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明日へと続く物語  作者: カノン
第四章 忍び寄る魔の手
16/23

第1話 忍びよる魔の手

「あ、やっと来た!ここまで一本道のはずなのに随分と遅かったね、途中で何かあったの?」



「えっと………」




途中で自分のいる場所が分からなくなって迷ってました……



テッドはその言葉を飲み込み、咳ばらいをすると




「ああ、ちょっとな」



と言った



とりあえず鼻の方はいい為、テッドにとって海へ辿り着くのはたやすい事だった


しかしあまりにも海辺が広く、メアリー達の居場所が分からなかった上に

ヒナが陰の多い岩の所で待機をしていた為、姿が見えなくて今まで必死に探していた結果


今の状況に陥っていた




「詳しいことは帰ってからこの子に聞くといいよ、でも少し疲れてるみたいだからしばらく寝かせといてあげて」



「あ、ああ…」



テッドはヒナからメアリーを受け取ると、少し顔を引き攣らせながら「なぁ、ヒナ」と呼んだ



「ん、何?」



「その、メアリーから何か聞いたか?」



予定が狂い、俺より先にヒナがメアリーを見つけてしまった


もしかすると、迷子になったのがメアリーではなく俺だったということがバレてるかもしれねぇ…もしそうなら非常にまずい!




テッドは先程の壁の状態を思い出し、青くなっていると

そんな彼の様子を不思議に思ったヒナは首を傾げる



「特に何も……何か聞かれちゃまずいことでもあるの?」



「い、いや…別に、何でもねーよ!ただ聞いてみただけだ」




よし、この様子ならバレてねーみたいだ!


テッドは心の中でホッとため息をつくと、ヒナはあきれたように苦笑をする



「心配しなくても、今日はバタバタしててあまりメアリーと話す時間はなかったし、聞いたらまずそうな話は何も聞いていないよ!それじゃ、探し人が見つかった訳だから私はこれで失礼するね」


そう言ってヒナは、「よいしょ」といいながら立ち上がると、思い出したかのように「あ!」と声をあげた



「そういや、もうひとり連れがいるんだっけ?確かその人さっきあそこの病院に運ばれていったよ!ホテルに戻ってもいなかったら多分そこにいるんじゃないかな」




「あ、あぁ…いろいろとサンキューな、ヒナ」



ヒナはどう致しましてとでもいうように、背中を向けながらひらひらと手を振ると、去り際に何かを呟いた







「もうメアリーを置いて迷子になっちゃ駄目だよ……」




「ん?何かいったか?」


「ううん、何も言ってないよ!じゃあねテッド」




ヒナはそういって最後ににこりと笑顔を見せると、再び商店街の通りへと消えていった










第4話 【忍びよる魔の手】








「くそ、誰だか知らねーが警察を呼びやがって……今回は上手く逃げられたものの捕まったらまた豚箱行きじゃねーか」



先程、海辺でライタともめていたガタイのでかい男はチッと舌打ちをすると


糸目の男は顔を青くしてガタイのでかい男に詰めよった



「あんたたちはまだマシだよ!俺なんて警察よりおっかない奴にあったんだぜ!?」



あぁ恐ろしい!とぶつぶつ言う糸目の男を見たガタイのでかい男は「ふん」と鼻で笑う



「どうせ【ヒナ】だろ?あんな小娘一人にびびってんじゃねーよ」





「あんたはヒナの恐ろしさを知らねーからそんな風に言えるんだ!あいつはあんな姿をしているが、中身はとんでもねー【化け物】だぜ!?さっきも危うく殺されかけたんだよ!!」



