愛していたから忘れたかった
家族を愛していた。
だから忘れたかった。
友人達を愛していた。
だから忘れていたかった。
恋人を愛していた。
だから忘れたままでいたかった。
人生で俺は、何度も辛い目にあった。
愛した人を失い続けるような目に。
病院にかかった。
お医者さんに診てもらった。
たくさんの薬をのんだ。
何度も悪夢を見た。
いつも死にたくなった。
何度も涙が流れた。
心がひび割れて、魂がぐちゃぐちゃになった。
だから忘れたかった。
大切な記憶は、全部覚えていたい?
そんなことは無い。
大切だから、忘れたかった。
そう結論付けた俺は、
どうすれば最愛に関する全てを忘れられるのだろうと、考える日々が始まった。
それからの日々は救いがあった。
救いがもたらされるかもしれない。
という希望が俺の心を安らがせていた。
でも、忘れる方法を探し続けることができなかった。
夢の中の彼らが、
愛しているなら忘れないで、と言ってきたから。
愛していたから、忘れたかったのに。
愛していたから、無視できなかった。