05
何事も無かったかのように学校へと向かうカズヤ。
カズヤの隣には銀髪の美少女、レナが無機質な表情で歩いている。
つい先ほどまで『分子構造を再構築』などとほざいていたレナを中二病と疑ってるカズヤはレナの学校生活に不安しかなかった。
そんなカズヤの不安とは裏腹に周囲の視線がレナに集まり、隣を歩くカズヤにまで羨望の眼差しが向けられる。
(まあ、こいつは見た目だけは最高だからな……隣を歩いてるだけで勝ち組気分になれるのは否定できないけど……)
カズヤは内心のニヤけを必死に抑え込み、鼻高々と校門をくぐった。
自分の教室に着き、ようやく一息つこうとした矢先、親友のサトシが、当然のような顔で声をかけてきた。
「よお、カズヤ。今日もレナちゃんと一緒か。相変わらず仲がいいな、お前ら」
「は? 今日もってなんだよ。レナは一昨日海で……」
サトシは心底不思議そうに首を傾げた。
「お前、寝ぼけてんのか? レナちゃんは入学式からずっとお前と一緒に登校してるだろ……ああ、妹が優秀すぎて現実逃避してんのか? 不動の学年トップ様だもんなぁ」
「はぁ? レナが学年トップ?」
カズヤは耳を疑い廊下の掲示板に貼り出されている「実力テスト結果上位者一覧」を見に行った。
すると……
1位:高木 レナ 全科目満点(500/500点)
「おいおいマジかよ……」
昨日、海辺で震えていた少女。
そして今朝、「分子構造を再構築」とか中二病的な事をほざいていた少女。
その名前が、あたかも「ずっと前からそこに刻まれていた」かのように、トップに鎮座している。
(いや待て…こいつ家で勉強してる姿なんて見てないぞ…っていうか、いつテスト受けたんだよ! 俺の記憶がおかしいのか……?)
カズヤがそんな戦慄を覚えている間も、二つ下の階、一年生の教室では……
レナは微動だにせず席に座り、無機質な瞳でただ正面を見つめていた。
彼女の網膜には上の階で動揺するカズヤの心拍数や体温が音もなくデータとして流れ続けている。
カズヤ本人は自分が細胞レベルでモニターされていることなど露ほども気づいてはいなかった。
………
休み時間が始まり、カズヤは居ても立ってもいられず、一年生の教室へと続く階段を駆け下りた。
ドアの隙間からそっと中を覗き込むと、そこには周囲の喧騒から切り離されたかのように、静かに座るレナの姿があった。
ノートも教科書も開いていない。ただ前を向いているだけなのに、クラスメイト達は「レナさん、また精神統一してるよ。さすが天才は違うな」と、畏怖の念すら込めて囁き合っている。
(あいつ、何なんだよマジで……大人しくしてると思ったら、いつの間にかクラスの奴らにまで変な勘違いされて……ってか、あの満点も何かの間違いだろ、絶対)
カズヤが呆然と立ち尽くしていると予鈴が鳴った。
レナはカズヤの方を振り返ることもなく、ただ静かに、次の「最適化」すべきスケジュールを処理し始めていた。
カズヤは確信した。こいつはただの中二病じゃない。
自分の設定を完遂するために周囲を丸め込むカリスマ性か、あるいはとんでもないハッタリの才能を持った底の知れないヤバい奴なのだ、と……