怯えた顔をして訴える糸目の男を見て、ガタイのでかい男はあきれたように糸目の男を見ると



「そんなに恐いならその化け物退治すりゃいいじゃねーか」と呟いた





「それが出来るならとっくにそうしてるさ!だがあの女、刃物を目の前にしても顔色ひとつ変えないんだぜ、そんなやつをどうやって…………」



「おい、確かお前の話ではメアリーとかいう女、ヒナの知り合いとかどうとか言ってたよな」




二人の話を静かに聞いていた三人のうち一番小柄な男は糸目の男の言葉を遮るようにして会話に入ってくると


ニヤリと口の端を歪ませてた



「そいつ、お前の見た感じヒナと親しそうだったか?」



糸目の男は先程の状況を思いだそうと頭を捻ると、一瞬の間だったがヒナがメアリーに向ける視線はとても穏やかで


刃物をちらつかせても顔色ひとつ変えなかった少女とは思えない程の優しい笑顔を向けていた事を思い出す



「知るか!そんなこと!!だが……」



「だが?」



糸目の男はその笑顔を思いだし、顔を青くさせると気味の悪そうに言う



「あいつ、メアリーとかいうガキを見る時の視線だけは穏やかだったような気がするぜ……あの化け物があんな表情をするなんてな、初めて見たぜ」







「なるほどな……」



その言葉を聞き小柄な男はいやらしく笑うと、ガタイのでかい男は何かを思いついたような顔をして、ニヤリと笑った




「それなら話は早いじゃねーか、思ったよりも簡単にあれを始末出来るかもしれないぜ」


「どういう意味だ?」



首をかしげる糸目の男に小柄な男はため息をはくと「察しろよ」と言う



「あのメアリーとかいうガキを使ってヒナをおびき出すんだよ、いくら化け物といえど人数集めて束になってかかりゃいけんじゃねーの?」




「それで、危なった時はガキを人質にすりゃ、あいつも手出しは出来んだろ!」





「ああ、成る程!!でもそれはかなりまずいんじゃないのか?このことがばれたら俺達殺されてしまうんじゃ………」



細目の男は先程威抜かれたヒナの冷たい瞳を思いだし、身震いをすると

ガタイのでかい男は馬鹿にしたように笑う



「ばれる前にメアリーとかいうガキを拉致ればいい話じゃねーか、なーに大丈夫だ!彼氏は顔が恐いだけがとりえのガキみたいだし、その位簡単に……」










「へぇ、なかなか面白そうな話をしているね…私もまぜてよ」









「っ…誰だ!?」







ガタイのデカイ男が得意気に話終える前に

頭上から身体が底冷えするような静かな声が聞こえ、三人は慌てて上を見上げると


そこにはにこにこしながら屋根の上で胡座をかいて座っているヒナの姿があった






「ひ、ヒナっ!?」



いつからそこに!?


糸目の男が言う前にヒナはストンと地へ着地すると、挑戦的な笑みを浮かべながらゆっくりと三人に近づいてきた




「随分と物騒な事を話してたみたいだけど、もう少し声を抑えて話さないと誰かに聞かれちゃうよ?」




(例えば私とかに・・・ね?)とヒナはぼそりと呟き細目の男をちらり見ると、男はびくっと肩を震わしてヒナから目を逸らした




「おい、この娘が化け物と噂されてるヒナかよ!?」


ガタイのデカイ男は、ヒナと呼ばれた少女を見て驚いたように目を見開くと、小柄な男も同じようにあぜんとした顔で目の前の少女を見た




「全然想像してたのとは違うじゃねーか、こんなガキのどこが化け物だっていうんだよ!」






「よせ、むやみに近づかない方がいい!ぶっ殺されるぞ!!」




ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、ヒナに近づこうとするガタイのデカイ男を細目の男が制止した瞬間



ヒナは苦笑したように笑う



「ぶっ殺されるだなんて人ぎきの悪い!化け物といえどちゃんと心がある訳なんだし、いくら私でもその言い草は傷つくなぁ……」


眉をしゅんと下げてしょんぼりするような仕種のヒナを見て小柄な男は鼻で笑うと、挑発するような言葉を言い放つ  



                

「ふ、ふん、白々しい…俺ににはお前が傷ついているようには見えないんだがな……それよりさっきの話、聞いてたんだろ?」







その言葉を聞いてヒナの笑顔が更に深くなったとどうじに、細目の男の顔はみるみるうちに青くなっていく




「い、いつから聞いていたんだ!?」






「んー、化け物の顔がどうのとかいってる辺り・・・かな?」





ゾクッ・・・




そういってにこりと微笑むヒナを見て

細目の男だけでなくさっきまで馬鹿にしていたように笑っていた2人も、少女の宿す氷のような凍てつく瞳に思わず悪寒が走る






目が笑っていない・・・







本能的にこいつはやばいと察知をした2人はさっきまでの余裕の笑みが消え、冷や汗をかくと


ヒナは後ずさる3人の元へゆっくりと近づき、糸目の男を見て静かに言った










「ねぇ、さっきメアリーに2度と近づくなっていったよね・・・もう一度忠告をしないと駄目かなぁ?」







「ひぃいっ!?」




ぴりぴりと痛いほどの空気や威圧に糸目の男はたえられなくなると、冷や汗をかきながら乾いた口で言った



「お、俺は関係ないからな!メアリーって子に、ちょっかいをかけようといったのも、今の話だって二人が勝手に始めたんだ!!」



糸目の男は悲鳴に近い声でそう言った後、大きく息を吸い込むと



「人を勝手に巻き込まないでくれ!お前らだけで勝手にやってろ!?」





と言い放ち、その場から立ち去ろうと走り出した


「おい、待てよ!自分だけ逃げるつもりかよ!?」



ガタイのデカイ男はひとりで逃げ出す糸目を見て、驚いたように目を見開くと


ヒナは「やれやれ」といわんばかりに首を横に振り呪文のような言葉を呟いた









「糸目のお兄さん、どこへ行くの?」










「ひッ……」


逃げようとした瞬間、後ろからヒナの声が聞こえ糸目の男が肩を震わせる


すると足元から冷気が漂ってきたかと思えば、パキパキという音と共に自分の足が鉛のように動かなくなってしまった






「な、何だ!?」



糸目の男は咄嗟に自分の足元を見ると、そこら一面に氷が張りつめていて


靴の周りに氷が張りついていた




(くそ、化け物め!妙な技を!んなもん靴さえ脱げば!!)





