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明日へと続く物語  作者: カノン
第三章 海が見える街
14/23

第2話 新たな出会い

「ったく、あいつらがいると一人でのんびりすらできねーな」



ホテルから出てすぐ近くにある木の上で、俺はウィンディーネの景色を眺めていた



(今日は何だかもの凄く疲れたような気がするぜ)



テッドは目をつぶると、今日の出来事が頭の中でフラッシュバックした








本当に今日は緊張続きの一日だった…



ウィンディーネに来てからのあいつらの態度を見ると、帝国騎士達をまいたことにホッとしているのか、気が緩みっぱなしだ





俺はあの親父さんを見てると、一度や二度まいた所で諦めたりはしないだろう




おそらくあのイオスという男もまた俺達を追ってくるはずだ






動きを封じられ喉元に刀を突き付けられても、顔色ひとつ変えず挑むような青い瞳で睨み返してくるイオスの目を、俺は不覚にも恐ろしいと思った




今回は運がよかったから逃げきれたものの、次は逃げきれるのか……




おそらくメアリーは論外、ライタも戦いにおいては全くの素人




こんな戦えないやつらをれて旅を続けると、俺まで危険な目にあう





正直メアリーを軍人共に引き渡して、逃げようと何度も考えた




メアリーはわがままでうるせーし、ライタときたらガキの癖に可愛いげのかけらもねぇ


おまけに目つきだけで人を殺せる位の殺人フェイスときた!



そんな奴らと一緒にいても、いいことなんてない






頭の中ではわかっているのに……





「何だかあいつら憎めないんだよな…」





二人ともあまりにも世間知らずで、放っておけないっつーか








それに…… 








「生きてたら、あいつらもメアリーやライタ位の年になってるんだよな…」







テッドは消え入りそうな声でそう呟くと、ホテルの扉ががらりと開いた









「ん?あれは……」



テッドはふと木の下に視線を落とすと、何だか慌てた様子のメアリーが下を横ぎっていった





「あいつ、追われてるって自覚があるのかよ!一人でこんな時間にどこへ!!」




テッドはシュタッと木から飛び降りた瞬間、次のメアリーの行動を見て目を丸くした




「な、海の中にッ!?何やってんだあいつ!!」




テッドはメアリーの行動を見てあぜんとしていたが、気がつくと自分もメアリーを追って海の中に入っていた




「くそ、夏とはいえ冷てぇな!あいつ、一体何がしたいんだよ!?」




メアリーを追って海へ入り、そして近くまで来た瞬間なぜあいつがそんな行動をとったかを理解した





(誰か溺れて!?まさか人を助けに!!)





メアリーの奴、馬鹿か!?



確かに海なら、水の力でメアリー位の体格でも人一人位なら引き上げられるかも知れねぇが、岸まで運ぶとなれば話は別だ




(それに、高波でも来たらどうするつもりなんだ!?)





俺はメアリーが腕を掴み引き上げる前に、自分が海へ潜ると、そいつを抱えて勢いよく海から飛び出した










第2話 【新たな出会い】










「どうしよう、この人息してないよ!?」




二人は改めて引き上げられた人物を見ると、子供ではなく、おそらくメアリーと同年代位であろう少女が顔を真っ青にさせて横たわっていた




「落ちつけ、うろたえるな!まだ脈はある!こいつは俺の出番だな!!」




そういって腕まくりをするテッドを見て、メアリーは



(よかった、テッドなら何とかしてくれるかもしれない!)




と思っていた矛先だった





(あれ?テッド、何顔を近づけて………)




だんだんと二人の顔の距離が近くなっていき、メアリーは疑問に思っていたが



少女とテッドの口がくっつくぎりぎりの所で、メアリーは彼が何を実行しようとしているのかようやく理解することが出来た






「ちょ、ちょっと!何しようとしてるのよ!?」





二人の口がくっつく前に、メアリーはテッドのマフラーを引っ張ることで、何とか魔の手から少女を護ることは出来たが、引っ張られた張本人は不機嫌そうに顔をしかめると




「何しやがる……」



と恐ろしく低い声で言った





「何って、こっちの台詞よ!どさくさに紛れてこの子に何をする気だったの///!?」





顔を真っ赤にしてうろたえるメアリーをちらりと見ると、テッドは面倒くさそうに息をはき、横たわる少女を指さして言った





「あのなぁ、俺はただこの子に人口呼吸をしようと思っただけじゃねーか…何顔を赤くしてるんだ、お前…」





「人口…呼吸?」






その言葉を聞いて、メアリーは一瞬「何だそういうことか、びっくりしたぁ!」と納得しそうになるが、頬を少し赤らめたテッドの顔を見て、ピンときたメアリーは再び少女に迫るテッドのマフラーを引っ張った




