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明日へと続く物語  作者: カノン
第一章 セントリアの少女
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第1話 セントリアの少女

この世界には2つの脅威がある


それは、人の心を弄び魂を喰らう「悪魔」

そしてもう1つは、人間よりも遥かに強い力を持つ「鬼」という生き物の存在だ


その2つの存在を恐れた人間は、脅威に立ち向かう為、研究を重ね『機械人形』を創り出した


しかし計画は失敗し、機械都市「ヘルズ王国」は「機械人形」の暴走により壊滅した


その後「機械人形」に関する実験は禁止とされ、【失われた科学技術】となった・・・






-明日へと続く物語-







「メアリー様、メアリー様!もう閉店時間が過ぎていますよ」


「あ・・・すみません」


セントリアの中にある図書館で【メアリー】と呼ばれた少女は、ハっとした。


「本当にメアリー様は本が好きなのですね。ですが、早くお帰りにならないと【ライタ】が心配してまたここに乗りこんできますよ」


少し困った様子ではにかむ管理人を見て、メアリーは「そうね」と言って苦笑した瞬間だった


バタバタと慌しい足音が近づいてくると、乱暴に図書館の扉が開かれた


「メアリー!まだ図書館にいたのかっ!!」


バタンと扉をたたきつける音と共に入ってきたのは、黒く短い髪と、鋭い三白眼な目つきが特徴のライタという少年だった。


「ライタ、ごめんなさい・・・つい本に夢中になってしまって」


「ついって、いつものことだろ!?本なんて借りて読めばいいじゃねーか」


ライタはため息を吐くと、身につけている腕時計を指さした


「ほら、5時を過ぎると怒られるんだろ?早く帰るぞ」


「うん、ありがとう。じゃあ、又明日もきますね」


「ああ、いつでもおいで」


図書館のおじさんに挨拶をすると、メアリーは急いでライタの後を追いかけた。







第1話【セントリアの少女】







ライタと別れたメアリーは、家の前に立っていた


「5時5分・・・お父様、怒ってるかな」


少し不安になりながら家の中に入ると、メアリーの父親である『ジョン・リアンス』が玄関に立っていた


「た、ただいま、お父様」


メアリーが家に帰った瞬間、ジョンは鬼のような顔で娘を睨みつけた


「メアリー!こんな時間まで何をしていた?門限は5時だといっただろう!?」


ジョンに怒鳴られ、メアリーはビクッと肩を震わせた


「ごめんなさい、お父様!!」


怯えながら必死に謝る娘を見降ろし、ジョンは鼻で笑う


「遅くなった原因はあのライタやらというガキのせいか」


「ち、違う!ライタは関係ない、私が本に夢中になっていてそれで・・・」


「あんな炭鉱で働いているような貧乏人なんぞ庇わなくていい!」


メアリーの弁解を遮りジョンは続ける


「友達は選べ!お前は【リアンス家】の長女なんだ、自分の立場をわきまえろ!!」






リアンス家の長女

メアリーにとって聞きあきる程いわれてきた言葉・・・




----------------------------------








リアンス家はセントリアの中で1番の大富豪で、私はそのひとり娘としてうまれ、幼い頃からその肩書によっていつもまわりから一目置かれていた・・・






『ねえ、ドッヂボールしようよ』


『いいね、やろう!』


『あの・・・わ、私も一緒に』


『え・・・メアリー様も?』


『うん、駄目・・・かな?』






―だから小さい頃はいつも外で楽しそうに遊んでいる同級生が羨ましくて、ずっと部屋の窓から眺めていた―






『いいな、凄く楽しそう』







―そうしているうちに私も皆のように外で遊んでみたくて、一度だけ屋敷をとびだしたことがあった―







『メアリー様アウト、外野行き決定!』


『あはは、当たっちゃった』






―普通の子供のように遊び、友達が出来た・・・それだけで十分だったのに・・・-






 


『君達、私の娘にボールをぶつけてただで済むと思っているのか!?』


『お父様!?』








―私はただ普通の子供のように遊んだり皆と友達になりたかった・・・ただ、それだけなのに・・・―






『やめて、お父様!皆で遊んでただけよ!!』


『お前は黙ってろ、この件に関しては君達の両親に報告させて貰う!今後一切私の娘に関わらないでくれ!!』








「リアンス家の長女」というせいで皆が私を特別扱いし、避けるようになり始めたのはこの時からだ


けれど、皆が変わっていく中、ライタだけはリアンス家の肩書や、お父様のことを知っても、今までと変わりなく私と接してくれた。






『友達は選べ、自分の立場をわきまえろ!』






--------------------------------





その言葉を聞き、メアリーは昔の出来事を思い出した


その上、ライタを侮辱するような父親への言い方に腹を立てたメアリーは、ぐっと唇を噛みしめた





(私が何をいってもお父様は聞こうともしない・・・わかっていても、たったひとりの大切な友人を侮辱されたことが悔しい!!)