糸目の男が靴を脱ぎ捨てようとかかとを上げた瞬間、ヒナは「あ!」と声を出すと、少し困った顔で言った



「そうそう、この氷ね、触れたものを引っ付ける作用があるから素足で踏んだら皮膚に張りついて危ないよ?」



その言葉を聞いて男は冷や汗をあくと、慌てて足を靴の中へと納めた

その様子を見たヒナは、今の状況には似つかない程の笑顔で更に恐ろしいことを言い放つ




「うん!剥がす時皮膚が裂けてかなり痛いし、大人しくしてた方がいいと思う!」



にこりと笑って物騒な事をいうヒナに、糸目の男は身震いすると

小さな声で「能力者【化け物】め…」と呟く






「化け物・・・・か」


ヒナは自分の掌をじっと見つめると「確かにそうかもしれないね」と苦笑する




「ひ、ひいいいいいいいいいいッ!」

「だ、誰か助けてくれ!!化け物に殺される!?」



その様子を見ていた2人の男も、目の前の少女に恐怖を感じ逃げようとすると

ヒナは眉をへの字に下げる




「ひどいなあ・・・こんな物騒な通りに女子供をひとり残して去っていくなんて」





「ッ!?」




一瞬横に冷たい風が走ったと思えば、後ろにいたはずの少女が目の前に立っていて2人はあぜんとすると、ヒナはにこりと笑ってこう言い放った










「これが最後のちゅうこくだから、耳の穴をかっぽじってよーく胸に叩き込むんだよ?

今回は傷害罪と暴行罪での警察おくりで勘弁してあげるけど、今度メアリーに危害を加えようなら、警察があんた達を裁く前に・・・・・・・・・・・・・・・・・・私が、てめーらを殺しにいくからな」






「ひいいいいいいッ!?」






暗い路地裏に男の叫び声が聞こえ、何事かと警察が駆けつけた時には

よほど恐ろしいものを見たのか、顔面蒼白にして気絶をしている3人の男の姿があったというらしい・・・













−−−−−−−





【次の朝】








「なぁ、知ってるか?昨日のニュース」



「ああ、あの有名な三人組とうとう捕まったらしいぜ」



「マジで!?まぁいつかは捕まるとは思ってたんだけどな…」








ライタの傷薬を買う為にメアリーはテッドと共に商店街を歩いていると、通りすがりに妙な噂を耳にして、隣にいるテッドのマフラーを引っ張った




「ねぇ、さっきから街の人達は何を話しているのかな?」



メアリーの問いにテッドは頭を捻ると、ぶっきらぼうに「さぁ?」と言う





三人組と聞いた瞬間、メアリーの頭の中に昨日自分達を襲った男達の顔が浮かぶが、おそらく街中が噂になる程の人物ならナンパ連中ではなく凶悪犯か何かだろう



「観光地といっても、意外に物騒なのね……」




メアリーが街の様子を見渡して、そう呟いた時だった








「おや、偶然ですね!今日は黒髪の少年は一緒じゃないのですか?」




「?」



突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、2人は振り返ると

茶色い髪の愛想がよさそうな青年が立っていた




「あ!」



その青年を見てメアリーは声をあげるのに対し、テッドは首を傾げると



「誰だこいつ、知り合いか?」と呟く



「ちょっと、昨日お世話になった人じゃない!もう忘れたの!?」







「うーん・・・・・忘れた!」 





                      

きっぱりとそう言い放つテッドに、メアリーはぎょっとすると耳元でひそひそと言った



「忘れたのなら仕方ないけど…とにかく昨日お世話になった人なんだから、失礼な態度を取っちゃ駄目よ!」



「はいはい…」




全く面倒くさいな

美人の女将さんや可愛い仲居さんの顔を覚えるのはともかくとして、何で野郎しかもイケメンの顔なんて覚えなきゃならないんだ!? 



