二つの誤算
王に仕える騎士である私は生涯にニ回大きな誤算をしたことがある。
一度目の誤算は実に単純なものだ。
要するに敵の戦力を読み違えたのだ。
「王よ。お逃げください。私が食い止めます」
不安を顔に出す王へ私は気丈に告げる。
「ご安心ください。頃合いを見て私も逃げます。必ずや無事に合流してみせます」
それだけのことが出来る自信があった。
武術において比類なし。
挙句に敵の戦力の見極めにも優れている。
それが愚かな私の自負だった。
百であろうと千であろうと全てを討ち滅ぼすのは無理だ。
しかし、相手を引きつけながら戦力を削り適当なタイミングで逃げることなら出来る。
……なんて、考えていた私は激しい抵抗の末に捕まった。
しかし、私はそれでも良かった。
なにせ、本来の目的は王を逃がす時間を稼ぐことだったのだから。
失敗はした。
けれど、最も必要なことは果たせた。
私は自らが愚かであったと後悔してもしきれない程に凄惨な拷問を受けて殺された。
おそらくは王やその味方に対する見せしめも兼ねていたのだろう。
痛みを感じることが出来なくなるまで私は生かされ、そして死んだ。
これが一度目の誤算である。
恥ずかしき記憶だ。
……では、二度目の誤算について語ろう。
それは――。
*
「何故、生きている……?」
遂に王の首へ手が届いたと喜んでいた反逆者の身体を剣で斬りつける。
呆然とする反逆者……そして生涯に渡って仕え続けた王。
私は反逆者の首を刎ねると王に向かってひれ伏した。
「何故、生きているのだ……?」
先ほどの反逆者と同じ問いを王がする。
私は頭を上げて笑う。
「嬉しい誤算です。つまり私は――」
自らの不甲斐なさからの口惜しさのあまり幽霊となって現世に留まったのだ。
王は私を呆然と見つめていたがやがて吐き捨てるように言った。
「……二度と出来ぬ事は言うな」
「善処します。三度目の誤算は起こさぬように」
私の王はあきれて笑うばかりだった。




