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1.君との出会いと少し違う行動を

「...3年生、か。」


いつの間にかに日はすぎる。彼女もいつの間にか中学3年生になっていた。やりたいことも、何も無い状況で。


「どうすれば、良いんだろう...。」


何も考えずに教室に向かう。新しいクラスだ。


「...はぁ。」


知っている人は誰もいない。唯一の小学校からの腐れ縁もいない。正直、詰んだ。何せ人と話すのがそこまで得意ではない。例外を除いて。

例外というのは、同じ趣味を持っている人など、自分に合う人だ。素を出せる人と出せない人っていうのが、どうやらいるらしい。そんな人なんて、最近会っていないらしいが...。


「あ、君が隣の席の人?」


席に向かうと、隣の席の人が話しかけてきた。少し長めな髪を1つに結っている、黒髪の綺麗な男子生徒だ。たまに二次元でよくあるめちゃくちゃ結んだけど細い感じの結び方だ。...語彙力が無いのは許してくれ、昔からないんだ。


「...そうだけど。」


「俺は和花 如月!君は?」


「夕星。...八瀬 夕星。」


「夕星だね!俺のことは如月でいいよ!」


「...。」


この人といると、心が温かくなった気がした。どうやら、彼は合うらしい。


「ねぇねぇ、夕星は夢ある?」


「...夢?」


「うん!僕ね、剣道やってるんだけど、いつかプロになりたいんだ!」


「へぇ、それは凄い夢だこと。」


「夕星は?」


「無いよ。」


「...え?」


目を閉じて、考える。そして、ふっと笑って言う。


「ウチには、夢も希望も無いよ。なんのために生きているかも分からない。」


「...えぇ!?それってヤバいじゃん!!高校どうするの!?」


「適当に入るさ。どこか適当に。」


「ダメだよそんなの!!よし、俺決めた!!夕星の夢を探す!!」


「なんでお前が張り切ってんだよ。」


「夕星も張り切ってよ!」


「いや、別にいい。」


「えぇ!?」


くだらない。その言葉が頭の中をぐるぐると回る。どうせ無駄なことを真剣に考えてどうなる。夢なんて、叶わないのが普通なんだから。

そんな時、教師が入ってきて話が中断された。こいつといると面倒なことになりそうと思い、珍しい合う人だけど捨てようと思った。

...なのに。


「夕星!一緒に移動教室行こう!」


「夕星!昼ご飯一緒に食べよ!」


「夕星〜、ここ分からない助けてぇ!!」


いつもいつもしつこくやってくる。


「...面倒だ。」


はぁとため息が漏れる。昼ご飯の時もやって来るので、今日は四時間目が終わったらお手洗いだと言ってこっそりと弁当を持ち出し教室から出ていった。


「空き教室か屋上に続く階段で...ん?」


どこで食べようかと迷っていると、階段で泣いている子がいた。低身長で白い色の髪が空いた窓からくる風で靡く様子が、綺麗だった。


「...君、何してるの?」


「ぁ、えっと、その、お弁当を忘れてしまって...その、こんなので泣いちゃダメなのは分かっています、けど...兄さん達と食べれないのは、悲しくて...。」


小刻みに震えながら泣く様子は、子供のようだった。けど、彼は普通に高校1年生だ。上履きの色でそれが分かる。


「...これ、あげる。」


持っていた弁当を差し出す。


「え、けど...。」


「ウチは適当に食堂で食うから。弁当じゃないと兄達と食べれないだろ?食堂は弁当持ち込み禁止だからな。」


そうとだけ言うと、教室の方に足を進めて行く。


「...あ、はは、今日金持ってねぇわそういや。」


丁度財布が壊れてしまって、家に置いてきていた。そのため、昼食は無しになるだろう。


「早く食堂も電子決済出来るようになってくれよ...。」


スマホの中にならお金があるが、食堂は現金のみだ。そのため、はぁっとため息を吐きながら、とりあえず電子決済出来る自動販売機で売ってた貝の味噌汁だけを買い、飲みながら教室に戻っていった。


「...あ、夕星!ちょっと、どこ行ってたの?」


「あぁ、昼ならもう食べたよ。」


「はぁ!?」


教室に戻るともちろん如月に怒られた。痛くはないが、ポカポカ殴ってくるのが面倒なので、次からやめておこうと思った。


「そっか、あいつ部活か。」


帰りも大体一緒だが、如月は今日部活で、放課後になっても一人静かだった。隣がいないってのもまぁまぁ寂しいものだ。


「てか、あっつ...。」


そろそろ7月になる。梅雨が終わったのか、もう死ぬほど暑い。


「...アイス買お。」


コンビニで2つに分けられるアイスを買う。暇だし如月の部活が終わるまで冷たい場所で待って、あげようと思ったのだ。一応居残りがあったので、如月が来るのはあと5分くらいだ。


「あっちぃ〜!!いつ来るんだよむつ兄達〜!!」


「うるさい。黙って待ってろ。」


「けど、店とか入ってもよくね?」


「ここら辺で入れる場所はコンビニしかない。コンビニは邪魔になるから長居はダメだ。」


「だからってさぁ...。」


そんな声が聞こえた方を向くと、コンビニに短髪に少し刈り取っている黒髪の男の子と、肩くらいまで長い黒髪に眼鏡をしている男の子がいた。兄弟だろうか、意外と仲が良さそうだ。むつ兄という人を待っているのだろうが、こんな暑いなか公園のベンチで座って待つのはツラそうだ。


「...はぁ。」


その2人が気づかないように公園の裏に周り、持っていたアイスを首に当ててやった。


「「うわっ!?/つっめてっ!?」」


「結構良い驚き方。」


そう言って笑うと、2人は睨んできた。まぁ、当たり前だろうな。


「正直、うるさい。これでも食って黙ってろ。」


「え、くれるのか!?」


「良いから黙って食え。」


「良いのか、だってこれは...。」


「先輩の奢りだ。返しはいらねぇから。」


そう言って去っていく。昼飯無しで腹が空いてる状況で食べ物を渡すなんて、何しているんだとやっと気づいた。


「暑いと頭の回転がおかしくなるな...。」


その後、如月に頼んでパンを買ってもらった。昼飯が無しというのは言っていない。腹減ったから買ってくれと言っただけだ。もう勉強教えないぞって言ったら買ってくれた。


「...少しは、楽しいのかな?」


去年とはまた違うような生活に、少しだけ楽しみがあるかもと思い始めていたのだった。

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