第4話 彼女の決意
「成る程、メアリーが言ってた友人ってのはお前の事だったんだな…」
とりあえずお互いの自己紹介を済ませた後、テッドはライタをがん見をしながら、納得したようにうなづいた
「流石メアリーの友達って感じだな、癖の強そうな奴だぜ!なんかアクが強いっていうか…何というか……」
「テメェ…俺に喧嘩売ってんのか?コラ」
ライタはピクリと目元を引き攣らせると、テッドにガンをつける
「ライタ、落ち着いて!!」
メアリーは何とかライタを宥めようとするが、次の言葉で、彼の中の何かがキレることになる
「うわ、いちいち睨むなよ!?おっかねぇなぁ!五年前の俺だったら確実ちびって半泣きになるレベルだぜ、こりゃ…」
「上等だッ!テメー!!あんま舐めた口たたいてるとマジでぶっ殺すぞ!!」
「ちょ…落ち着いて!!テッドもライタを挑発しないでよ!!」
「挑発?馬鹿言っちゃいけねぇ、こいつが勝手に怒ってるだけだろ」
しれっとライタを挑発するテッドと
怒って、今すぐにでもテッドに攻撃をしかけそうな勢いのライタに、メアリーはため息をはいた
第4話 【彼女の決意】
「さすらいの旅人…か。メアリー、本当に信用しても大丈夫なんだろうな」
メアリーに宥められ、ようやく落ち着いたライタはテッドをちら見する
「おい、失礼な奴だな…俺が怪しい奴にでも見えるのかよ!」
「メアリーの話によると、お前はメアリーの部屋に忍び込んだそうだな…その時点でかなり怪しいじゃねーか!屋敷に忍び込んで何をするつもりだったんだよ!?」
「そういえば、私もテッドが屋敷に何で忍び込んだのか知らない…」
ライタとメアリーに見つめられ、テッドは「う…」と言葉を詰まらせる
それを見たライタは
「ほら、怪しいじゃねーか!そんなヤローにメアリーをまかせる訳にはいかねーよ」
と言ってテッドを指差した
その言葉を聞いて、テッドは苦笑をするとちらりとメアリーを見る
「お前はそういうが、お嬢さんの方は屋敷に帰りたいみたいだぜ!あんたにこれ以上迷惑をかけたくないらしいな」
「…………ッ!」
ライタはハッとした顔をしてメアリーを見る
「そうだった!お前が割り込んできたせいですっかり忘れてたぜ」
「……………」
テッドはやれやれというような表情をすると、近くにあった切り株に腰をかける
「今更屋敷に戻ると言い出す程度の気持ちなら、この先の旅でお前がやっていけるとは思えねぇ」
容赦ない彼の一言にメアリーの胸がチクリと痛むが、テッドは更に言葉を続けた
「帰りたいのなら今すぐに屋敷まで送ってやる、お前がそれでいいのならな」
「…………」
私はテッドの言葉に返事をせず、下を向いてしまう
いや、返事をすることが出来なかった
本当は帰りたくない…
でもここで返事をしなければまた二人に迷惑をかけてしまう
下を向いて黙り込むメアリーを見てテッドはため息をはくと、面倒くさそうな顔をした
「お前がそうやって迷えば迷う程、周りに迷惑をかけていることにいい加減気づけよ、お前のうじうじしている態度を見てるといい加減腹が立ってきたぜ…」
「・・・・・・ッ」
容赦のないテッドの言葉に、辛そうに下唇をぎゅっと噛みしめているメアリーを見て、ライタは二人の間を割って入るようにして目の前の旅人を睨みつけた
「おい、テメー!黙って聞いてりゃメアリーに好き放題いいやがって!!」
テッドの胸倉を掴み戦闘態勢にはいるライタを見て、メアリーはぎょっとするとあわててライタの腕を掴んだ
