勝利と別れ
ルーとエクが瀕死の状態で魔石を守り抜いた瞬間、魔石が淡く光を放ち始めた。その光は彼らに力を与え、心の奥底で燃え続けた信念が真の力として具現化した。バルーとジュジュはその様子に恐怖を覚え、逃げ出そうとするも、彼らの欲望は魔石によって拒まれた。
ルーは魔石に触れると、彼女の中に眠っていた古代の力が覚醒し、エクと共にバルーとジュジュに最終的な一撃を与えた。
勝利と別れ
決戦の夜明けが訪れたとき、ルーとエクは重く冷たい風に包まれて、荒れ果てた戦場の中央に佇んでいた。魔石の光はすでに収まり、淡くほのかな輝きが二人の間で静かに脈打っている。かつてはその圧倒的な力を巡って争い、命を懸けた戦いが繰り広げられたことを物語るように、地面には無数の裂け目が走り、かすかに立ち上る煙が最後の余韻を醸し出していた。
ルーはその場で膝を折り、魔石を手のひらに包むようにして見つめていた。その小さな石が、どれだけの血と涙を呼び寄せたのか、彼女の目には映しきれないほどの過去が重なっている。「エク、私たちはやっと手に入れたわね…」と、彼女は声を震わせて呟いた。その声には、勝利の喜びだけでなく、無数の犠牲と失われたものへの悲哀が宿っていた。
エクは黙って彼女の隣に立ち、傷だらけの体を震わせながらも、その手に軽く触れた。「ああ、ルー。だが、この力は俺たちだけのものじゃない」彼は空を見上げ、ゆっくりと目を閉じた。朝日がようやく地平線から顔を覗かせ、辺りに暖かな光が広がり始めていた。まるで、彼らの戦いを見届け、慰めるかのように。そしてその光に照らされた二人の影は、互いに寄り添うようにして、静かに地面に溶け込んでいった。
エクは再びルーの方に向き直り、彼女の手から魔石を取り出すと、しっかりと握りしめた。「ルー、この魔石はもう、俺たちの欲望や力を象徴するものじゃない。これは…俺たちの信念そのものだ。」彼の目には、静かな決意が宿っており、それはただ力を求めていたかつての姿とは違うものだった。その決意に、ルーもまた目を閉じて深く息を吸い込み、二人の心は言葉なくとも通じ合った。
ルーが微笑みながら、「エク、あなたはいつも正しい道を示してくれるのね。だから、私はあなたと一緒にここまで来られたの。」彼女の言葉に、エクも微笑みを返し、魔石を天高く掲げた。その瞬間、魔石は淡い光を放ち、周囲の大地や傷跡を優しく包み込むかのように輝き出した。
バルーとジュジュとの戦いは彼らの肉体を刻むほどの痛みと疲労を残し、あの場には二人だけが生き残っていた。しかし、この場に残る傷跡や裂け目は、彼らがどれだけの試練を乗り越えてきたかを静かに物語っていた。
「この魔石をどこかに封じるべきだ」とエクが真剣に提案する。ルーは深く頷き、「私たちのように、誰もがこの力に惑わされてしまうかもしれないからね…」と、静かに答えた。彼らはその決意を胸に、魔石を安全な場所に封印し、新たな命を守るために生きていく覚悟を固めた。