01
その夜、カズヤはなんとなく海岸まで歩いてきていた。
夕食のあと、なんとなく家の中にいるのが落ち着かなくて、適当に上着を羽織って外に出た。
目的があったわけじゃない。ただ歩いているうちに、気づけば砂浜に足を踏み入れていた。
夜の海は暗く、刺すような風が吹いている。
波の音を聞きながら、あてもなく砂の上を歩く。
今のカズヤには、そのくらいの時間がちょうどよかった。
「……ん?」
波の音を聞きながら歩いていると、少し先の波打ち際に、何かがあるのが見えた。
最初は、大きな流木か何かが打ち上げられているのかと思った。
けれど、目を凝らすとそれは、人の形をしているように見えたので、カズヤは慌てて駆け寄った。
「おい、大丈夫か!」
カズヤは反射的に走り出した。スニーカーが水を吸って重くなるのも構わず、膝まで海に突っ込む。
そこにいたのは、一人の少女だった。
泳げなくて溺れているというより、まるで全身の筋力を奪われたかのように、少女はただ波に洗われている感じだ。
「今、助けるから!」
カズヤが少女の肩を掴んだ瞬間、そのあまりの冷たさと硬直ぶりに驚いた。
少女はひどく小刻みに震え、指先一つ動かすのも苦痛であるかのように顔を歪めている。
「!#&%……!!」
少女は小さな声で何かを言うが、聞いたこともない、理解ができない言葉だった。
少女は虚ろな目でカズヤを見ると、力ない動きで拒むように、かすかに腕が動いたが、カズヤは構わず少女を抱え上げ、砂浜まで一気に運び出した。
砂の上に横たわらせると、少女は震える声で、短く何かを呟いた。
少女はカズヤをじっと見つめ、再び別の言葉を口にする。
すると、次に少女の口から出たのは、さっきまでの理解不能な言葉ではなく、カズヤが理解できる言葉だった。
「……このような星の知能指数が低い未開な野蛮種族に個体を救助する知識と倫理が備わっていたとは計算外の驚きです」
「えっ?」
「……助かりました、カズヤ。あなたの行動は、私の予定にはありませんでした」
「言葉が……っていうか、なんで俺の名前を……」
カズヤは困惑している。
言っている意味がわかるのはもちろん、その響きはあまりにも自然で、つい数秒前まで全く別の言語を話していたのが信じられないほどだった。
驚くカズヤをよそに、少女は更に言葉を発した。
「……記録終了。これより、現地潜伏シーケンスに移行」
砂浜に横たわる少女を見つめていると、少女の唇が動いた。
少女はカズヤの顔を見つめる。
「この借りは、必ず返します。カズヤ」
少女がそう呟いた直後、さっきまでそこにいたはずの少女の姿は跡形もなく消えていた。
ただ、少女がいた場所だけ、砂が押し固められている。
「……おい、嘘だろ」
カズヤは自分の手を見つめた。
海水で濡れた重い靴の不快感と、少女を抱えた時の、あの異様なほど強張った感触。
「幻覚…じゃないよな…」
なんとなくきたはずの海なのに、カズヤの心臓は、これまでにないほど激しく波打っていた。
※この作品は表現やセリフの単語等はAIに相談している部分があります