「止めてライタ!」
「なんでこんな奴を庇うんだよ!?こいつ、お前のことを…」
掴みかかられたと思えば、今度はメアリーと言い争いをするライタを見てテッドはため息をはく
「おい、いい加減手をはなせよ・・・首しまってんじゃねーか」
テッドはライタの腕を掴み、自分から引き剥がそうとした時だった
「今、向こうメアリー様の声が聞こえなかったか?」
突然向こうからメアリーの名前が聞こえ、テッドとライタの動きがぴたりと止まる
「男の声も聞こえた!もしかすると、金髪の男とフウヤ副隊長が言ってた目つきの悪い小僧も一緒にいるかもしれません!隊長、どうなさいますか?」
「この林をくまなく捜せ!気配はないが確かにメアリー様の声がした、」
近くの茂みから複数の男の声が聞こえ、メアリーの肩が跳ね上がると同時にテッドは舌打ちをする
「やべーな!お前らが大声を出すから居場所がバレちまったようだ、これじゃあ結界を張っても張らなくても同じだな」
テッドが指を鳴らした瞬間、ライタはハッとしたように言った
「空気が変わった!?お前、まさか結界師……」
「その話は後だ、それよりも」
どんどんと茂みをかき分ける音が近づく旅、顔を青くさせるメアリーに向ってテッドは言った
「時期にお迎えがここに来る、この質問が最後だ」
テッドはまっすぐにメアリーを見て、最後の質問をした
「俺たちと共に来るか、それとも・・・・・」
「おい、俺たちってどういうことだ?」
テッドとメアリーの間にライタは割りこむようにして質問すると、テッドはため息をはいた
「お前わかってねーな、帝国に逆らったやつがどうなるか・・・メアリーはともかく、お前はただで村に戻れるとでも思ったのか?」
「「な・・・!?」」
テッドの言葉にメアリーとライタが声をあげた瞬間だった・・・
がさがさ
がさがさッ
「いた、メアリー様だ!金髪の男も、目つきの悪い少年も一緒だ!」
黒い隊服を着た男が自分達の姿を見つけると、声を張り上げた
「げ・・・もうきやがった!メアリー!!」
警戒するようにこちらへ近づいてくる隊士達の前にはばかるようにテッドは立つと、メアリーの名を呼んだ
「さっき、迷惑をかけたくないっていったよなぁ!?今更もう遅いんだよッ!!お前が屋敷に戻ろうが戻らないが、どっちみち俺達は元の生活には戻れねーことはこれで分かっただろ!?」
テッドの言葉にメアリーはずきりと胸が痛む
「ごめんなさ………」
「謝る位なら今はお前がどうしたいのか言ってみろ!!」
私…?
テッドに言われ、メアリーはどうしようと慌てた様子でライタを見ると、彼はため息をはく
「言っただろ…俺はお前の味方だって!どっちを取っても怒ったりしねーよ」
ライタは苦笑すると、メアリーの頭を撫でた
「俺達のことは気にせずに好きな道を選べばいい…お前はどうしたいんだ?」
「メアリー様を保護しろ、犯人はその後だ!」
帝国騎士が剣を抜き、こちらへとにじり寄ったと思った瞬間
蚊の鳴くような小さな声で、メアリーは呟いた
「…りたくない」
「……?」
何を言ったのか聞き取れず、テッドはメアリーを見た瞬間だった
メアリーは大きく息を吸い込むと、今度はその場にいる全員が聞こえるような大声で叫んだ
「私…本当は帰りたくない!お見合いなんてしたくないし、お父様に振り回される人生なんてごめんだわ!!」