テッドはそう思ったが、それを口に出すとめんどくさいことになることは目に見えている



(それに、世話になったならまず礼をするのが筋だしよ)




そう思いテッドは心中でため息をはくと、青年の顔をちらりとみた




「(うぉ!女みてーに顔が整ってやがるな、コイツ)あの、さっきは悪かった!昨日は世話になったのにあんないい方をしちまってよ!確か観光案内をしてくれたんだよな?あの時は本当に助かっ……」






バシンッ





「違うわよ!テッドの馬鹿っ!!」



メアリーに肩を叩かれ、テッドは「痛ッ」と小さく悲鳴をあげると

「何すんだ?痛ぇじゃねーか!」といってメアリーを横目で睨んだ





「何って…テッドがデタラメなことをいうからでしょ!?昨日ホテルの説明に来てくれた人じゃない!!本当に忘れてるのね!しかもそれを思い出したかのように知ったかをするなんて、何て人なの!?最低!!」


メアリーの言葉を聞きテッドはぴくりと顔を引き攣らせると、開き直ったように青年の顔をじっと見ながら叫んだ

                       

「うるせー!俺は男で特にイケメンの顔を覚えるのが苦手なんだよ、一般的に顔が整ってるやつらって皆ほぼ顔が同じようなものじゃねーか!!いちいち個人との区別なんてつくかッ!!」



自分に反省をするどころか開き直るテッドを見て、メアリーは「まあっ」とあきれたような声をあげると

可哀相な者を見るような目をしてテッドを見た



「テッド、もしかしてカッコイイ人に対して嫉妬してるの?もしそうならみっともないからやめた方がいいわ!大丈夫、人間は中身っていうでしょ?」




「あ、でもテッドは中身も捻くれてるわね…」とぶつくさいうメアリーの様子を、テッドは顔に青筋をたてるながら見下ろすと、どす黒いオーラを放つ




「お前…人が黙ってりゃ好き放題いいやがって、俺が嫉妬?笑わせてくれる!俺のつぶらな瞳と愛嬌のある顔つきに比べりゃ、イケメンなんてどうってことないぜ!それに、男前の顔は3日見りゃ飽きるというもんな!男はやっぱ誠実さと愛嬌だろ!!」




ふふんと鼻で笑うテッドを見て、メアリーはため息をはくと



「何が愛嬌と誠実さよ…テッドの場合、誠実さも愛嬌もないじゃない」



とあきれたように呟いた




「あ、あのー…」



すっかり話に取り残された青年は、遠慮がちに話しかけると


ハッとしたメアリーは慌てて青年の方を見る



「ご、ごめんなさい!話しかけて下さったのに……あなたは確かホテルの説明をしてくれた人ですよね?あの時はお世話になりました!」



「いえいえ、あれは仕事ですから…私こそ顔を覚えて下さった上に、改めてお礼まで頂けて光栄です」




にこりと綺麗な顔で微笑まれ、メアリーが顔を赤くした瞬間

テッドは「ふーん」と言って不敵に笑うと、軽くメアリーの背中を押した



「ッ!?」



何するのよ!



そう言ってメアリーが振り返ろうとすると、テッドは手をひらひらと振りながら含み笑いをしながら言った



「そういう事なら早く言えよ、俺そこの店で傷薬買ってくるわ」



「ちょ、ちょっと!」




メアリーは慌ててテッドの後を追いかけようとすると、青年に「あの…」と声をかけられ立ち止まる




「え……?」



声をかけられメアリーは振り返ると、青年はハッとした様子で

「いや、すみません…何でもないです!」と言って目を背けた






「(どうかしたのかしら…)?」







メアリーは彼の行動を不思議に思い、首を傾げていると青年は少し気まずそうに言う



「えっと・・・呼び止めた私がこんな事を言うのもなんですが、もうお連れの方は店の方へ向かわれたようですよ。行かれなくて大丈夫ですか?」



青年は向こうで買い物するテッドにちらりと視線を向けると申し訳なさそうな顔をする






「そうね………」





青年につられ、メアリーも振り返りテッドの方を見ると彼は店の人と話し込んでいて、しばらくはこちらへ戻ってこないだろうとメアリーは判断した






(この街の人達は私の事を知らない、だからリアンス家の長女として振る舞う必要もないし、ひょっとするとヒナちゃんの時のように仲良くなれるかもしれない!)






そう思い、メアリーは青年に話しかけようと顔を上げると、再び端正な顔で微笑まれ


思わず顔が赤くなってしまう




「だ、大丈夫です!テッドはあそこで店の人と話していますし!!あなたこそ、私と話をしていて大丈夫なんですか?何か用事があるから商店街にいるんじゃ…」



「それなら大丈夫です、今日は仕事は休みですし息抜きに散歩していただけですから」



その言葉を聞いてメアリーはほっとすると、青年は向こうで必死に値引きをするよう頼んでいるテッドを見ながら呟いた



「それにしても最近、薬を買う人が増えてきましたね…誰か怪我をなさったのですか?」



「えっと……」










メアリーは大体のいきさつを青年に話すと、納得したようにうなづくとどうじに、青年は心配そうな顔をして呟いた




「成るほど、昨日そんなことが…大変でしたね」




「ええ、あの時はヒナちゃんがいなければどうなっていたか……」




昨日のことを思い出し顔を青くするメアリーを見て、青年は優しく笑うと穏やかな声で言った






「でも安心して下さい、街の人達の噂はもう聞いたかもしれませんが昨日の夜にその三人は捕まりました」



「…………え?」




思いのよらない青年の言葉に、メアリーはぽかんとすると、先ほどの街の人達の噂を思い出す





(そうなんだ、あの人達捕まったのね…)