「やっぱり駄目、この子から離れなさい!」




「ぐえっ…離せ!!早くしねぇとこいつの命が危ねーだろ!?」




口をタコのようにして少女に迫ろうとするテッドを見て、メアリーは叫んだ



「何が人口呼吸よ!?そんなこと言って本当はただこの子とちゅーしたいだけなんでしょ!?」




「はあっ!?」



おそらく図星なのかテッドは顔を赤くすると、ムキになって否定をした




「ガ、ガキの癖に何ませたことを言ってやがる!?別に俺はやましい気持ちがあったわけじゃなくて、純粋にこいつを助けたくてだな……」




明らかに動揺するテッドを見て、メアリーはビシッと彼の顔を指を指す



「嘘!じゃあ何でそんなに顔が赤いのよ!?最低っ!テッドの馬鹿、スケベっ!!」





「何だと……?」




さすがにここまで罵られ腹を立てたテッドはクワッと瞳孔を開かせると、その眼力にメアリーは少し怯んでしまう




「誰がスケベだ!?・・・たく、こんなつまらねーこと言ってぐずぐずしてっと助かるもんも助からねーぞ!」




「う・・・・・」



彼の最もな反論にメアリーはたじろいでいる隙に、いつの間にかテッドはメアリーの手を振りほどくと少女の顎に手をかけた




「ま、そういうことだ!安心しろ、俺は人工呼吸をするのであって、やましい気持ちがあるわけじゃないからな!」



「・・・・ぐ」







そういって再びメアリーに念を押した後、テッドが少女の唇に自分のを重ねようとした時だった










「ぶはっ、げほっげほっ!おええええええッ」








ぶふーーーーーーーーーーッ


と盛大な勢いで少女の口から水が発射し、当然至近距離まで顔を近づけていたテッドはそれを顔面から浴びることになる






「テッド!?」






突然の事態に驚いたメアリーはテッドの名を呼ぶと、当の本人は目に海水が入り、その場所をおさえて悶えていた





「いたたたッ、目がしみる!一体何が起こったんだ!?」






テッドは目を擦り目を開けると、先ほど自分が人工呼吸をしようとした少女が4つ這いになって口から水をはきながら苦しそうにむせていた







「げほげほッ」


「うおッ、こいつ自力で復活しやがったぞ!!」






少し残念そうに言うテッドをメアリーは一睨みすると、少女のそばへと駆け寄った



「よかった、気がついて!大丈夫ですか!?」




おそらく、大量の水を飲んだのだろう




メアリーはとっさに涙目になって未だに苦しそうにむせる少女の背中をさすると、彼女は青く虚ろな瞳でメアリーを見た





「・・・・・天使がいる」




「え?」




少女の言った言葉の意味がわからずメアリーは首をかしげた瞬間、もの凄い力で腕が掴まれメアリーは思わず小さく悲鳴をあげた







「天使がいるってことは、私の人生もここでおわりか・・・リボンを落として海に入ったものの、まさか溺れ死ぬだなんて・・・短い人生だったなあ」





「ちょッ」



まるで何かを悟り、諦めたような少女の瞳を見てメアリーはぎょっとすると、少女の身体をゆさぶった






「何をいってるの!?天使なんてどこにもいないわ!大丈夫、あなたは助かったのよ!!」





「おい、今にも死にそうな人をゆさぶるなよ・・・」





テッドは、慌ててメアリーを止めようとした瞬間だった


少女は「ふふふ」と薄く口元に笑みを宿すと、焦点の合わない瞳を再びメアリーへ向けた



「天使って案外過激なんだね・・・で、私はこれからどこへいくの?天国?それとも地獄?」




「だから、あなたは生きてるってさっきから言ってるでしょ!?しっかりしなさい!!」







メアリーは少女を正気にさせようと揺さぶっていると、みるみるうちに少女の顔色が青くなっていき「う……」と声を漏らした






「おいメアリー、そろそろ……」



それを見かねたテッドはさすがにヤバイと思い、メアリーに制止をかけた瞬間だった









「き、気持ち悪っ……」




「え………」



少女は今にも脳天しそうな顔色でそう言うと、メアリーはハッとして慌てて手を離す



「ごめんなさい!つい……」




「……………」



メアリーは謝罪するが、おそらく気分が悪いのだろう



かわりに少女は手を挙げると、気にすんなとばかりに弱々しく手を横へと振った










-------------







「ご、ごめんなさい…その、さっきはその取り乱していまって」



あれから少し落ち着いた様子なのでメアリーは話かけると、俯いていた少女は顔をあげ、メアリーを見た





さっきまで少女は気絶をしていた上に、メアリーも取り乱していたから、あらためて少女の顔を見ることになる




(うわぁ、凄く綺麗な瞳…ガラス玉みたい)