悲痛が混ざったような声でメアリーに叫ばれ、帝国軍人達は驚いたように目を見開く
「お父様に伝えて!私は帰るつもりはないって!お願いだから私のことはほっといてよ!!」
「メアリー」
長年幼なじみをやっているライタだが、初めてみる彼女の姿に驚きつつもいたたまれない気持ちになる
(やっぱり俺達に気を使ってまた自分を押し殺そうとしてたんだな…)
いたたまれない顔をするライタとは正反対に、テッドは口の端をあげる
「…後悔しねーな?」
先程とは違い、メアリーは大きくうなづくとテッドを見た
「こうなったらもう後には引けないわ!」
「は、なかなか言うじゃねーか!さっきまでの弱気なお嬢さんはどこに言ったんだ?」
テッドの皮肉にメアリーはムカッと腹を立てると口を尖らせる
「弱気で悪かったわね!」
メアリーの目に決意が宿ったのを確認したテッドは腰に手を持っていくと、剣を引き抜いた
「という訳だ、これでわかっただろ?お嬢さんもそう仰ってる訳なんだし早く道を開けろよ」
剣を引き抜くテッドに対し、武器を持っていないライタはメアリーを庇うようにして彼女を自分の後ろへと追いやった瞬間だった・・・
「悪いがその頼みを聞くことは出来ないな…」
「!?」
テッドが剣を構えた瞬間、特徴のある低い声が聞こえメアリーの肩が跳ね上がった
「この声は…」
帝国軍人の波をかきわけて一人の男がテッド達の前に姿を現した時、メアリーは声をあげた
マントで顔を隠していても、私はその人が誰だか一瞬で分かってしまった
「イ、イオスさんっ!?」
その人物は、私のほうを見ると羽織っていたマントを脱ぎ、自分の顔をさらけ出した
「・・・・・・・ッ」
感情が宿っていないような青い瞳と目があった瞬間、息を飲むのが自分でもわかった
そして丁寧に私へお辞儀をした後、イオスさんはテッドを見てすっと目を細めた
「…やはりお前が犯人だったのか」
イオスさんはそういって私達に近づいてくるたびに緊張が走るが、テッドだけはにやりと不敵な笑みを浮かべてイオスさんを見ていた
「メアリー様誘拐の容疑者として、お前を連行する」
イオスさんが剣に手をかけたとどうじにテッドも懐に手を入れる
「連行する…か、面白いこと言ってくれるじゃねーか!」
そういってテッドが懐に手を入れ何かを取り出した瞬間、辺りに鋭い閃光が広がり、その場にいた全員が目を抑え出した
「ぐ、あああっ…目が」
「くそ、前が見えない」
鋭い閃光のせいで次々に隊士達は目を抑えうめき声をあげる中、メアリーは何も見えない目で必死にテッドやライタを探した
(どうしよう・・・私まで何も見えないよ!二人ともどこにいったの!?)
そう思って、辺りを彷徨っていた瞬間だった
がしっ
「どこに行こうとしてるんだ!今のうちに早く逃げるぞ!」
暗闇の中で誰かに手を捕まれたと思えば、聞きなれた声がしてメアリーはほっとする
「テッド・・・」
「速く走れ!このままだと、追い付かれるぞ」
「痛えな、あまり強く引っ張んなよ!」
何も見えないが、近くでライタの声がしてメアリーは安心した時だった
「もう追いついているがな・・・」
「きゃああああああああああ」
「なッ!?」
近くでメアリーの悲鳴と聞き覚えのある声が聞こえテッドはハッとすると、ぐいっと後ろへ引き寄せられる感覚がした
「く・・・」
物凄い力にテッドはメアリーを離しそうになるが、なんとか踏みとどまりゆっくりと振り返った瞬間、彼女の片腕を引っ張る人物を見て驚号する