その言葉を聞いてほっとしているメアリーを見て、青年は更に話を続けた



「噂では、昨日現場へ向かった警察が見失うほど彼らの逃げ足は速かったそうです……しかし」



「………?」





メアリーは次に出る青年の言葉を待つと、青年は難しそうな顔をして口を開いた



「そんな彼らが昨日の晩、誰かに襲われたらしいんです。路地裏で男の声らしき悲鳴が続き、街の人の通報で警察が駆け付けた所、気絶をして倒れていたと聞きました」



「え…警察が捕まえたんじゃないのですか?」





警察が駆け付けた所、気絶をしていたって……

でもそのおかげであの三人は逮捕されたのだけど


一体誰がそんな事を……






すっかり考え込んでしまうメアリーを見て、青年は苦笑しながら


「あなた達が来る前からあの人達の行動は目に余っていました、だからいきさつが何にせよ、私はあの三人が捕まってよかったと思っていますよ。」と言った





(よかったのかな、これで)




青年の言葉を聞き、メアリーは少し納得が出来ない顔をして

「確かにそうですけど…」と呟いた瞬間、後ろから人の気配がしてメアリーはハッとした








「話はすんだか?」





いつの間に買い物をすませたのか、ポンと後ろから肩を叩かれ、振り返ると

両手に袋をぶら下げたテッドが立っていた



「う、うん!とりあえずひと段落…」



「そうか」



テッドはうなづくと、再び青年の方を見て苦笑した



「悪いな!メアリーを相手すんの疲れただろ」




「ちょっと!それどういう意味!?」



聞き捨てならないと、メアリーはテッドに食ってかかろうとした瞬間

青年は少し嬉しそうな顔をして、メアリーを見た



「成るほど、メアリーさんって言うのですね!今更ですがあなたの名前、知りたかったのですよ!!」



「ッ///」





あまりにも青年が素直に感情をあらわにするので、メアリーは恥ずかしくなって思わず下を向くが、青年は更に言葉を続けた





「それに、メアリーさんは全然面倒くさくなかったですよ!少しの間でしたが話せる機会があってよかったと思っています! 」



「おおっ!」



その言葉を聞き、テッドは感心したように声をあげると

肘でメアリーを突つきながらぼそりと呟いた



「ストレートな奴だな!こいつお前に好意があるっぽいぞ!よかったな、メアリー!!」



「何言ってるのよ!?別に彼はそんなこと・・・!!」





やりきれなくなったメアリーがてれ隠しにテッドのマフラーを引っ張ると

それを見た青年は苦笑する




「やはり仲がいいのですね」




メアリーは気づいてはいなかったが青年の瞳が一瞬伏せられると、それを見たテッドはめんどくさそうにため息をはくと



「あー、何を勘違いしてんのかは知らねーが・・・これを見てその言葉が言えるなんて、兄ちゃんスゲーわ」と呟いた




「おい、いいかげん離せ!苦しいだろ!?」



ようやくマフラーからメアリーを引きはがす事に成功したテッドは「ぜーぜー」と息をはくとくるりと2人に背を向けて言った





「それじゃあメアリー、少し名残惜しいかもしれないがライタが待ってる!そろそろ日もくれるし帰るぞ」



「わかったわ」



メアリーは青年にお辞儀をすると、お別れの言葉を言う




「ごめんなさい、ホテルに人を待たせているのでこれで失礼します。私もあなたとお話する機会があってよかったです!それでは…」




再びお辞儀をして、メアリーは先に歩くテッドを追いかけようとするが

自分は大事なことを聞き逃していることに気づき、ぴたりと立ち止まる




「あの……」



「何ですか?」



今更なのでかなり聞きに行くいが、彼もヒナちゃんの時のようにまた何か縁があるのかもしれない

そう思い、メアリーは振り返ると少し気まずそうな顔をして呟いた



「今更ですが、あなたの名前を教えて頂けませんか?」



「え、私の…ですか?」



こくん




とメアリーはうなづくと、青年は少し照れくさそうに口を開く




「確かに今更ですね…わかりました、私の名前はジークと申します。また機会があれば話をしましょうね、メアリーさん」






ジークさんって言うんだ!