テッドよりも色素の薄く、上に束ねた金色の髪に、青くて大きな瞳




私は思わず、まるで見てると吸い込まれそうになるような青い瞳に魅入ってしまっていると、少女は困ったように笑った




「そんなに謝らなくても……私は全然大丈夫だから気にしないで!それより、助けてくれて本当にありがとう!あなた達は命の恩人だよ!!」



「え…命の恩人だなんて、そんな大袈裟な」




お礼を言われた上、命の恩人だと言われたメアリーは戸惑っていると、少女は眩しい笑顔を向けて言った



「命の恩人だよ!あの時、本当に死を覚悟した位だし、あなた達が助けてくれなかったら今頃あの世行きだったし」




あの世行きって…




もしあの時、私とテッドが気がついてなかったら……



メアリーはその時の事を考えてぞっとする








「ん、どうしたの?顔青いけど大丈夫?」



青い顔をするメアリーの顔を見て、少女は首を傾ける



「ひょっとして寒いの?お嬢さんせっかく綺麗な服着てるのに、濡らさせてしまってごめんね」




「えっと……」





確かに服は濡れちゃったけど、乾かせば何とかなるし、けして寒い訳ではない





少女の問いに、戸惑っていると、横からテッドの腕がのびてきて、無理矢理私と自分の位置をチェンジして、少女の前へと立った




「さっきから二人の世界を作りやがって……俺のこと忘れてるだろ」




テッドは少し不満げにちらりと私を見ると、今度はキリっとした表情で少女を見た




「お嬢さん!事情とかは後で聞くからよ、とりあえず今は身体を拭かないと濡れたまんまじゃ風邪ひくぞ。俺達が泊まっているホテルがすぐ近くにあるんだ、是非寄っていかな………」




「ホテル……そうだ!!」






テッドの言葉を遮り、少女は勢いよく立ち上がると、ぺこりとこちらへ向かってお辞儀をした









「ごめん、せっかくだけど急いでたんだ!助けてくれて本当にありがとうね!それじゃあ!!」









用事を思い出し、よほど慌ててたのか少女は早口でそう言うと、メアリー達に背を向け走り出そうとした










「待って!!」



今にも走り出しそうな少女に向かってメアリーは叫ぶと、少女は申し訳なさそうに眉をへの字に下げた




「ごめん、これからすぐに行かなくちゃいけない所があるんだ!お礼は、また会った時にあらためて」




「そうじゃなくて…」




別にお礼が欲しいわけじゃない



ただ……



「引き止めてごめんなさい、せっかく何かの縁で会ったのだから、せめて名前だけでも知りたいなと思っただけなの…」




「名前?」



メアリーの言葉に少女は一瞬面くらった顔をすると、今度は苦笑してメアリーを見た



「お嬢さんさ、運命や占いを信じるタイプ?」



「え……」



なんでわかったの?



その言葉に驚きを隠せず、メアリーは少女を見ると、青い瞳が細められ「やっぱり?」と微笑まれた




「何かの縁…か………わかった、私はヒナ。お嬢さん達の名前は?」




「ヒナちゃんか…可愛い名前ね、私はメアリー」



「俺はテッドだ、こちらこそよろしくな」




メアリーとテッドが自己紹介をすると、ヒナは人なつっこい笑顔を見せると「わかった」と言った





「それじゃあテッド、メアリー、悪いけどそろそろ行くね!今日は本当にありがとう、それじゃ!!」






ヒナちゃんが手を振った瞬間、辺りに強い風が吹く



「……………っ」



メアリーは一瞬目をつぶり、ヒナに手を振ろうと再び目を開け辺りを見回すが、そこにはテッドしかいなくてメアリーは首を傾げた





「あれ?いつの間に……ヒナちゃんは?」



「さあ、俺も目をつぶったからわからねーよ」






ヒナちゃん、一瞬の間にどこへ消えたのだろう…


メアリーは「うーん」と首を捻っていると、向こうから人の声が聞こえた





「おーい、メアリー!」





「ライタ!?」



名前を呼ばれ、メアリーは声がした方向を見ると、ライタはホテルの従業員を引きつれて、ロープや浮輪を片手にこちらへ走ってきた




「大丈夫か!?溺れている人はどこだ!?」





辺りをキョロキョロと見渡すライタを見て、テッドは苦笑すると「遅ぇよ」と言った





「安心しな、その子は俺達が助けたから心配いらねーよ」





「は?」



テッドの言葉にライタはぽかんとすると、再び何かを探すように辺りを見回した



「で、溺れてた人は!?」




「もう行っちゃった…」




メアリーは少し寂しそうに海を見ると、ライタは「そうか」と言った







「俺が来るまでの僅かな時間で、歩けるようだったら心配いらねーな!くそ、焦って損したぜ」




そういいながらも、ホッとした表情をするライタを見て、メアリーは微笑むと、静かに波だつ海を再び見


つめた




テッド:正統派には程遠い主人公

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