「嘘だろ・・・あれが効かなかったのかよ」
いや・・・
テッドはじっとイオスを見ると彼が両目を開けていないことに気づく
「お前、目が見えていないのに何故!?」
「簡単なこと・・・お前たちの声をたどってここまできた、それだけのことだ」
更に強い力でメアリーの腕を引かれ、テッドが反対側の腕を引っ張り返した瞬間メアリーは悲鳴をあげた
「痛いッ!!」
「メアリー!くそ、何が起こっているんだ!?」
メアリーの声を聞き、その声に反応したライタはいらついたように声を荒げた瞬間、イオスはもう片方の手でライタの手首を掴む
「な・・・離せッ!この」
ライタは乱暴にイオスの手を振り払おうとするが、炭鉱少年と軍人との力の差は歴然でびくともしない
今の状況
メアリーとライタの片方の手をテッドが掴み、そして反対側の手をイオスが掴んでいて
いわゆる4人で手を繋いで円が出来ている状態だ
はたから見れば、仲つむまじい状況に見えるが、本人たちは必死で戦っていた
「ええい、離せイオス!!くそ、大人げないぞ!!メアリー!お前も抵抗するんだ!!」
「ええ、わかったわ」
ライタに言われメアリーも手をぶんぶんと振るが、イオスには到底叶わずそうしている内に時間が過ぎていく
(くそ、もうすぐ閃光弾の効力が切れる時間だ!こうなったら……)
テッドは小さく舌打ちをすると、メアリーを掴んでいた方の手を離した
「きゃあっ!?」
勿論イオスに引っ張られていたメアリーはバランスを崩し、イオスとぶつかる形になる
「…どういうつもりだ(まさか、自分だけ逃げるつもりか…それとも…)
「ライタ、こいつの手しっかりつかんどけよ…」
「…?おう」
テッドの言葉を聞き、嫌な予感がしたイオスは直ぐさまライタから距離を置こうとするが、時は既に遅し、テッドは術を唱える構えをとっていた
「片手が使えればこっちのもんだぜ!」
「…………っ」
目が見えていないイオスは、一瞬何が起こっているか理解が出来なかった
(く、遅かったか)
イオスは慌ててライタの腕を振り解いた瞬間、テッドの一言で術が発動してしまった
「呪縛獄!!」
「……………!」
辺りに張り詰めたような空気が立ち込めたと思えば、イオスの身体がみるみるうちに重くなるような感覚に襲われる
(く、妙な術を……)
自分の体重を支えることさえ困難になり、自分の体重を剣で支えるようにして立っているのイオスを見て、テッドは驚いたように言った
「驚いた、これをくらって立っていられる奴がいるとは……さすがは伊達に隊長をやってはいねーな」
「…………っ」
イオスは悔しそうに顔を上げた瞬間、閃光弾の効力が消え、メアリー達の視界がクリアになった
「メアリー、ライタ!逃げるなら今だ!そいつを振り払って逃げて来い!!」
「う、うん………」
メアリーは力が入らなくなったイオスの腕を振り払うと、力いっぱいテッドの元へ走った
「………くっ」
「悪いな、隊長さん」
テッドはパチンと指を慣らすとイオスの身体が崩れ落ち、床に伏せるような形になってしまう
「…………っ」
それでもかろうじて、片膝をつくようにして立とうとするイオスを見て、テッドの顔は少しずつ青ざめていった
「マジか…これをくらってまだ立てるやつがいるのかよ……つか普通ありえねぇ」
本来なら腕を一本…いや、指を動かすのも困難なはず
それなのに、立ち上がれるだと!?
化け物かよこの男!?