凄く礼儀正しくて、優しそうで、しかもかっこいいし



テッドも少しはジークさんのことを見習って欲しいわ





メアリーは今までのテッドの素行を思い出し苦笑するとジークに笑顔を向けて言った


「はい、ジークさん!あの、幼なじみの傷が治るまでこの街にいる予定なのでまた見かけたら声をかけて下さいね!」



「わかりました、それではまた・・・一日でも早く幼馴染の彼が早く回復するようお祈りしています」




そういってジークさんと別れを告げた私は、先を歩くテッドの後を追いかけた






















あれから5分


メアリーはジークと別れをすまししばらく歩いていると、横からの視線が気になってメアリーはじろりとテッドを睨む



「何?」



「いや、何でも!ただジークには礼儀正しいんだなーって思ってよ」



「どういう意味?」




言葉の意味がわからずメアリーは首を傾げると、テッドは言葉を続ける



「態度や言葉使いの話だよ、お前ジークの前だと女の子らしいっつーか素直っていうか……とりあえず、いつもメアリーがああいう風になればなーって思っていただけだ」



「何ですって!?ということは、普段私のことをどういう風に見てるのよ!!遠回しに素直じゃないとでもいいたいの?」




ぷーっとフグのようにパンパンに頬を膨らませるメアリーを見て、テッドは「スゲー顔……」と言って苦笑する



「ま、お前がヒナやジークと仲良くなるのは勝手だが、リアンス家の話は禁句だということはわかってるよな?」



テッドの問いに、メアリーは下を向くと「わかってるわよ……」と呟いた


「それならいいんだが・・・・・」


テッドはちらりと後ろを振り返ると、ホテルにひとりまつライタの顔を思い浮かべ苦笑する



「さ、早く帰らねーと顔の怖い幼馴染の顔がさらに恐ろしくなるぞ!ま、何か言われたらメアリーのせいにするから別にいいんだけどな!!」




「な・・・・・!」


その言葉を聞いて、目を吊り上げるメアリーをテッドは面白そうに見下ろすと小さく笑った





「ちょっと、待ちなさいよ!」



後ろから必死に追いかけてくるメアリーを見てテッドは



「冗談が通じねー奴」と呟くと速足でホテルへ向かって歩いていった












-----------------------------------
















「よぉ、遅かったじゃねーか!」




ホテルへ戻ると、大分傷は回復したらしい

ライタが自分の力でベッドから起き上がるのを見て、テッドは苦笑すると


買ってきた薬をライタに向かって投げた




「悪い、ちとメアリーの知り合いにあったんだ。ほらよ、安物の薬や湿布で悪いな」




「サンキュー」



ライタは薬をキャッチすると、さっそくズボンの裾をめくり包帯を外す





「ッ!?」



よほど強く殴られたのか、ライタの脚は青く腫れ上がっていて

メアリーは思わず目を背けそうになるとどうじに、昨日の出来事が頭の中でフラッシュバックした




「ライタ……」



「何だ?」





「ごめんなさい、私のせいで………」




突然しおらしくなるメアリーを見てライタはギョッとすると



「何だよ突然!?」と言う





「だって………」






あの時私があの人達に突っ掛からなければ、ライタは喧嘩しなくてすんだのかもしれない……

それに自分が巻いた種なのに、助けを呼ぶとはいえ、私はライタを追いて逃げてしまった…………







何も言うことができず、下を向いてしまうメアリーを見てライタはため息をはくと、乱暴にメアリーの頭を撫でる



「…そんな顔すんな、確かにお前があいつらに喧嘩を売ったことには驚いたが、初めからやつらからは殺気が出ていた……どっちみちこうなることには変わりはねぇ」




「でも!!」



私はライタを追いて……




そう言おうとする前に、ライタはメアリーの言葉を遮って話を続ける




「またお前の悪い癖が出る前に言わせて貰うがよ……俺は嬉しかったぜ」





「………は?」



思いがけないライタの言葉に声をあげたのは、メアリーではなくてテッドの方だった





「お前、あれか?殴られたりいたぶられると喜ぶ類の………」



「うるせぇ!違ぇよ、お前空気読めねー奴だな!!今メアリーと会話してんだよ!入ってくんな、この方向音痴が!!」



方向音痴という言葉にテッドは大きく反応すると、ギロリとライタを睨みつける



「んだと?このクソガキ!お前こそ年上に向かってその口の聞き方は何だ!?俺は方向音痴じゃねーし、空気も読めるぞ!大人を見くびるなよ?」





先程の雰囲気とは打って変わって、部屋の中は二人の怒声で賑やかになり

メアリーはぽかんとしていると、今まさにテッドの胸倉を掴んでいたライタと目が合い、ドキリとする





「…おい、メアリー!違うからな、こいつのいうことを間に受けるなよ!?」



「う、うん……」




メアリーはライタの剣幕に思わず視線をそらすと、胸倉を捕まれたテッドはライタの腕をガシッと掴み、苦しげに言った




「おい、首しまってるって!ほんとマジ苦しい…つか服のびるから!!ライタ!そうなったら弁償して貰うからな!!あと、俺の威厳と名誉と心を深く傷つけた慰謝料もちゃんと含んでいつかまとめて…おい、聞いてるのか!?ちっとは返事をしたら・・・」









