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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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鏡の世界

作者: りばー
掲載日:2025/10/29

今日もこの世界は「向こう側」に従って動く。動物も植物も関係ない。決定権は向こうにあるからね。

でも僕らにだって思考する力はあるし、意思もある。実際には思ってないことを言うことが多いから、向こうの僕とは性格が違うみたい。言動はわかるけど考えてる事までは分からない。でもとりあえず、従わなければいけないという常識があるから従ってる。非常識にはなりたくないし。常識外れには憧れるけどね。

たまにいるんだ、ちょっとふざけて違う動きする人。

「向こう側」にこっちの世界がバレるかもしれないから正直やめて欲しいんだよね。こっちは完璧に合わせる自信あるけど、やっぱりちょっと緊張する。僕は真面目に合わせるよ、真面目だからね。


今日も「向こう側」に合わせて動く。今日は母親とこんな会話をした。

「あんたいつまで生きてんの」

「………ごめんなさい」

「もういい、そうだよね、死ねるわけないもんね」

相変わらず関係は最悪だ、僕は「向こう側」に従ってるだけだから何も感じないけど、向こうの僕はずっと辛いだろうな。

1度だけ「向こう側」には気づかれないようにこっちの母親が言ってくれたことがある。

「いつもこんなことしてごめんね。本当はあなたともっと楽しく親子をやりたかった。大好きだからね。」

この時母親は泣いてた。「向こう側」に従っているとはいえ僕を産んだんだ。ちゃんと母性があるんだろうな。向こうの母親はどう思ってるんだろう。いつか殺されるのかな。痛いのはやだな。



なんだか最近向こうの僕の様子がおかしい。僕もおかしい。

夜中に家を出てひたすら夜道を歩いたり、爪を噛んだりいじったり、何も無いのに急に泣き出したり。

そりゃ、毎日あんなに叩かれたり罵倒されたりしてるんだ、何も起こらないわけが無い。よく今までストレスを表に出さずに頑張ったと褒めてあげたいくらいだ。

でも1番おかしいのはそれじゃない。僕自身の頭だ。悲しいとか、苦しいとか、辛いとか、そういうのがずっと頭の中をぐるぐるしてる。こんなの初めてだ。負の感情に振り回されそう。意識して冷静にならないといけないくらい。

向こうの僕がものすごく感情的になってるのかな。それでこっちにも伝わってきてるのかな。どうしよう、怖くなってきた。でもどうしたらいいか分からない。解決方法を調べる?どうやって?この世界は「向こう側」を完全に鏡に写した世界だ。こちら側の情報なんてあるはずない。仮にあったとしても、たまたま手に届く場所にあって、たまたま興味が出て色々調べてみたみたいな奇跡がないと無理だし、そもそもこんな状態じゃ、そんな意味のわからないことに興味なんて出ないに決まってる。

とりあえず僕自身にできることは何も無い。あるとすれば、頭の中で「元の状態に戻ってください」って言いまくることくらい?あぁ疲れてきた、頭を使いすぎた。


おかしいと感じてから1週間たった。ちょっと良くないことが起こってるかもしれない。

向こうの僕が、僕に向かって話すんだ。内容は簡単な愚痴。ただ鏡に向かって喋ってるだけだろうけど、正直こっちに気づいてるんじゃないかって思ってる。


会話しようとしてくるんだ


「こういうことがあってさ、どう思う?」とか「酷いよね、そう思わない?」とか。

正直調子が狂う。ついレスポンスを返しそうになっちゃう。言いたいこといっぱいあるからさ。友達も多いほうじゃないからそんなに人と喋らないし。何より僕は一番の理解者だ、性格は違うけど本人なんだもん。生まれた時から同じ動きをして生きてきた。

でもだめだ応えたらいけない。それがルール、この世界の常識。

「やっぱり無理だよね、鏡の中の自分が応えてくれるなんてあるわけないよね。」

ごめん、もし同じ世界に生まれることがあれば、その時は必ず一緒にお喋りしようね。


もうダメかもしれない。

今どうなってるか教えてあげる。母親を蹴って殴って追い詰めて、包丁で刺し殺そうとしてる。辛い、嫌だ、殺したくない。向こうの僕は母親を殺したいほどらしい。気持ちは分かる。ずっと虐待されてきたから。でも僕のお母さんは違う、大好きだよって言ってくれた、僕のこと大事に思ってる。どうしようほんとにどうしよう。向こうの僕を説得する?従わずに僕の意思で動く?いいのかそんなことして、お母さんはもう動けない、僕が動けなくさせてしまった。

あ、これはほんとにダメだ。向こうの僕の意思が強すぎるのか知らないけど自分の意思で動けない。この前頭の中が負の感情でぐるぐるしたやつの体バージョンって感じ。刺そうとしてる、馬乗りになって腕を振り上げてる

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ

「うわああああああ」


刺さってる

包丁がお母さんの体に刺さってる

刺しちゃった

ごめんお母さん「大好きだよ」


頭が回らない、何を考えたらいい、今の状況を整理するか。

お母さんの次は自分を刺すらしい。お腹を刺そうとしてる。どうせなら1発でいけるように首でも切ってほしい。

なんでこんなことになったんだ

叩かれても抵抗しなかったから?

負の感情でぐるぐるになっても何もしなかったから?

僕とお喋りしようとしてくれてたのに応じなかったから?

全部なんだろうな。もう遅い考えても無駄だ。

「うっ……」

刺しちゃった。

辛い、苦しい、助けて

目の前に鏡がある。向こうの僕も苦しんでる。

寒い、力が入らない、もう何も出来ない

向こうの僕と目が合った


『たすけて

 たすけてくれたらよかったのに』

読んで頂きありがとうございます。

感想等なんでもお待ちしております。

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