テッドは、ゆっくりと身体を引きずるように近づいてくるイオスに恐怖を覚え、剣を向けるが、それでも彼は止まらず少しずつ近づいてくる
「こいつはやべーわ、この状況で剣を向けられても顔色一つ変えやしねえ」
テッドはライタの肩を掴むと、少し慌てた様子で言った
「おい、村とは反対方向の林の出口ってどっちだ?」
「はあ?なんだよ、いきなり…」
テッドの様子にギョッとしつつも、ライタはしぶしぶ南の方角を指さした
「そっちか?よし、走るぞ!!」
「え…あっ、ちょっと」
「うわ、引っ張るなよ」
いきなり腕を引っ張られ、抗議の声をあげる二人を無視してテッドは南へと走り出した
「は、速いよ!一体どうしたの!?」
テッドに腕を掴まれたまま走るメアリーは、そのスピードで何度も転びそうになる
しかし、今のテッドにはそんなメアリーを気遣う余裕もなく、林の中を走り続けた
おそらくあの男は強い…
俺の中の何かがそう告げている
術が解けたら、イオスはすぐ俺とライタに斬りかかってくるだろう
その上、閃光弾がきれたイオスの部下達が応援に来たら俺達は終わりだ
テッドは冷や汗をかくと、ちらりと後ろを振り返る
呪縛獄が切れる時間はあと約2分……それまでここから離れなければ
悔しいが今の俺達では、三人が束になってもイオスには敵わねぇ
テッドは心中で舌打ちをすると、メアリーとライタの手を引いて南へと走っていった
「くそっ、逃げる事しか出来ねーのかよ!あのイオスとかいうやつ、弱ってんならとどめをさしとけばよかったんじゃねーか?」
隣でライタが悪態をつくのが聞こえ、俺はため息をはく
「お前、過激な奴だな…ま、それが出来れば俺もそうしてたけどな」
「どういうこと?」
息が耐え耐えになりながらも質問をするメアリーに対し、テッドは淡々と答えた
「あのままあそこに残れば、イオスの部下達に囲まれてたんだよ……そうなりゃ、どう考えたかって人数の少ない俺達が不利になるじゃねーか」
「な、なるほど」
メアリーとライタはそういうことかと納得をすると、テッドはあきれたような表情をした
「とりあえず今は、やつらと距離を置くことが先決だ!なぁ、林を抜けた所に村や街はあるか?」
「えっと……」
メアリーは少し考えるような仕種をすると、自信なさ気に言った
「地図でしか見たことがないのだけど、確か【ウィンディーネ】という名前の街があったわ!
そこなら人も多いし、簡単には見つからないと思う」
「でかした、とりあえずその街を目指すぞ!これからどうするかは、その後だ」
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森を抜けた後、テッドはちらりと後ろを振り返ると、ホッとしたように言った
「よし、何とかまけたみたいだ」
テッドが何かを唱え、パチンと指をならすと、ライタはじろりとテッドを見た
「何をしたんだ?」
「何って、俺達の居場所がわからなくなるように結界を張っただけだ!ただ気配を隠すことしか出来ねーからあまり意味はねーことなんだがな」
「そういえば…」
ようやく息が整ったメアリーは不思議そうにテッドを見ると、首を傾げた
「さっきライタ、結界師がどうとか言ってたよね!テッドってその、能力者なの?」
「………まぁな」
テッドの問いを聞いた瞬間、メアリーは目を輝かせると、感嘆の声をあげた
「成る程、だからあの夜イオスさんはテッドに気づかなかったのね!」
納得したようにメアリーがうなづくのに対し、ライタは眉間にシワをよせて、テッドを見た
「だがよ、お前が結界を張った瞬間空気が変わったぜ!隠れたにせよ、それじゃ雰囲気でばれちまうじゃねーか」
「……え?」
ライタの言葉に首を傾げるメアリーに対し、テッドは驚いた表情をしてライタを見た
「こいつは驚いた……人波外れた六感を持っているやつでも、俺の気配隠しの結界を感じ取ることは出来ないはずだ…」
「はぁ?何ぶつくさ言ってんだよ、第六感?何だよそれは!?」
「ま、それはいつか説明するとして・・・ライタ、ひとつ質問していいか?」