ぶちんッ









「ぶちん?」




ライタの頭から何かが切れる音がしてテッドは首を傾げると、ライタはクワっと瞳孔を開かせると、血走った目でテッドを睨みつけた








「だああああっ、ウゼーッ!そしてうるせぇえええ!!テメー!俺の神経を逆なでしてそんなに楽しいか!?」







とうとう堪忍袋の尾が切れたライタは、テッドのマフラーを掴んだまま出口へ向かって歩き出した




「え、ちょ……引きずるなって、マジ苦し・・・」



「うるせぇ!しばらく部屋から出てろ!!」








バタンッ







無理矢理テッドを部屋の外へ追い出しドアを閉めた後、ライタは長いため息をはくと、再びメアリーの方を見る




「……………」



そして短い沈黙が続いた後、ライタは頭をガシガシかくと「ったく」と呟く



「テッドの言うことは気にすんな、あいつの言う事はほとんどデタラメだ・・・」



「う、うん」



ライタの言葉にメアリーを小さくうなづくと「あの…」と言う



「何だ?」



「さっき、嬉しかったっていってたよね、あれはどういう意味?」



メアリーの問いに、ライタは「あー、あれか」と呟く



「お前は、自分があいつらに喧嘩を吹っかけたせいで俺がこうなったと思ってるだろ」



「うん……」



メアリーはうなづくと、ライタは眉間にシワを寄せる



「さっきもいったが、あいつらは初めから喧嘩を吹っかける気だった!お前が気にする必要はねぇ!!それに…」



「?」



メアリーは次に出るライタの言葉を待つ



「それに、あの時俺の悪口をかばってくれただろ!確かにそれが原因で喧嘩になったかもしれねーが、俺は嬉しかった」




「ライタ………」




メアリーはライタの言葉を聞いて、申し訳なさで下を向くと


頭をガシガシと撫でられ、涙が出そうになる




ライタは怒ると思ってた…


自分のせいでこんな目にあって、その上助けを呼ぶとはいえ私はあの場から立ち去った



「ごめんなさい、あの時立ち去ってしまって」



それなら怒られて罵倒された方がマシかもしれない

許して貰うことがこんなにもつらいことがあるなんて今まで知らなかった……




下を向いて、溢れでる涙を隠そうとするメアリーを見て、ライタは複雑そうな顔をすると

メアリーの顔を両手ではさみ、自分の方へ向かせた



「これでいいんだよ!」



「!?」



突然のライタの行動に、メアリーは目を見開く



「お前は喧嘩もロクにした事もねーし、あの場に残っていたらお前まで怪我してたかもしれねーだろ!」




「…………」




確かにそう、私があの場に残っていてもあの人達を止めることができなかった

いつもライタに偉そうなことを言ってる癖に、いざという時の私は




無力だ………






「だからメアリー……」



それでも何かを言おうとするメアリーをライタは真剣な表情をして見つめると、静かな声で言った




「ひとつ約束しろ……」


「?」




何故今の状況でその言葉が出て来るのかメアリーは疑問に思っていると、ライタは言葉を続ける




「俺達のような世間知らずが旅をするんだ、これからも危ない目にあうかもしれないし、また昨日のようなことが起こるかもしれねぇ」



昨日みたいな事が……




メアリーは昨日の出来事を思い出し、顔を青くすると、その様子を見たライタは少し表情を和らげて言った



「お前の性格上、俺の言うことに不満を感じるかもしれないがこれだけは言っておく……」




次の言葉を待ち、メアリーはごくりと唾を飲み込むと

ライタはとんでもないことをいい放った









「もしこの先、昨日みたいなことがあったとしたら、例え仲間が傷つこうとも迷うことはねぇ!自分が少しでも危険だと感じれば【すぐに逃げろ】」




「!?」




その言葉にあぜんとするメアリーを見て、ライタは苦笑すると更に言葉を続ける




「正直昨日はお前があの場から去ってくれて助かった!だからそのことで気に病むこともないし、俺を心配する必要もない」




「そんな……」



メアリーはライタが言う約束というものに納得出来ず、否定の言葉を言おうと口を開きかけるが

ライタの否定の言葉を許さないような強い瞳に、メアリーは思わず息をのんでしまう



黙り込むメアリーを見て、ライタは複雑そうな顔をすると



「お前は闘いはおろか、喧嘩すらしたことねーだろ!俺達を気づかって一緒にやられるよりはそっちの方が随分マシだ」と呟く



「…………ッ」


ライタの言葉に、メアリーは唇を噛み締めるとギュッと拳を握りしめる





確かにあの時私が残っていても、あの人達を止められなかった



ライタが私を心配してそう言ってくれていることはわかる




自分が皆の脚を引っ張る存在なんだって、この旅で思い知らされた



(それでも私は……)



