタが怪我した時は薬を買いにいってたし
ライタもライタでさっきテッドの事を心配してたし・・・(本人は否定してたけど)
初めはどうなるかと思ってたけど、結局私よりテッドに懐いてるじゃない
2人のやり取りを見て、メアリーは「くすくす」笑っていると
テッドは「何笑ってんだよ」と言ってメアリーを睨んだ
「何でもないわ」
「全く・・・」
テッドはふう・・・と息をはき「とりあえず暑いし、ホテルに戻るか」と言うと、賛成したメアリーは何故かノリノリで2人の前を歩きだす
「どうしたんだ、あいつ?」
ライタの問いに
「さあ、暑さにやられたんじゃねーの?」とテッドがいうと、ライタは無言でテッドの横腹に攻撃をしかける
「痛ッ、お前怪我人に・・・」
「なあテッド、さっきの話の続きだけどよ」
「おい、俺の話は無視かよ!?」
テッドはライタにくってかかろうとするが、あまりにも今の状況とは似つかない程
真剣な表情をするライタを見て「なるほどな・・・」といって苦笑する
「大丈夫、お前がメアリーを好きって話誰にも言わねーよ!本人も気づいてねーみたいだしな」
「ああ、頼む!秘密にして・・・・ってち、違うッ////その話じゃねーよ!」
ライタはごほんと気を取り直すように咳払いをすると、ひそっとテッドに耳打ちをする
「さっき、あんたの怪我を治した男・・・確かジークつったけな」
「ああ、そうだけど・・・ジークがどうかしたのか?」
テッドは首を傾げると、ライタは更に小さな声でテッドに言った
「確かにあいつは感じがよくて、あんたの怪我を治すくらいだ・・・お前達の言う通り悪い奴ではないのかもしれない・・・だが俺は」
「なるほどな、メアリーの言う人見知りスキルが発動した訳だ」
テッドは、ライタの頭をがしっと掴むと
わしゃわしゃと頭を撫でた
「それにメアリーのやつ、ジークに懐いちまってるもんな!そりゃ惚れてる女に近づいてくる男を好きになれっていうのは無理な話だ」
「・・・・・」
テッドは黙りこくるライタを見て苦笑すると
苦笑をしながら言った
「それに、初めからお前ジークのこと苦手ぽかったしな!人それぞれ会う会わないがあるんだし、仕方ねーよ!!」
「いや、俺は・・・」
「ちょっと、何2人で喋ってるの?早く鍵あけてよ!!」
ライタが何かを話そうとした瞬間、メアリーに声をかけられ
テッドは「悪い」と言うと、ライタのポケットから鍵を抜き取りメアリーと共に部屋へ入る
「ライタ、入らないのか?早くしねーとお前の分まで飲むぞ?」
ひょこっとドアから顔を出すテッドを見て、ライタは苦笑すると
「別にいい、少しホテルを散歩しにいってくるわ俺」
といってその場から去っていってしまった
「ちょっと、怪我だって治ってないのに一人で何処に!?それにまた、前みたいに絡まれたらどうす・・・・・あれ、いない」
メアリーはきょろきょろと辺りを見回すが、ライタの姿は何処にもなく
左右に廊下のみが続いており、メアリーはため息をはいた
「ま、あいつの場合顔が怖いから、絡まれる前に相手も逃げ出すだろ!それにこの前ライタをぼこった犯人も掴まったいてーだし、大丈夫だろ」
予告した通り、ライタの分のお茶を飲むテッドをメアリーは呆れたように見ると
「もう、2人ともしょうがないんだから!何かあってからでは遅いんだからね」
と言って、テッドからライタのお茶を引きはがした
「ライタの分、取っておきなさいよ!!」
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【その頃】
「ここなら少し頭を冷やせそうだな」
ライタは海岸にある岩の上に座るとため息をはく
「確かにテッドの言う通り、ジークって奴が気に食わないってのもある」
だが・・・・
「何故だかわからねえ、あいつから違和感が感じる・・・」
ライタはジークの笑った顔を思い出すとぞっと背筋が凍りつく
「でも多分、俺の気のせいだよな・・・昔からよく警戒心が強いッてメアリーに言われるし、いつもの悪い病気だ!」
ライタは誰にも聞こえない声で自分に言い聞かせるようにそう呟いたあと
ぐっと自分の拳を握り絞めた
主人公の扱いが酷い件・・・