メアリーはぎゅっと拳を握りしめ「私が誰と仲良くしようと自分の勝手でしょ!?ライタのことを悪く言わないで!!」と叫ぶと父親の横を通り過ぎる





「待つんだメアリー!まだ話は終わってないぞ!!」



(話って何よ、お父様が一方的に自分の意見を押し通そうとしてるだけじゃない!!)



気が付くとメアリーは父親の前から逃げ出して、自分の部屋に引きこもっていた




「お母様…」




メアリーはベッドへダイブすると、側にあったクッションに顔を埋めた




「会いたいよ、何処にいるの?」




消え入りそうな声で囁いていると




ドンドンッ

と乱暴に部屋の扉が叩かれた



「メアリー、ここを開けなさい!!」


「………っ」




部屋の外から聞こえた父親の声にメアリーは竦み上がった




「部屋にいるのはわかってるんだ!開けなさい!!」


「嫌……お願い、ほっといてよ!!」




執拗に部屋の扉を叩く音にメアリーは頭痛がした




「そういう訳にはいかん、早く開けなさい!」


ドンドンッ


「これ以上何を話せっていうの!?お願いだから私のことはほっといてよ!!」


ドンドンッ


「お前の話など、どうでもいい!私の話を聞くんだ!!」


ドンドンドンドンッ


「もう嫌…ひとりにさせて」




メアリーは両手を耳にあてると、ふとんの中に潜った




(これ以上お父様の声なんて聞きたくない、恐いよ…)




いつからお父様はこんな風になってしまったのだろう


12年前はお母様がいて、お父様も優しくて、凄く幸せだったはずなのに

あの事件…お母様が行方不明になって以来、お父様は変わってしまった




(きっとお母様がいなくなって気が動転してるのね、しばらくして落ち着いたら又、優しいお父様に戻ってくれるかもしれない)




そう思っていたが、日が経つにつれ父親からの拘束がきつくなっていき、メアリーは疲れ果てていた


今だ扉を叩き続け、部屋の前で叫ぶ父親の声を遮るようにふとんの中で丸くなると

メアリーは眠りについた






-----






その頃、セントリアの図書館の前で、ひとりの少年が管理人に話かけていた




「なぁおっさん、ここに『失われた化学技術』に関しての本は置いてないか?」


「悪いね、もうとっくに閉店時間が過ぎてるんだよ。又明日に来てくれないかい?」


「明日か…わかったよ、サンキューな」




少年はふぅっとため息をはくと、近くのベンチに腰かけた




(この街も、手がかりは無しか…あと、調べてない所は…)




少年は顔を上げると、そこにはとてつもなく大きな屋敷があった




(あとは、あの屋敷だけだ……玄関前に警備をつけている事態が怪しい)




少年はじっと屋敷を見ていると、警備の男のうちのひとりが近づいてきた




「さっきから屋敷を見ているようだが何か用か?」


「いや別に、ただ大きな屋敷だなと思ってね…つい見ちまった」




少年は愛想笑いを浮かべると、屋敷を指さした




「なあ、あの屋敷には誰が住んでいるんだ?」


「お前、知らないのか?まあ、この街の人間ではないのなら仕方がないか……」




警備の男はため息をはくと、面倒くさそうに答えてくれた




「あれは、リアンス様の屋敷だ……見ての通りこの街のお偉方が住んでる所だよ。」


「リアンス…どっかで聞いたような名前だな」


「何か言ったか?」


「いや、何も!」




少年はちらりと屋敷を見ると、警備の男は言った




「俺も仕事に戻るが、又あんなに見てると怪しまれるぞ…気をつけろよ」


「おう、忠告有り難く受け取っとくぜ」




少年はひらひらと手を振り警備の男を見送った後、ちらりと屋敷を盗み見た




(なるほどな、ここがリアンスの屋敷か……)




少年はふと、屋敷の2階の窓が開きっぱなしなのを見て、ふっと笑う


(警備をつけてる癖に無用心だな…これなら簡単に忍び込めそうだぜ)




(リアンスの屋敷、ここならあれの手掛かりになるものが見つかるかもしれねーな・・・悪いが少し調べさせて貰うぜ)








―こうして俺はあの屋敷に忍び込む事を決意したが、まさかその行動があの事件に巻き込まれ俺の運命や人生を大きく変えることになるなんて、夢にも思っていなかった―







「人生初の小説創り」にチャレンジしました。



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