下を見て何も言わなくなったメアリーを見て、ライタは肯定だと受けとったのか再びベッドに寝転がると





「そういうことだ、薬も効いてきて眠くなったしそろそろ寝るわ!メアリーもあまり夜更かしするんじゃねーぞ」と言って大きく欠伸をした



「・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・」












「すーすー」

















「…………………」



しばらくするとライタの寝息が聞こえ、メアリーはホッとすると

ライタが散らかした湿布のクズを回収する



(よかった、テッドが買った薬が効いてきたみたいね)





すやすやと気持ちよさそうに寝るライタの寝顔を見て、メアリーは苦笑をすると

ぽつりと呟いた








「ごめんなさい、さっきは返事ができなかったけど、その約束…守れるという保証は出来ないわ」





消え入りそうな声でメアリーはそう呟くと、その声に反応したライタが小さく身じろぐ




「起こしたらマズイわね、私もそろそろ寝ようかしら……」




メアリーはガチャリと部屋の扉を開けると、そこには追い出された筈のテッドの姿はなく

人気のない廊下が延々と続いていた




(そういえば、テッドが鍵を持ってるんだっけ……)



じゃあ鍵を閉めて寝ても大丈夫だよね……







ガチャッ




そう思ったメアリーは用心の為、部屋の鍵を閉めると

ベッドの中へ入る








そして重たい瞼を閉じ、誰に言うわけでもなくメアリーは「おやすみなさい」と呟くと

そのまま扉を叩く人物の存在すら気付かずに深い眠りについてしまった












----------------------------------------














-その頃-




「へぇ…それはなかなか傑作な話だね、まさか彼にそのような弱点があるなんて…」


「はい、間違いありません!【彼女】からの情報ですから……」



「くく…面白い」





セントリアより更に北部にある【帝国参謀本部基地】


その中にある、うす暗い資料室で【壊滅都市ヘルズ王国】と書かれた本を読んでいた人物は

黒の混じった青い髪をなびかせると、仮面越しにくすりと笑った









「僕と違ってイオスは真面目だからなぁ…」



仮面の男はパタンと分厚い本を閉じると、部下の少年の方を見た




「彼、メアリー様の保護の為頑張ってるみたいだけど、僕の方はすぐに追い詰めるよりも今は様子を見た方がいいんじゃないかと考えているんだ」



「様子見…ですか」



「うん!」



部下の言葉に仮面の男は楽しそうにうなづくと、持っていたコップにビシッとヒビが入る





「だってさ……」




少しずつ、ガラスのコップにヒビ入っていく過程を男は静かに見つめると、静かな声で言った







「ある程度信頼関係を築かせてから、引きはがした方が面白そうじゃないか…」





ミシミシッ





パリンッ






ガラスのコップが割れるとどうじに、掌から自分の血が混じった紅い液体が流れ、


それを男はゆっくりと舐め取ると、紅くなった口を袖で拭った




その姿を見て部下の男は、目の前で口を歪めて笑う上司の姿に恐怖を感じ、目を逸らす






「ですが、私はイオス隊長に応援を呼ぶよう命を受けています!確かにあなたは参謀で、イオス隊長の上司かもしれませんが・・・・」




部下の男はごくりと唾を飲み込むと、まっすぐに仮面の男を見て言った



「私の上司はあなたではない、イオス隊長だ!」





「イオス隊長…ねぇ」



部下の言葉に仮面の男は目を細めると、部下はしまったとでも言うように手で口を覆う




「成る程!君、確かフウヤ君だっけ?噂以上にたいした忠誠心だ・・・イオスはともかくとして僕に対してここまで言える人は珍しい……」



椅子から立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる仮面の男にフウヤは恐怖を感じ、思わず後ずさると


その様子を見た仮面の男はニヤリと口角をあげる








「でも、まずその震える足を何とかしないとね?大丈夫、別に怒ってないからさ!気にしないで」







「………ッ」



自分が怯えていたのを悟られ、フウヤはぎゅっと唇を噛み締めると、仮面の男はくすりと笑った




「わかった、君のイオスに対する誠意に免じて今回は援軍をおくるよ!そのかわりと言ったら何なのだけど………」




ぐいたと腕を掴まれフウヤは慌てて身を引こうとすると、仮面の男は更に顔をフウヤに近付け、至近距離で囁いた




「僕からの伝言をイオスに伝えてくれないかな?たいした内容ではないのだけど、あいにく僕から彼には伝えられない状況でね」







「………わかりました」










「ちょっと待ってて、伝言をまとめるから」といって封筒を取り出す仮面の男を見てフウヤはぎゅっと拳を握りしめ


「隊長の皮を被った悪魔め……」と誰にも聞こえない声量でぼそりと呟いた















その時の私達は、自分達に迫る脅威に気づかず


ウンディーネの街の中で、平和な夜を過ごしていた




ウンディーネは、ドイツ語で水の精霊という意味があります

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