自分の問い掛けを無視した上、逆に質問を返されることに不満を抱いたライタは、返事の代わりに目の前の旅人を睨むが、さほど気にした様子もなくテッドは質問を投げかけてきた
「お前の家族の中で能力者はいんのか?」
「はあ?」
突然何を質問するかと思えば…
ライタはため息をはくと、ぶっきらぼうに言った
「もの心がついた頃には両親はいかなった、だからそんなことわかりっこねーよ」
「そうか」
テッドは複雑そうな顔をしてライタを見ると、ライタはムッとした表情になる
「んだよ、そんな顔で見られてもわからねーもんは仕方がないだろ!」
こいつも苦労してるんだな
両親のことについては知らないと言われたテッドは、しぶしぶライタを見るのをやめ、今度はメアリーの方を向く
「じゃあ今度はメアリーに質問だ」
真剣な顔をして言われ、メアリーはドキリとするが、次の一言で彼女はガクリとすることになる
「ウィンディーネまでここからどういけばいいんだ?」
「……………え?」
その言葉を聞き、メアリーとライタはハッとすると、みるみるうちに顔が青くなった
「馬鹿っ!元来た道を戻っでどうするんだよ!?お前、ひょっとして場所がわかってねーのか!?」
ライタに怒鳴られ、テッドはムッとした顔をすると、面倒くさそうに答えた
「そうだよ、だからメアリーに今道を聞いたんじゃねーか」
「だからって、何で元来た道を歩くんだよ!?掴まったらどうするんだ!?」
罰が悪そうに頭を掻くテッドを見て、メアリーは少し悪いと思いながらも、自分が思った言葉を口にしてしまう
「ひょっとしてテッド、旅人なのに方向音痴なの?」
「!?」
メアリーの言葉を聞いた瞬間、テッドは冷や汗を垂らす
(やべー、実は俺旅人だけど極度の方向音痴だなんて絶対言えねぇ!!カッコ悪すぎる…)
テッドはごほんとわざとらしい咳をすると、メアリーの目をまっすぐ見て言った
「いいかメアリー、俺は方向音痴ではない!この土地は初めてだから少し戸惑っていただけだ」
「戸惑うって…迷ってたじゃねーか、さっき…お前本当に旅人かよ?」
必死になってメアリーに力説をするテッドの姿にあきれつつ、ライタは疑いの目で目の前の男を見た
「何だ、その疑っているような目は!?俺はれっきとした旅人だ!」
「じゃあ今までどうやって旅をしてきたんだよ!?」
「勘だ、勘!長年旅をすれば自然に身につくもんなんだよ!」
ライタとテッドがいい争うのを見て、メアリーはため息をはく
おそらくテッドの張った結界のおかげで、帝国軍は簡単にここまでは辿り着けないだろう
だが、彼の結界は気配を消す効力しかない訳で、声を聞かれたら居場所がばれてしまうかもしれない
メアリーはいい争う二人の間に割って入り、慌てて制止をした
「二人とも、声が大きい!!私達は追われているのよ、少しは声を抑えなさい!!」
「わ、悪い……」
メアリーに怒鳴られ、少し戸惑ったように謝るライタとは対象に、テッドはため息をはく
「お前の怒鳴り声が一番うるせーよ……」
メアリーの一喝でライタは静かになったものの、今度はテッドの一言でかちんときたメアリーがテッドにくってかかっていった
「何よ、私だって好きで大声出してんじゃないわよ!そもそもテッドが道もわからない癖に先々行かなければよかったんじゃない!?」
「………何だよ、俺が全部悪いみたいな言い方しやがって」
メアリーの言い草に腹を立てたテッドが眉をひそめたのを見て、ライタは呟いた
「俺達よりメアリーの方がうるせーねーか」
それ以前に、無事に俺達はウィンディーネに辿り着けるのだろうか……
ライタは今だに口論をする二人を見て、この先の旅路の事を考えると、疲れたようにため息をはいた
【次回予告】語り:メアリー
海が見える街で、私は一人の少女に出会う
その出会いは偶然かそれとも必然か、今はまだわからないけれど
近いうちにまた会える
そんな気がした
明日へと続く物語
【第3章 海が見える街】
この時の私は彼女との因縁を知らず、新たな出会いに心を躍らせていた・・・
新しい章に入ると、なんとなくテンションが上がる自分がいる・・・